■お歳暮を贈る範囲とやめ時や辞退の仕方
まず、お歳暮を贈る範囲を聞いた。
「お歳暮はお世話になった感謝の気持ちと、今後もよろしくお願いしますという気持ちをこめて贈るものです。そのため、一度贈ると基本的にはずっと続けなければいけません。ですので、はじめて贈る際には気をつける必要があります。一般的には、『仲人(結婚保証人)』、『上司(会社で禁止されている場合もあります)』、『今後も継続的にお付き合いのあるお世話になった方』などに贈るとされています」(上田さん)
お歳暮を贈る範囲は、意外に広範囲である。しかし、延々と贈り続けるのは厳しいかもしれない。お歳暮を贈るのをやめる場合は、どうしたらよいのだろう。
「生活環境などの変化で負担になり贈ることを辞退したい際は、特に申告は必要ありません。ただし、今後のお付き合いにも影響しますので、年賀状や季節の挨拶状などで簡単な近況の挨拶や日頃の感謝の気持ちを込めた手紙などを続けて贈るようにしましょう」(上田さん)
年賀状などで気持ちだけは継続して伝えるとよいだろう。
■実家や身内にお歳暮を贈るのは常識か否か?
自分の実家にお歳暮を贈る人もいるのではないか。これについてはどうなのだろう。
「それぞれの家庭の習慣によります。身内間でお歳暮として贈ることを他人行儀だとするご家庭もあれば、それぞれ自立した家庭として今後付き合っていくのだから贈った方がよいとの考え方の家庭もあります。分らない際は、身内に直接聞いてみるのがよいでしょう」(上田さん)
では、義父母、祖父母、親戚などへのお歳暮はどうだろう。
「こちらもそれぞれの家庭の習慣によりますが、親戚に贈る際は注意が必要です。1年の間に何度かでも接点があるのであれば、贈る方がよいです。しかし、接点がほとんどないのに儀礼的に贈るのは、本来のお歳暮の意図からも外れています。今年だけお世話になったというケースであれば、『お礼』や『お年賀』で贈るのがよいでしょう」(上田さん)
親戚などにあらかじめ、家族間のルールを確認しておけば、マナー違反を回避できそうだ。
■お歳暮をやめる時期、辞退する際の上手な断り方
最後に、お歳暮を贈るのをやめる方法について尋ねた。
「お中元とお歳暮の両方を贈っている場合は、まずお中元をやめてお歳暮だけ贈ります。次の年は、お歳暮としてではなく、『お礼』や『感謝』などで金額的にも少し抑えて贈るとよいでしょう。そして、次の年にはお礼状やご挨拶などのお手紙だけを贈るという流れにします。今後もその方とのお付き合いを考えるのであれば、『季節の挨拶』や『お礼状』などはきちんと贈ることをおすすめします」(上田さん)
送るのをやめる場合は、段階と順番があるようだ。では、自分がお歳暮をもらうのを辞退したい場合は、どうするべきなのだろうか。
「お歳暮の受け取りを辞退したい場合は、今回はきちんと受け取ることがマナーです。その上で、贈ってくださった感謝の気持ちと今後も変わらないお付き合いをお願いし、次回からは辞退する旨を丁寧にお礼状に添えましょう」(上田さん)
辞退する場合は、お歳暮をもらったタイミングでその旨を伝える必要があるということだ。
日本の伝統的な風潮であるお歳暮は、お世話になった人達に感謝を示す絶好の機会である。そのため、やめる場合のマナーについてもしっかり押さえておきたいところである。今回紹介した手順を参考に、ぜひ実践してみてほしい。
●専門家プロフィール:上田 由佳子(うえだ ゆかこ)
NPO法人日本サービスマナー協会認定マナー講師。大阪外語専門学校通訳ガイド科を卒業後、日本料理店に勤め「おもてなしサービス」に興味を持つ。その後ショットバーを経営。お客様にお店の滞在時間をどのように過ごしていただき、次回への来店意欲をどう高めてもらうかを検証し、リピート率 70 パーセントを確保。常連様の大切さを認識する。後に大手和食割烹居酒屋チェーンで「おもてなし」、次回来店につなげる「心に残るサービスの在り方」を後輩に教育、指導を行う。