■クレートトレーニングを日ごろからやっておく必要性
犬を車に乗せていると、どのような危険があるのだろうか。
「もしも犬が車から飛びだし、ほかの車が事故を起こした場合。また、窓から首を出した拍子に隣を走るバイクが転倒したなどの事故が起こった場合、罪に問われることになります」(寺内さん)
犬を車で移動させる安全な方法には、どのようなものがあるか教えてもらった。
「固定したクレートに入れるか、シートベルトに取り付けられる犬用ベルトを装着させます。無理にクレートへ押し込められた犬は鳴き続け、扉を開けた瞬間に飛び出してしまうことがあります。普段からしっかりとクレートトレーニングをしておくとよいでしょう。クレートは災害時の非難のときにも必須ですから、平時に楽しく練習しておくことをお勧めします」(寺内さん)
避難時の備えとして、人間だけではなくペットの安全は普段から考えておく必要があるのだ。
車酔いをする犬の場合には、他にも対策があるというので教えてもらった。
「クレートに入れて車酔いをする犬は、体のサイズに合った広すぎないクレートを使うと効果があります。体が流れにくく、踏ん張りがきくのです。万一吐いても、クレート内なら周囲の汚れ被害は、最小限にとどめられます。また、普段から車に乗ること、クレートに入ることを少しずつ練習しておきましょう。車で犬と出かけ、車に乗るたびに楽しい体験ができると知ると、犬も前向きになります。どうしても酔う場合はお薬もあるので、獣医師に相談してみましょう。多頭飼いの飼い主は頭数ぶんのクレートを用意しましょう」(寺内さん)
車酔いは犬にとっても不快なものなので、快適に移動させてあげたい。車酔いと思いきや、違う病気の心配もあるというというので、さらに聞いた。
「飼いはじめて間もない犬の場合、まれに回虫が体内にいることがあります。そんな犬の吐しゃ物やフンに含まれる虫の卵が乾燥して舞い上がり、人の体に入ってしまうとトキソプラズマなどの怖い病気になるリスクもあります。汚れは素早くきれいにするに越したことはありません。また病院に運ぶときもクレートに入れることで、汚れも最小限で済みます」(寺内さん)
病気の犬が車内で動き回ると運転に集中できない。犬がクレート内でおとなしくしていることで、人も安心して運転することができるだろう。
■高速道路のSAなどで、愛犬が盗難されることも?
高速道路のSAや、街のスーパーなどで犬だけを外で待たせたせている光景を見たことはないだろうか。クレートに閉じ込めるより、解放してあげたい気持ちは分からなくもないが、それは危険な行為かもしれない。運転中以外でも注意することがあるというので聞いてみた。
「最近、高速道路のSA、PAや、施設の駐車場などで目を離したすきに愛犬を盗まれてしまう事件を耳にします。お散歩中の係留時にも、同様の事件が起きているので目を離さないことが重要です。かわいい犬を衝動的に連れ去られてしまう可能性が否定できない以上、誰か人が残って見ておくか車の中のクレートで静かに待っていてもらうしかありません」(寺内さん)
ここでもクレートが活躍する。愛犬のクレートトレーニングは飼い主の愛情そのものといえるかもしれない。車に乗る機会が多い犬はもちろんのこと、災害や盗難に備える意味でも普段からのクレートトレーニングは欠かせない。
●専門家プロフィール:寺内雄司
八王子市で犬と人の学び場、ポケットを運営。家庭犬訓練士やシッター等の資格を持ちドックトレーニング・ペットシッター・ペットホテル等、飼い主をトータルサポート。ホテルは最高の3つ星受賞。2019年家庭犬訓練競技会グループ優勝。