■衣類を食べる害虫「衣類害虫」とは?
害虫からの被害を防ぐためには、衣替えをどのタイミングですればよいのだろう。
「衣類を食べる害虫は、GW明けの時期から成虫になり、衣類に卵を産み落とす可能性があります。産み落とされた卵が孵化して幼虫になり、衣類を食べてしまうこともあるのです。GWが終わるまでにしっかり冬物の『しまい洗い』をして、衣替えを済ませましょう」(大貫さん)
害虫のトラブルを回避するためには、GWが終了するまでに衣替えをしたほうがよさそうである。ところで、なぜ害虫は衣服を食べてしまうのだろうか。
「『しまい洗い』やクリーニングで衣類をキレイにしてから収納した場合でも、虫食いの穴が空いてしまうことがあります。それは、衣類を食べる害虫にとって、ウールやカシミヤ、シルクといった『動物繊維』が、栄養源になるからです。また、『食べこぼし』の汚れが残っていた場合は、動物繊維以外の繊維にも虫食いの被害が出る可能性があります。クローゼットや衣装ケースに冬物の衣類を収納するときは、必ず防虫剤を使用するようにしましょう」(大貫さん)
しまい洗いの際、キレイに仕上げることはもちろん、収納時の防虫剤もマストということだ。
■適切なホームクリーニング法と注意点
冬物は厚手の生地や毛・ウール製品などが多いが、ホームクリーニングをする場合は、どのように洗うべきなのだろうか。
「まず洗濯表示を見て、家庭で洗えるかどうかを確認しましょう。洗濯おけのマークがついていれば、家庭で洗濯できます。ニットのような伸縮性のある洋服は、型くずれや縮みを予防するため、型くずれ防止効果のあるおしゃれ着用洗剤がおすすめです。汚れの気になるところに洗剤の原液を塗布してから、洗濯機の『おしゃれ着コース、ドライコース、おうちクリーニングコース』などの弱水流コースを使用する、もしくは『手洗い』で押し洗いしましょう。洗濯機の『標準コース』で洗ってしまうと、一度の洗濯で縮んでしまうニットもあるので注意しましょう」(大貫さん)
お気に入りのニットが縮んでしまうことだけは避けたい。冬の定番であるダウンも家で洗えるというのでさらに聞いた。
「まず洗濯表示を見て、家で洗えるのか確認します。ダウンジャケットやコートは、襟、袖口、ポケット口、裾などが汚れやすいため、事前におしゃれ着用洗剤を塗布するなど、前処理しましょう。ダウンジャケットは、やさしく手洗いすることが基本。洗濯機で洗うと、水に浮き、汚れが十分に落ちないことがあります」(大貫さん)
ダウンジャケットは、しっかり水分をしみこませながら洗う必要がある。
「洗濯おけまたは洗濯機に水をため、おしゃれ着用洗剤を使用し、手で押し洗いをした後、すすぎは2回行います。
脱水は洗濯機で1分程度行いましょう。洗濯が終わったら陰干しするのですが、そのままハンガーにかけて干すだけでは、ふっくら乾かない場合があります。干す前にダウンジャケットの肩を持って軽く振りさばきます。ある程度表面が乾いてきたら、身ごろや袖を両手ではさむようにして軽く下から上にたたきながら、中の羽毛をほぐすとふっくら仕上がるので試してみてください」(大貫さん)
せっかくのダウンジャケットがしぼんでしまわぬように注意したい。
■適切な保管方法
最後に、型くずれを防ぎ、衣類に害虫が付きにくい冬物収納のコツを尋ねた。
「ハンガーにつるすと伸びやすいニットや、カットソーなどの衣類は、引き出しや衣装ケースなどにたたんで収納しましょう。その際、『立てて収納』すると、衣類の重みでしわがつくのを防げるのでおすすめです。また、防虫剤の効果も高まります。さらに、セーターなど繊維のつぶれによる保温性低下を防ぐためにも、衣類を立てて収納しましょう」(大貫さん)
なるほど。自立するようにたたんで、立てて収納するのだ。また、クリーニングに出して戻ってきた衣類を保管する際にも、注意すべきことがあるという。
「クリーニングから戻ってきた衣類に付いたビニールカバーは『保管用』と思われがちですが、そうではありません。ビニールカバーを付けたままにすると、通気性が悪くなりカビなどの原因になります。クリーニングから戻ってきたらカバーを外し、衣類を陰干しすることで水分や溶剤を飛ばしましょう。このときに、汚れがきちんと落ちているか、ボタンや付属品が取れていないかもチェックしてから収納しましょう」(大貫さん)
「むしろカバーを付けていた……」という人も多いのでは。もし今付けっぱなしにしている衣類がある場合は、すぐにでも外したほうがよさそうだ。
大切な服が虫に食べられる事態は何としてでも避けたい。今回紹介したポイントを押さえ、完璧な衣替えを実行してもらえれば幸いである。
●専門家プロフィール:大貫 和泉
ライオン お洗濯マイスター。洗濯用洗剤などの製品開発・調査に約20年携わってきたライオンの研究員。消費生活アドバイザーでもあり、働く母親目線で、技術や研究に基づく洗濯情報をわかりやすく伝えている。