■世帯年収600万円未満で毎月10万円超の住宅ローンは危険?
まずは、世帯年収が600万円以下の場合について聞いた。
「アンケート結果を見てみると、世帯年収400万円以下のグラフと400万円超600万円以下のグラフでは毎月返済額が似た分布になっています。世帯年収400万の人の手取り月収は、ボーナスを除けば20万円くらいです。毎月10万円の住宅ローンは、このグループで最も年収が高い人でも手取りの月収の半分を住居費に使っていることになります」(千日太郎さん)
手取り月収の半分を住宅ローンに費やすのは、貯蓄に回すお金もあまりなく、確かにリスキーな気がする。
「私は著書やブログで、安全な住宅ローンの毎月返済額として、手取り月収の4割以下とすることをおすすめしています。年収600万円の手取り月収は約25万円で、その4割は10万円ですが、88%の人が毎月10万円以下にしています。毎月10万円の住宅ローンは、年収600万に達するまではリスクのある数字といえるのです」(千日太郎さん)
月々の返済は、手取りの4割以下に抑えるのが安心とのこと。
■世帯年収1000万円超でも毎月20万円の住宅ローンは危険?
アンケートのボリュームゾーンである、世帯年収1000万円超の傾向はどうなっているだろう。
「世帯年収600万円超1000万円以下で最も多数派となっている毎月の返済額は7~10万円以下です。収入600万世帯の月収を25万円とすると、その4割以下に抑える堅実な住宅ローンといえるでしょう」(千日太郎さん)
では、年収1000万超1500万以下の世帯ではどうなっているのだろうか。
「世帯年収1200万の手取り月収は50万円であり、その4割は20万円です。しかし、毎月15万円以上20万円以下の返済が最も多いのかというと、実際はそれほど多くありません。その理由は、夫婦共働きで1000万円を超えるという人が増えているからです。妻の出産などの理由で収入が減少することを見越すと、単純に今の月収で住宅ローンの上限を決めるのは危ないのです」(千日太郎さん)
将来を見据えたライフプランの策定が重要なのだ。
さらに世帯年収が高い、1500万円を超えるとどうなるのか?
「20万円超が約半分の49%を占めていますね。しかしこのままどこまでも高くなるかというと、そうでもありません。たとえば、フラット35では借入額は8000万円が上限となっています。また民間住宅ローンの上限は1億円というところが多いです。ちなみに8000万円から1億円の住宅ローンですと、毎月の返済額は25万円前後になります」(千日太郎さん)
共働きの場合の住宅ローン減税の控除額の上限が8000万円ということもあり、それが住宅ローンの上限と考えてもよさそうだ。
■毎月返済額を決める二つのポイント
最後に、住宅ローンの返済額を決めるポイントを紹介してもらった。
「住宅ローンの毎月返済額を決めるにあたり、2つのポイントに注意してください。
1:35年ローンなら、計420回ある返済のミッションをクリアできるか?
2:定年退職までに完済できるか?
住宅ローンは、決まった金額を毎月銀行に35年なら420回払うことです。そのため、毎月の返済額が現状の家賃を超える場合にはリスクが増えます。アンケートでは47%と約半数の人が賃貸時よりも1万円以上高くなったと答えています」(千日太郎さん)
マイホーム購入時など、大金の計算をするときは気をつけたい。
千日さんが教えてくれたように、住宅ローンは非常に長いスパンの借金返済となる。そのため、将来を見据え慎重に検討する必要がある。今回紹介した内容を参考に、自分にあった返済金額を決めてもらえれば幸いだ。
●専門家プロフィール:千日 太郎(せんにち たろう)
オフィス千日LLC.代表社員、公認会計士。正しい住宅ローンのノウハウを広く発信することをライフワークとし、自身のブログで一般の人からの相談に無料で答えるほか「ナビナビ住宅ローン」など多数のメディアで記事執筆と監修を行っている。