■お葬式のお線香
まずは、お葬式でお線香を上げるとき、一本なのか二本なのか……。家の仏壇にも毎日お線香を上げる人もいると思うが、その場合は何本が正しいのか尋ねた。
「お線香の本数や上げ方は宗教により違います。訪問先でお線香を上げる際は、できるだけ相手の宗教に合わせることが望ましいですが、不明の場合は自分の宗教の上げ方で構いません。実際に、お線香を上げた痕跡などを見ると分かることが多いです。自身の家がどのような上げ方をするのかは、身内などに聞いて確認しておくとよいでしょう」(上田さん)
ぶっつけ本番確認は避けるべきだろうということは分かった。できるだけ、事前にお作法を確認しておきたいところだ。
■無料駐車場における白線のマナー
次に、イベントなどの臨時無料駐車場などで、なんとなく白線内に止めなければいけないという暗黙のルールがあるのだが、「白線は単なる目安で規則じゃないよね」という声もあったため、上田さんの見解を聞いてみた。
「白線内に止めることは規則ではないですが、自分を含めその駐車場を利用する人全員がスムーズに出し入れできるように引かれているものです。誰かが守らなければ、多くの人が不快な思いをすることになってしまいます。マナーというのは、他人を不快にさせないための思いやりや配慮を行動に起こすもので、多くの人が利用する場所では『暗黙のルール』ともいわれます」(上田さん)
自分の行動のせいで、誰かが不快な思いをしているということのないようにしたい。
■洋食屋さんでご飯をフォークの背に乗せる件
昭和世代の人にはおなじみの、洋食屋などでご飯をフォークの背に乗せて食べる謎のマナーについても尋ねてみた。
「フォークを背に乗せて食べるのは、フランス式のマナーではよいこととされています。ただし、イギリス式のマナーではNGなのです。日本での西洋料理のマナーの認識では、フランス式とイギリス式が混同する傾向にあります。混同されている中でも、日本の文化がどちらかというとイギリスの影響を多く受けているため、イギリス式マナーの『フォークの背にご飯をのせて食べることをNGとすること』が西洋料理のマナーとして広まっているようです。洋食屋さんなどのカジュアルなお店では型にはまらず、おいしく食べることができる方法で召し上がっていただいてよろしいかと思います」(上田さん)
レストランなどでは人の目もあるため、正しいマナーを知った上で臨機応変に対応する必要がありそうだ。
自分の箸で取り分ける直箸についても聞いた。
「自分の箸で取り分ける直箸は、嫌い箸のひとつで日本のマナーではNGです。感染症の可能性もございます。取り箸で取り分けるようにしましょう」(上田さん)
直箸で取り分けるメリットに比べ、デメリットのほうがはるかに大きい。直箸NGは理にかなっていた。
今回紹介した、知っているようで意外に知らないマナーは、まだまだたくさんありそうだ。当たり前だと思ってやっていることも、たまには振り返ってみるとよいだろう。大人のたしなみとして、きちんとしたマナーを都度確認し、自信をもって振る舞いたいものである。
●専門家プロフィール:上田 由佳子(うえだ ゆかこ)
NPO法人日本サービスマナー協会認定マナー講師。大阪外語専門学校通訳ガイド科を卒業後、日本料理店に勤め「おもてなしサービス」に興味を持つ。その後ショットバーを経営。お客様にお店の滞在時間をどのように過ごしていただき、次回への来店意欲を高めるのかを検証しリピート率 70 パーセントを確保。常連様の大切さを認識する。後に大手和食割烹居酒屋チェーンで「おもてなし」、次回来店につなげる「心に残るサービスの在り方」を後輩に教育 、指導を行う。