■急にはじめた仕草には注意が必要
首をかしげるのはかわいらしい仕草だが、これにも疑われる病気があるという。
「首をかしげている場合は、『斜頸』といわれて、筋肉や神経に異常がある場合があります。また舌を出しっぱなしにしている場合も神経の麻痺などの可能性があります。生まれつきの場合もありますが、急にそういう仕草をしはじめたときは、特に注意が必要です」(千田先生)
苦しそうなときだけが病気ではない。よく見かける仕草でも、病気が隠れているなら気づいてあげたい。そんな些細なしぐさでも、正常なときと病気のときがあるだろう。見分け方はあるのだろうか。
「普段見慣れているような行動でも、通常の頻度よりも頻繁にするようになった場合には注意してください。体を舐める、かじる、引っ掻く、首を振るなど、通常見られるような行動でも、頻度が過剰に高くなったら気をつけなくてはなりません。少なくなったときも注意しましょう。ソファーに飛び乗らなくなった、階段を上がらなくなった、おとなしくなった、散歩のときに引っ張らなくなったなど、問題行動が少なくなって喜んでいたら具合が悪かったということもよくあります」(千田先生)
なにげない変化も、健康のバロメーターになっている。いつもと違うと感じる場合には、注意して様子を見ることが必要のようだ。
■健康な時の状態を把握しておくことが重要
ペットからのサインに気づくために、飼い主にできることはあるだろうか。
「普段からよく自分のペットを観察しておくことです。また、自分のペットだけを見ていても気がつかないことがあります。犬友達、猫友達を作って他の犬や猫の仕草を観察し、見慣れておくことも大切です」(千田先生)
自分のペットが他と違う行動をしていると分れば、病気に早く気がつくかもしれない。
「病気を早く見つけるためには健康なときの状態をよく観察しておくことです。犬の場合は、指示に従うトレーニングをしていると、指示に従うスピードが『遅くなったかな?』とか少しの行動の変化にも気がつきやすくなります。また、毎日ブラッシングしたり、体のどこかに普段から触れるようにしておくことも大切です。少しの腫れや、触り心地の違い、毛艶、皮膚温度の違いなども病気の兆候になります。普段触らせてくれるところを触らせてくれない場合などは、痛みがある可能性があります」(千田先生)
健康なときの状態を知っておくことは、ペットの健康維持に役立つことが分かった。少しでも変化があるときは見落とさないようにしたい。
■ペットの個体で変わる飼い主への伝え方
ペットは話すことができないが、明らかに不調な場合、アピールしたりしないのだろうか。
「個体によって、具合が悪い時に飼い主から離れたがる個体と、飼い主にアピールする個体があります。普段と変わったことがあったときは、小さなことでも注意しておいてください」(千田先生)
普段の様子を知っている飼い主だからこそ、不調や病気にはいち早く気づきたい。まずは、いつもの様子をよく把握しておくことが大切ということが分かった。また、他の個体との違いにも注意したい。そうすることで、病院にかかるときなどに、ペットの代弁もしやすくなるのだろう。
●専門家プロフィール:千田純子
千葉県動物愛護推進員。ペットの犬や猫の問題行動の予防や改善のためのコンサルテーションや個人トレーニング、セラピー犬、猫の育成などを行っている。