■ビール一口を飲むことで重症に陥る可能性もある?
一口にアレルギーの症状といっても、様々なものがある。アルコールアレルギーの場合はどのような症状が現れるのだろうか。
「少量のアルコールを飲むことで、フラッシング(顔や身体の皮膚が赤くなる)、ほてり、動悸、頭痛、鼻水、鼻づまり、おなかの不快感を起こす人がいます。この多くは免疫反応を介するアレルギー反応ではなく、アルコール不耐(耐性がないこと)のためでる。アルコール中の毒素を分解(代謝)するための適切な酵素が体にない場合に起こります」(鈴木先生)
人により程度は異なるが、場合によっては命に関わるほどの症状が現れることもあるという。
「免疫反応によって引き起こされるアルコールアレルギーは、重篤な状態になることがあります。このアレルギーのある人では、約1mlの純アルコール(ビール一口程度)で、重度の発疹、呼吸困難などを引き起こすこともあります」(鈴木先生)
たくさん飲むわけではないから大丈夫、というわけではない。気軽に飲んだ一口が命取りになることも十分にありえるのだ。
■アルコールアレルギーであるかを調べる方法は
自分がアルコールアレルギーか、またはアルコール体質であるかどうかは、どのように調べればよいのだろうか。
「消毒用アルコール数滴をしみこませたバンドエイドを7分間、上腕の内側に貼り、はがした直後に肌が赤くなっていればお酒が飲めないタイプの可能性があります。また、アルコール感受性遺伝子を調べることで、お酒に強いのか、弱いのかという遺伝的な体質を知ることができます。皮膚のアルコールアレルギー検査は皮膚科、アレルギー科で施行しています」(鈴木先生)
おおまかな体質については、バンドエイドなどの自宅にあるアイテムで調べることもできる。しかし、正確にアルコールアレルギー体質であるかを知りたい場合は、皮膚科やアレルギー科で検査を受けることをおすすめする。
■調味料やお菓子でも症状が引き起こされる可能性も
体質によっては、重篤な事態を引き起こす可能性があるアルコールアレルギー。アルコールの不耐を改善する方法はあるのだろうか。
「残念ながら、基本的にはアルコールやアルコール飲料の成分へのアレルギー、不耐を改善する方法はありません。アルコール不耐による過敏体質は、身体がアルコールを効率的に分解することができないという遺伝的状態によって引き起こされます」(鈴木医師)
また、意図してアルコールを口にする場合だけではなく、思わぬ形でアレルギーを引き起こす可能性もあるという。
「これらの反応を防ぐ唯一の方法はアルコールを飲まないことです。みそ、醤油、めんつゆ、お菓子など、微量なアルコールが食品に含まれている場合がありますので注意が必要です。特定の穀物など、反応を引き起こす可能性がある成分や添加物が含まれているかどうかを確認し、反応を引き起こすと考えられる特定の物質を避けてください。深刻な症状がある場合は、医師への相談をおすすめします」(鈴木医師)
アルコールアレルギーの症状は人それぞれ異なり、普段の食事にも注意が必要だ。お酒を飲まないように心がけていても、アルコール成分を含んだ食品を知らず知らずのうちに食べてしまうこともある。「心当たりがある」という場合は、一度医療機関で検査をしてはいかがだろう。
●専門家プロフィール:鈴木飛鳥
医療法人長岡内科医院院長、医学博士。生活習慣病、消化器疾患の治療を得意分野とする。安心、安全な医療の提供を目指し、地域医療に貢献することに力を注いでいる。