■まずは全体に呼びかける
近くにいる人の香水や柔軟剤のにおいがキツいというのはストレスになる。友人や家族ならまだしも、職場の同僚や上司となるとなかなか指摘しづらい。では、どうアプローチすればよいのか。
「伝え方はさまざまですが、まずは会社のコンプライアンスとして、社員全員に告知をするという方法が挙げられます。たとえば、接客やサービス業の場合は『香水や濃い柔軟剤の香りを不快に思っている社員から相談がありました。快適な職場を作ることやお客様を不快にさせないことを心がけ、互いに気をつけましょう』というような呼びかけをするとよいでしょう」(寒川さん)
はじめにできることは、全体に呼びかけるというもの。自分がアナウンスできるような立場でない場合は、上司に相談して呼びかけてもらうとよいだろう。
「基本的に、香水や柔軟剤に含まれている香料は化学薬品を使っています。化学薬品を使っている以上、好みだけの問題ではありません。その成分がアレルギーという人もいるでしょう。そういう観点からアナウンスするのも有効でしょう」(寒川さん)
香料のせいでアレルギー反応を起こす人もいるという。単に「苦手」や「嫌な思いをしている」と訴えかけるよりも有効だろう。
■一方的にならないように話すことが大事
「香り」に関する問題はかなり繊細だ。指摘方法を間違えると、相手を傷つけることにもなりかねない。寒川さんが具体的な指摘法を教えてくれた。
「まずはにおいを発している人と同性の上司が指導すること。前提として『その人はとても身だしなみを大切にしている人』と誉めることから入るとよいでしょう。そして、過剰な香りを発さないように工夫してもらうように働きかけます。その際、アレルギー性であったり、体質的に香りが合わない人がいるということも伝えましょう」(寒川さん)
香水などを意識して付けていないのに、香料のきついにおいを発している相手の場合はどうだろう。
「実際に香水や香りが強い柔軟剤を使用しているかの事実確認をします。心当たりがないという場合は、クローゼットに香るものを置いているか、香水成分の入った化粧品を使っているかということもヒアリングしましょう。そして、相手の言い分をよく聞き、なるべく一方的にならないよう話し合うことが大切です。私たちが研修を行う際には、香りよりもデオドラントを重視するようにおすすめしています」(寒川さん)
デオドラントに気をつけることで、発する香水などのにおいにも気を配るようになるのだろう。
現代において「スメルハラスメント」は社会問題の1つだ。当人からするとよい香りであっても、周りには日常生活に異常をきたすほど苦手という人がいる場合もある。これからの社会では注意するにあたり、相手との関係性を悪くさせないように言葉をうまく選ぶというスキルも重要になってくるのだ。
●専門家プロフィール:寒川由美子
日本現代作法会会長、日本マナーアカデミー学院長。教育関係をはじめとし、多くの大学で講師を務める。また企業や団体でのビジネスマナー研修も数多く行う。NHKをはじめとし、ラジオやテレビの出演も多数ある。