
■電車内で起こるトラブルの種類
一口に電車内のトラブルといっても、さまざまなものがある。満員電車ではどのようなことが発生しがちなのか。
「肩が触れたこと、イヤホンからの音漏れ、混雑車両のベビーカー、席を譲る譲らないに関するトラブルなどがあります。梅雨時などの雨の日は、傘の水滴が服に垂れるということから喧嘩などに発展することもあります。最近では、女性専用車両に男性が乗車するといったクレームもあるようです」(山口弁護士)
普段なら、あまり気にならないような小さな出来事でも、肌が密着してしまうような密度の高い満員電車の中では、いさかいや事件になる可能性もあるという。
■悪意が無くてもトラブルになる可能性も
少しのきっかけでもお互いが嫌な気持ちになってしまう満員電車内。気をつけていても、不可抗力でトラブルに発展するケースも。
「満員電車の場合は電車の揺れでよろけた拍子に足を踏まれる、ぶつかるなど、トラブルになるケースは非常に多いでしょう」(山口弁護士)
悪意を持っていなくても、トラブルに発展することも多くなる。また、痴漢に間違えられることも十分にありえるという。冤罪に巻き込まれないためには、どう行動すればよいのだろうか。
「100%できる対策はないのが実情です。極力他人に迷惑がかからないようにマナー違反の行動を取らないことです。痴漢に間違われないためには、両手で何かを持つか、つり革につかまるといったことが有効です」(山口弁護士)
マナー違反や痴漢行為は、故意的に行うもの。しかし、一切そのつもりがなくても人が多い満員電車では誤解を与えてしまうこともある。とにかく「自分は何もしていない」という意思を示すことが大事になる。
■トラブルに発展したら取るべき行動
気をつけていたのにトラブルに巻き込まれてしまった場合はどのように対処すればよいのだろう。
「当事者同士での話し合いではこじれてしまい、最悪な場合は暴力事件に発展したり、線路から突き落とされたりといったように刑事事件に発展しかねません。トラブルに巻き込まれた場合は、とにかくすぐに駅員を呼び第三者を介入させるということが必要です。また、可能であれば話し合いの内容を録音しておくとよいでしょう。ただし、痴漢冤罪の場合は駅員を呼んではいけません。身元を明らかにしてすぐにその場を立ち去ることを推奨します」(山口弁護士)
痴漢の容疑をかけられたまま、駅員の誘導に従うことは、逮捕されることに等しいとのこと。また、逃げたと誤解され、後に捕まるとさらに厄介なことになる。誠意をもって名刺などを渡し、誤解されている人に無罪を伝え、その場を立ち去るのが最良の方法だという。
毎日使う通勤・通学電車。人が密集していると、どうしてもイライラが伝染したり、些細なことで喧嘩が起こってしまうことがある。被害者にも加害者にもならないために、できる限りの対策をあらかじめ練っておくことが鍵となりそうだ。
●専門家プロフィール:山口 政貴
慶応大学法学部政治学科卒業後、大手進学塾の社員として約2年間勤務。司法修習卒業後、数ヵ所の弁護士事務所を経て、神楽坂中央法律事務所を設立。弁護士としての活動のほか、文部科学省研究開発局に所属、統括主任調査官として原子力損害賠償の紛争解決業務に従事。