
■家具の上に置く小物も同じテイストに
お店で見て気に入った家具でも、家に置くとなぜかイメージに合わない……という経験をしたことがある人もいるだろう。いったいなぜだろうか。
「考えられる理由の一つが、“以前からある他の家具や部屋のテイストと合っていない”ということです」(八木さん)
どのように解決すればよいだろうか。
「たとえばチェスト(衣類や小物などを収納するための引き出しのついた家具)など小物を置ける家具の場合、上に置くものも同じテイストにまとめることです。その周辺の空間から、自分のイメージに合わせていことができますよ」(八木さん)
なるほど、部屋作りは家具をそろえればそれで終わりではないということのようだ。
■北欧の小物や食器に明るい色が多い理由
部屋作りといえば、最近は北欧風が人気だ。その魅力を聞いてみた。
「北欧は“日照時間が短く、暗い時間が長い”という特徴があります。冬至の時期には、フィンランドやスウェーデンでは日照時間は約6時間、デンマークでは約7時間です。そのため、部屋に植物を置いたり、小物などに明るい色や目立つ柄を選んで元気をもらうという考えがベースにあるようです」(八木さん)
天気や日照時間に左右されずに元気をもらえる部屋は魅力的だ。
「さらに北欧の方はおうち時間が長いため、自宅での暮らしを楽しむ工夫をしています。日常で使う食器や花器など、普段使いの物こそ、お気に入りを使用しています」(八木さん)
北欧では窓辺も工夫をしている。部屋の中からはもちろん、外から見る人もワクワクするような装飾が多いそうだ。
■部屋作りのポイントは「照明」と「カーテン」
部屋を北欧風にまとめるための具体的なポイントはなんだろうか。
「いろいろとポイントはありますが、代表的なのは照明とカーテンなどのテキスタイル(生地)です。照明はお部屋の真ん中に1灯だけ配灯するのではなく、テーブルスタンドなどの間接照明を使用して陰影を楽しむとよいでしょう。また、テキスタイルは鮮やかな色の大胆なプリント柄をデザインしたものを選ぶと北欧風に近づきます」
明かりやカーテンの工夫なら、建物自体を変更しにくい賃貸住宅でも対応できる。
「リフォーム工事をしなくても、先ほどお伝えしたように照明器具を変えるだけで、北欧風に仕上げることができます。また北欧風といっても、ナチュラルやモダン、アンティークなどテイストはさまざまです。どのテイストが自分にとって心地よいのかを知ることが、失敗しない近道ですよ」
日本にはまだまだ和室も多く存在するが、純和風な部屋でも北欧風に近づけるのだろうか。
「こちらもカーテンがポイントの一つです。柄や生地選びを工夫したいですね。木製ブラインドを採用するという選択肢もあります。日本人はもともと障子とふすまの暮らしだったためカーテンは後回しになりがちですが、面積が大きい分、雰囲気づくりにはとても大切な要素です」
カーテンは大きな家具にくらべると安価で、簡単に交換することができる。チェスト上の小物など、ちょっとした工夫を含め、部屋作りはアイデア次第だ。今回伺ったことを参考に、素敵な北欧風の部屋作りにチャレンジしてみてはいかがだろうか。
●専門家プロフィール:八木 麻希(やぎ まき)
盛岡市出身。北欧家具店や設計事務所などの勤務を経て、2020年5月に「pïkkunïk建築設計事務所」を開設。「pïkkunïk建築設計事務所」はインテリアデザイナー&建築士として、インテリアコーディネートや空間プランニングの仕事をしている。公式Instagramでも情報発信中。
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