■すぐ慣れる子と慣れない子の違い
その子の性格や生まれ育った環境が、保育園に“慣れること”に影響するのだろうか。
「性格的な影響はほとんどありません。何事にもあまり動じず活発なお子さんでも、急に『行きたくない!』と言い始めたり、内気で大人しく保育園が楽しそうに見えないお子さんが『毎日楽しい!』と感じていたり、お子さんの性格と“慣れる慣れない”は大人の想像を超えるものです。同様に、家庭環境もあまり影響があるとはいえません。大家族のお子さんの方が人に慣れているため馴染みやすいかもしれませんが、核家族でママと離れたことがないからといって、馴染めないこともありません」(横山さん)
では、慣れない要因には、具体的にどのようなことが考えられるのだろう。
「園での活動や雰囲気、さらにお友達や先生との関係などに要因があることが多いです。そのため、時間を作って園の様子を見に行ったり、担任の先生などに話を聞いてみることをおすすめします」(横山さん)
入園直後ではなく、年中や年長組になって突然嫌がるようになった場合は、園生活、あるいは家庭環境に具体的な要因がある場合が多いとか。そんなときは、子どもとゆっくり話をすることが大切だそうだ。
■慣れない子どもを持つママへのアドバイス
悩んでいるママは、今の状況をどう捉え、どう考えるべきなのだろう。
「入園したばかりのお子さんが、慣れない環境にひとりで置いて行かれる不安や恐怖から、大泣きするのも無理はありません。『まわりの子どもたちが泣かなくなったのにうちの子だけ……』と不安になる気持ちはわかりますが、卒園するまでずっと泣き続けたというお子さんに一度も出会ったことがありません。幼児の心は柔軟性がありますので、泣きながら毎日通ううち、必ず慣れる日が来ますよ」(横山さん)
多くの場合、時間の経過とともに緩和、解決するとか。「いつか必ず慣れる日が来る」と信じ、ママが一緒になって泣いたり不安になったりしないことも大切なのだ。
「子どもたちは大人の心の動きに敏感なので、不安そうなママの表情を読み取り、より一層、保育園が嫌な場所だと思ってしまうこともあります。嫌がれば登園しなくて済むというよくない習慣をつけないためにも、体調が悪くない限りは登園させること、そしてその状況に耐えて静かに見守ることが大切です」(横山さん)
ママの落ち着いた姿勢は、子どもたちの心に安心感を与えるのだろう。
■ママが心がけるべきこと
子どもが早く慣れるよう、ママがしてあげられることはあるのか。
「お子さんが不安定になる原因のひとつに、まわりの大人のちぐはぐな対応があります。園の先生方と信頼関係を築き、お子さんへのアプローチや関わり方を、園と家庭で統一しましょう」(横山さん)
大人の対応の違いが、子どもを混乱させてしまうことも少なくないそうなので注意したい。また、スマホやゲーム機器など架空の世界で遊ばせるのではなく、現実の世界で親子の触れ合いを楽しむのも効果があるという。
「園には現実の世界で遊ぶためのおもちゃや遊具があり、一緒に遊べるお友達がいます。現実の世界で、他者との触れ合いを通した遊び方を心得ているお子さんは、早く馴染めるでしょう」(横山さん)
子どもとの触れ合いを心がければ、親子間のコミュニケーションもきっと深まるだろう。最後に横山さんは、「子どもを園に送迎するときは、いきいきとした笑顔で」と教えてくれた。子どもたちは、親が笑顔で社会に出かける姿を通し、社会がどのような場所かを感じ取るそうだ。子どもが未来に希望を持てるよう、明るく前向きなママを日々見せてあげよう。
●専門家プロフィール:横山 人美
Keep Smiling代表。パーソナリティーコンサルタント、講演・セミナー講師。各種メディア執筆やテレビ出演など多数。前向きな発達障害とのかかわり方を始め、子育てや人間関係の悩みが楽になる心理学を伝えている。