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“縁切り死”で、本当に縁は切れるのか?

“縁切り死”で、本当に縁は切れるのか?近年、どこの誰とも分からない「身元不明遺体」が増え続けているという。NHKの『クローズアップ現代+』で紹介された“縁切り死”は、あえて所持品を持たず、自分の身元をわからないようにして自殺するという死に方だ。なぜ、このような死に方が増えているのだろうか。そして、“縁切り死”を選ぶことで、本当に家族との縁は切れるのだろうか。

■「孤独死と近いものを感じる」と専門家


まず、お話を伺ったのは、これまで多くの遺品整理の現場に立ち会ってきたという遺品整理アドバイザーの上東丙唆祥さん。上東さんによると、縁切り死は孤独死の問題と非常に近いのだという。

「孤独死とは、誰にも看取られず、一人きりで死ぬことを指します。『交友関係が希薄な人が迎える、寂しい最期』というイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。しかし実際には、孤独に死ぬことをあえて望んでいる方も多いんです。そして、私の調査では、その9割が、心にトラウマを抱えています。多くは、幼少期に両親との関係が上手くいかなかったことですね。そのトラウマが大人になっても解消されないと、自分の家族にも心を開けません。その結果、引きこもりになったり、『外こもり』といって、河原にずっと座っていたり、インターネットカフェで長時間過ごしたりするなど、家の外にこもるようになるのです」(上東さん)

その延長線で亡くなったと思われる人の部屋には、ある特徴が見られるというのだ。

「部屋を整理していると、『この人は現実社会に疲れてしまったのかな』というのが何となくわかるんです。特に、生前の食生活が崩れているのが顕著に見て取れますね。すべてが灰色に見える、あきらめに満ちた現実……『部屋が灰色だった』という表現をよくしています」(上東さん)

ここまでが、孤独死の特徴。縁切り死はその前の段階であると上東さんは推察する。

「自殺を考える人は部屋を綺麗にして、身辺整理する傾向が強いです。孤独死の場合は、そこまで気が回らないのかもしれませんね。しかし、死に方がどうであれ、どんな遺品にも思い出があり、必ずその遺品を受け取る遺族がいるということを、私はこれまでにたくさん見てきました。思い出という過去がある限り、縁が切れることは絶対にありません」(上東さん)

■「行方不明」による遺族への負担は少なくない


続いて、相続や終活の専門家・明石シニアコンサルティングの明石久美さんに、“縁切り死”を選ぶことによる遺族の弊害という、現実的な話をしてもらった。

「全く身寄りがない場合は別ですが、そうでなければ家族と縁が切れることはないでしょう。例えば、一人暮らしで賃貸に住み、家族が保証人になっている場合、家賃の支払い問題があります。また、部屋にあった家具・家財は、生きている可能性がある以上捨てるわけにはいきませんから、保管しておく必要があります。また、市県民税、健康保険などの税金関係も家族が払わなくてはならない場合もあります。まして、ビルから飛び降りた、電車に飛び込んだなど、死に方によっては損害賠償や慰謝料を遺族が命じられる可能性もあります」(明石さん)

亡くなったことが分かれば遺産分割の話も進められるが、行方不明という状態は一番中途半端なのだそうだ。無論、遺体の身元捜索をはじめ、行政にかかる負担も大きい。
明石さんのクライアントは、おもに60~80代の中高年世代。

「葬儀はやらなくていい、遺品はすべて捨てていい、遺骨はその辺にまいてくれていい。実際に相談に来られる方で、『とにかく家族の負担になりたくない』と望む方は多いですね。しかし、家族に迷惑かけたくないという思いが行き過ぎると、反対に家族に迷惑がかかることにもなりかねないのです。本人は『親ごころ』のつもりでも、実際は家族の立場に立っていない、自分本位な考え方だと言わざると得ません」(明石さん)

その人が生きてきた痕跡は、誰かが整理しなくてはならない。人は一人では生きていけないが、死後も必ず誰かに頼らざるを得ない、と明石さんは続けた。
現代社会の家族のあり方を考えさせる“縁切り死”。あなたはどう感じるだろうか。

●専門家プロフィール:上東丙唆祥
生前整理・遺品整理アドバイザー。「e品整理」FCチェーンを運営。一般社団法人全日本たすけあい共同参画理事、一般社団法人日本遺品整理協会顧問。20年にわたり遺品整理や孤独死特殊清掃業務を行っており、その件数は3万8000件を超える。テレビ・ラジオ出演、雑誌掲載、著書、講演などの実績も多数あり。

●専門家プロフィール:明石 久美
相続・終活コンサルタント、明石シニアコンサルティング代表。これから相続コンサルネット理事長。行政書士、ファイナンシャルプランナー(CFP/1級)、葬祭アドバイザーなどの資格を有し、生前対策や相続手続きなど、老後の問題を幅広い視点で総合的にサポートしている。雑誌掲載、著書も多数。講師歴は13年、全国から依頼を受けている。

(酒井理恵)
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