■騒音の規約がある共同住宅の場合
アパートやマンションなどの共同住宅で、最も多い苦情は騒音問題だそうだ。
「アパートやマンションなど共同住宅の騒音は、足音、掃除機、洗濯機など日常生活が原因の『生活騒音』、カラオケやピアノなど『日常生活以外の原因による騒音』に分けられます。共同住宅において生活騒音はある程度仕方がないものですが、洗濯機は音だけでなく振動も生じるため、トラブルになりやすいです」(田中さん)
トラブルを回避するためには、「規約」の有無がポイントになるとか。
「洗濯機などを使用できる時間帯について規約がある場合は、当然守らなくてはなりません。逆に、規約で定められている時間帯であれば、洗濯機を通常使用することは可能です」(田中さん)
しかし、規約を守って洗濯機を使用していても苦情が入ることはあるという。
「規約で許可される範囲内で使用しているにも関わらず、近隣住人から実際に苦情が入ったり、不平不満を表すため壁や天井を叩かれたりすることがあるかもしれません。その際は、トラブルを防ぐため一時的に洗濯機の使用を止め、管理会社と相談して個別に対応する必要があります」(田中さん)
常日頃から近隣住人に迷惑をかけていないか、自身を顧みることも大切だ。
「社会通念に当てはめて、もし近隣住人の受忍限度を超えるような騒音を発生している場合は、速やかに騒音防止対策を講じなければなりません。洗濯機が適切に設置されていない場合は音や振動の原因になるため、早急に是正する必要があるでしょう」(田中さん)
入居時の適切な設置こそが重要といえそうだ。
「壁から少し離して、防振台の上に設置すると騒音を低減できます」(田中さん)
使用する時間帯だけでなく、音や騒音を低減する工夫もしておきたい。
■騒音の規約がない共同住宅の場合
規約がない場合、洗濯機の使用は何時が適切だろうか。
「たとえば、拡声器を使用した選挙演説は朝8時から夜8時と法律で定められ、工事現場の作業開始時間は一般的に朝8時からです。洗濯機の音は生活騒音ですので、これらの騒音より許容される範囲が広いと判断できますが、それでも朝7時から夜10時位が限界といえるでしょう」(田中さん)
つまり、朝6時や夜11時以降に洗濯機を使用することは、近隣住人によっては受忍限度を超える恐れがあるということだ。
「規約の有無に関わらず、騒音の頻度や時間帯が近隣住人にとって受忍限度を超え、苦情があるのに被害回避努力を怠り放置し続けると、法的問題に発展する可能性もあります」(田中さん)
たかが苦情と侮るなかれ。規約の有無に関わらず、朝7時から夜10時位の使用を心がけよう。仕事などの都合で、どうしても「その時間帯に洗濯機を回せない」という人は、休みの日にまとめて洗濯したり、コインランドリーや宅配洗濯代行などのサービスを利用するのも一案かもしれない。
●専門家プロフィール:田中 勲(ゼロシステムズ)
著書「こんな建売住宅は買うな」を幻冬舎より出版。不動産の専門家としてテレビやラジオ、YouTubeに出演。田中住宅診断事務所、仲介手数料無料ゼロシステムズ、レジデンシャル不動産法人(株)の代表取締役。宅建士など不動産関連の資格を複数取得。
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