■海外での催眠術活用事例
話を聞いたのは、日本催眠術倶楽部の催眠クリエイター、田村さんだ。
「催眠術は、心理面の操作に関する大半に関して効果があると考えられています。世界で最も活用されているのは治療としてです。催眠療法は日本では民間療法扱いですが、海外では状況が違います。病院で行う施術の約7割をカバーできるため、アメリカなど健康保険が国民全体に普及してない国では、病院に行けない人が、催眠療法士に施術を頼むのが常識になっていることもあります。また、催眠術は心理面を操作できるため、美容系催眠での依頼者も多いです。ダイエットや美肌、姿勢の矯正等にも効果があると考えられています」(田村さん)
なるほど。国によっては治療、健康療法として使われていたとは。そう考えると、日本の催眠術に対するイメージは、諸外国とだいぶ異なっていることがわかる。
「また、海外の軍事大国の大半が催眠術師をスパイ行為や自白などで軍事利用されているといわれています。ケネディ暗殺での催眠利用や、オバマ大統領の演説でも催眠トークが使われたりと、海外では催眠は学問として扱われており、日本のようにオカルトとして扱われていません。自己啓発や目標達成、モテキを作ったり、売り上げを上げたり、恐怖症依存症の改善など様々なカテゴリで利用されています」(田村さん)
ちなみに補足すると、ケネディ暗殺は催眠術によって行われたという説もあるようだ。1967年にルイス・マンゲル・カスチロが何者かに催眠によって暗殺するように暗示をかけられたのではないかという説である。オバマ大統領の演説についても、彼のスピーチの卓越性のヒミツは、催眠術のテクニックを取り入れているからでは、という見方もあるようである。
日本のオカルトイメージが先行している状況について、田村さんは以下のように指摘を寄せる。
「人生を変えることができる技術が催眠術でありますが、日本人の大半が多分テレビの影響かと思いますが、オカルトとして見てしまうため、人生を好転させる大きな機会損失になってしまっているかと思います」(田村さん)
■催眠術の可能性
催眠術というと、一種の覚醒のイメージもある。たとえばフランス語が一切話せない人に、あなたはフランス語を話せると催眠術をかけたとして、話せるのだろうか? それともそもそもとして、その人ができないことは催眠術でもダメなのだろうか……?
「例えばですが、言語を使わない非言語催眠(言語を使わずに催眠術をかける技法全般のこと)というカテゴリでは、フランス人、フランス語ネイティブの方の言語脳の利用の仕方を、そのまま情報だけ抜いて、フランス語をこれから学ぶという人に複製すると、フランス語を学ぶ際に単語の覚え方や話すコツが素早く身に付くという現象を引き起こすことが可能です」(田村さん)
なんと、催眠術でそんなことも可能なのか。となると、催眠術を使うことによって、学習能力も向上すると言えるのだろうか。
「可能であるかとの質問には『可能ですが、その同調能力を持ち合わせてない場合には
長期間の訓練を要す』と言うのが答えになりますね。ただ、個人差がありますし、非言語催眠の技術者のレベルにもよりますが、極端に同調能力が高い場合はいきなりフランス語を話せるかと思います」(田村さん)
さらに田村さんは過去のテレビでの企画について聞かせてくれた。
「過去のTV番組で、催眠術を使い、前世を知るという企画があったのですが、そこで観覧席から呼ばれた主婦が、催眠術で自分の前世に戻り、その主婦の方が見たことも聞いたこともない言語を突然話し出したことがありました。また、収録した言語をネイティブに聞いてもらうと正しく言語を使っていた、という事例がありました。まさにその主婦の方が非常に高い同調能力の持ち主だったためでしょう」(田村さん)
胡散臭いイメージの強い催眠術だが、今回取材した筆者の個人的な感想としては、健康療法として心身を癒し、学問としてその人の可能性を引き出す、もはや一種のスキルと言えるのかもしれない。
なお、「教えて!gooウォッチ」では「ヤラせじゃないの?催眠は存在するのか現役心理学者を直撃」という記事も公開している。興味のある方は、こちらも併せてチェックしてみてほしい。