
■共働きなのに夫が家事や育児を手伝ってくれない理由
共働きの妻が、家事や育児に悪戦苦闘しているのに知らん顔の夫。その心理的理由とは……?
「たとえば、母親が専業主婦でなんでもこなし、家事全般は当然に女の仕事とする考えの家庭で育った夫の場合、単に“気づかない”、“それは女の仕事と思ってしまう”ことが原因と考えられます。もともと性格的によく気が付く、料理が好き、洗濯が好きという夫もいます。しかし、そうでないタイプの場合、悪意はなくても、なかなか気づかないのです」(阿部さん)
ほかにも理由はあるのだろうか。
「共働きといっても、夫婦間で稼ぎに格差がある場合の方が多いのではないでしょうか? そうすると、どうしても家事育児の負担は妻の方に偏りやすいです」(阿部さん)。
夫のほうも不公平さを感じているケースがあるのかもしれない。
■夫婦の間で「夫の家事放棄」を解決する方法はある?
悪意がなく、本当に気づかない夫の場合、どうすればいいのか?
「気づかないのならば、子供に対するのと同じように、夫にある特定の仕事(ゴミ捨て、植物の世話、食器洗い、ペットの世話など)を与え、何度も何度もパターン化させ、習慣化させていけばよいと思います」(阿部さん)
しかし、あまりビジネスライクになりすぎるものよくないようだ。
「『エクセルシートで、家事分担を分かりやすく表にする』という方がいましたが、あまりお薦めできません。夫婦が取り決めを尊重するタイプならいいのですが、(職場のように)家庭内でエクセルシートをもとに、プレゼンして分担を決めていくという方法では、夫がうんざりする可能性があります」(阿部さん)
妻がどんなに努力しても、協力しようとしない夫もいるようだ。
「問題は、『家事育児は妻がやって当たり前』と考え、ねぎらいや簡単な手助けも、ありがたく思う気持ちも全くない冷たい夫のケースです。既に夫婦関係も冷え切っていることも多いでしょう。ただ、妻が別居や離婚を切り出したとたんに態度を改め、家事を手伝い始めたというケースはあります。一方で、妻がそこまでの対応をしても、全く歩み寄りを見せない夫もいます。そのようなケースでは、家事分担の改善については非常に悲観的だといえますね」(阿部さん)
家事の分担問題が別居や離婚の原因にならないようにしたいものだ。
■ストレスをためず、夫に頼らず家事育児を軽減するには?
それでも夫の協力が得られない場合、家事そのものを見直すことはできるだろうか。
「一時期、“断捨離”という言葉が流行りましたが、そもそも家にモノが多すぎないか、確認するといいでしょう。モノが減ると片付けの労力が減り、家事軽減に大変役立ちます。子供には整理整頓の習慣をつけ、年齢に応じて、部屋の掃除、洗濯物干し、食器運びなどを手伝ってもらうようにしましょう。掃除ロボットの導入など、家事軽減の電化製品を取り入れるのもひとつの方法です。近年は非常に優れているものもあり、家事が大幅に軽減しますよ」(阿部さん)
ロボットやAIがないと家事が進まないという時代が来るのも、そう遠くはないのかもしれない。
「ほかにも家事軽減のアイディアは、書籍やなどでもいろいろと紹介されています。楽しみつつ、自分の技として取り入れてはどうでしょうか? また世帯年収にもよりますが、家事の一部をプロに任せてもよいと思います。家事分担が理由で夫婦仲が悪くなるようなことのないよう、いろいろと重なって大変な時期は代行依頼することも検討しましょう」(阿部さん)
夫に決まった仕事を任せ、繰り返し担当してもらうことが、家事分担の第一歩といえる。しかし、家事や育児の負担を軽くしてくれるのは夫だけではない。ハイテク家電や家事のプロを利用することも視野に入れてみてはいかがだろう。
●専門家プロフィール:阿部貴子
行政書士、離婚カウンセラー。一橋大学経済学部卒。「女性をしっかり支える阿部貴子の離婚相談」代表。夫の浮気、性格の不一致やモラハラなどによる離婚相談、また離婚後の財産分与など、さまざまな離婚カウンセリングに対し、豊富な経験を生かして自ら対応している。「財産分与について、決め方、注意点、ポイントをまとめて解説!」では、基礎知識や対策を紹介している。またシングルマザーやその予備軍によるい助け合いコミュニティ「シングルマ」などを運営する。