■自宅でもオフィスにいるように仕事をする方法
同じ内容の仕事をしていても、自宅よりオフィスのほうがはかどるという人は、どのような点に違いを感じているのだろう。
「通勤や通勤前にしていた身支度が仕事モードに切り替わるスイッチになっていたことが考えられます。オフィスでの周りの目からも緊張感が発生しますし、同僚との雑談は適度な息抜きになり仕事がはかどりやすくなります」(櫻木さん)
通勤はストレスだけではなく働くスイッチを入れる役割も果たしていたのだ。自宅はどういうところが問題なのだろうか。
「自宅は仕事に最適化されていないため、誘惑されやすい環境です。周囲の目もないので逃避しやすくなります。オフィスにある機能性を、いかに在宅勤務やテレワークの環境で再現していくのかが重要です」(櫻木さん)
具体的にどんな方法があるのか聞いてみた。
「1日の時間割をつくり、1日何をするか考える時間を入れましょう。TODOリストも併せてつくり、定期的に見直すといいですね。仕事終わりに振り返ることで自分の作業工数を見積もりやすくなります」(櫻木さん)
時間割通りの仕事をしなくてはならないのは分かっていても、モチベーションが上がらない……そんな場合の策はあるだろうか。
「とりかかりのハードルを極力小さくしましょう。メールを一通返す、資料を1ページ読むなど30秒~60秒でできることを選んで、まずは作業をはじめてしまうことがポイントです。働く場所を変えるのも有効です。家の中でも場所が変わると気分転換になります」(櫻木さん)
家の中でも最適な作業ポイントを探したい。
「目移りするものがあるときは、仕事スペースではパソコンだけ、と制限をしてみましょう。ビデオ会議を繋いだままにして作業するのもよい方法です。散歩に行ったりコーヒーを飲むなど、適度にリフレッシュすることも大切です」(櫻木さん)
とりかかりのハードルが小さく、気分が常にリフレッシュしていれば、スムーズに仕事が進むだろう。
■自己管理のスキルアップと今後のテレワーク
櫻木さんによるとテレワークに向くのは自己管理のできる人とのこと。だが筆者を含め、自己管理が得意でない人にも有効なテレワークでの効率アップ法があるというのでさらに聞いてみた。
「テレワークが苦手と感じる人は、自分ができないことは周りと連携するよう心掛けるとよいです。たとえば仕事をはじめる際に、同僚と今日やることを共有し、仕事終わりにどのくらいできたか報告し合うなどです。人間は気持ちの浮き沈みもありますし体調の変化もあります。完璧を目指さず少しずつできることを増やしていくことで、自己管理もできるようになってくでしょう。また、自己管理の練習としては習慣をつくることです。15分の散歩、ストレッチなど自分の決めたことを自分でやりきるという繰り返しで、自己管理のスキルも上がってくるでしょう」(櫻木さん)
新たな習慣をつくるところから自己管理力がアップしそうだ。しかし、コロナが収束したらテレワークもなくなってしまうのだろうか。テレワークの今後はどうなっていくのだろう。
「そもそも『テレワーク=在宅勤務』と考えがちですが、テレワークとは会社や自分のパフォーマンスが最大限に発揮できる、時間と場所を自分で選ぶ働き方です。今後はオフィス前提の出社に戻る企業と柔軟な働き方を認めていく企業に分かれていくでしょう。柔軟な働き方を認める企業では、週5日、連続8時間勤務という前提も崩れ、場所だけでなく時間も柔軟に選べるようテレワークは進化していくでしょう」(櫻木さん)
一時的な働き方と捉えられがちなテレワークだったが、メリットも受け入れられてきている。新たな働き方のためにも、自己管理力を上げておいてはいかがだろうか。
●専門家プロフィール:櫻木諒太(一般社団法人日本デジタルトランスフォーメーション推進協会)
日本デジタルトランスフォーメーション推進協会事務局長。デジタル時代のビジネスや組織づくり働き方などを広めるためのプロジェクトや研修の企画運営を担当。福岡と東京の二拠点生活で自身も新しい働き方を実践し知見を深めている。