
■午後の紅茶、タケモトピアノ……人気CMの共通点は?
お話を伺ったのは、CM好感度調査やCM効果の研究分析などを実施するCM総合研究所。CMソングは、既存のヒット曲、替え歌、オリジナルソングの3種類に分けられる。
「既存のヒット曲の場合、BGMとしてではなくCM出演者が歌うとパワーが増すことが多いようです」(CM総合研究所)
最近だと、HYの「366日」など透き通る歌声を披露した上白石萌歌出演・キリンビバレッジ「午後の紅茶」、菅田将暉と中条あやみが楽しげにデュエットするトヨタ「カローラ スポーツ」などが代表的だ。
「オリジナルソングや替え歌の場合は歌の巧拙ではなく、(1)キャッチーなフレーズ(の連呼)、(2)歌いたくなるメロディー、(3)ダンスとの掛け合わせなどの要素を含んでいると印象に残りやすく、話題化できる可能性が高まります」(CM総合研究所)
(1)(2)といえば、タケモトピアノの「みんなまぁるくタ・ケ・モ・ト・ピアノ〜♪」がおなじみ。(3)は、高橋一生がコミカルなダンスを披露するAGCの「なんだしなんだしAGC」や宮川大輔の高速ダンスが話題の「PayPay」などがある。
「短期間で認知度を上げるのに効果的なのは、既に広く知られている『過去に流行した曲の替え歌』です」(CM総合研究所)
キウイのキャラクターが登場するゼスプリインターナショナルジャパンの「アゲリシャス」は、2005年に大流行したO-Zone「恋のマイアヒ」の替え歌だ。この曲をパラパラで踊ったという人も多いのではないだろうか。
■ついついCMソングを口ずさんでしまうのはなぜ?
そもそも、なぜCMソングはこんなにも頭から離れないのだろうか。
「テレビは他のデバイスとの並行利用や家事や食事などをしながら見ること(ながら視聴)が多いメディアです。特にCMはテレビ番組と違って生活者が自ら選んで視聴するものではなく、偶然流れてくる映像であるため、番組よりも集中して見られることは少ないでしょう。そうしたなかで、人がテレビ画面に意識を向けていなくても、音声情報なら耳に入る可能性があります。なかでもメロディーに乗せた情報は記憶されやすく、メッセージの意味を理解するより前に、無意識のうちにメロディーや歌詞が記憶に刻まれるのでしょう」(CM総合研究所)
では、メロディーがもたらす効果は、実際どのくらい高いのだろうか。
「メロディーは言語よりも記憶されやすいため、企業名・商品サービス名やキーワードを老若男女問わず効率良く認知させることができます。2019年度のCM好感度調査における『CM好感要因(あるCMを好きな理由)』では、『音楽・サウンド』が全15項目中4位に入りました」(CM総合研究所)
時代により高低はあるものの、CM好感要因としての「音楽・サウンド」は、15年間4~6位に入り続けているそうだ。
「また2019年では約3人に1人がCMを好きな理由として『音楽』が印象的・効果的だったと回答しており、CMを好きな理由・印象に残った理由として音楽が大きな影響を与えていることがわかります」(CM総合研究所)
企業にとっては大きな宣伝効果を見込めるCMソング。これからどんなCMソングが登場し、お茶の間を盛り上げてくれるのだろうか。注目したい。
●取材協力:CM総合研究所
1984年設立。平成元年から毎月実施しているCM好感度調査をもとに、広告を展開する企業へのコンサルティングを行い、より良い広告作りや広告効果の最大化をサポートしている。またテレビCMへの好感反応を通して消費者マインドの観測・分析を実施。「好感は行動の前提」をテーマに、生活者の「好き」のメカニズムの解明に挑戦し続けている。
(酒井理恵)