■SNSで中傷された場合の対処法
もしも自分がSNSで誹謗中傷されてしまったら……。どう対応すべきか頭を悩ませてしまうかもしれない。法的にできることを聞いてみた。
「民事的な対応としては、名誉毀損の損害賠償請求が可能な場合があります。民事にとどまらない場合、相手が自分の名誉を毀損したことが『名誉毀損罪』にあたれば、刑事手続きとして告訴も可能でしょう」(清水弁護士)
民事手続きの場合は個人間の紛争として扱われ、刑事手続きでは相手の犯罪事実を明らかにし、刑罰に科すべきかを判断するという。
「匿名の者から名誉を毀損された場合には、加害者をどのように特定していくかが大きな問題になる」と清水先生。加害者はすぐに特定されるのだろうか。
「加害者を特定するためには、裁判で発信者情報開示請求をしなければならない場合があります。発信者を特定したら、加害者であるその人に対して、損害賠償請求や表現行為の削除請求を検討することになるでしょう」(清水弁護士)
納得できない書き込みをされた場合、弁護士に相談し判断を仰ぐのがよいそうだ。
■法に触れる内容とは
時間や場所を選ばずに利用できるSNSでは、いっときの感情にまかせて投稿をしてしまうことがあるかもしれない。具体的にどのような内容が法に触れる可能性があるのだろう。
「誹謗中傷の内容にもよりますが、相手の社会的評価を低下させるような表現行為があった場合には法的問題が起こりえます」(清水弁護士)
何気なく悪口などを書いてしまうのはもちろんNG行為ということだ。手軽に使えるSNSの特徴にも、気をつけるべき点があるという。
「文字数が限られているSNSでは、詳しく表現することが難しくなります。書き込みの際には細心の注意を払って投稿することが望ましいです。スマホで投稿する場合は特に手軽にできるので、一層の注意が必要です」(清水弁護士)
タイムリーな投稿を楽しめる点はSNSのよさでもあるが、他人が読んだ時にどうとらえるかをしっかり考え、勢いで投稿しないよう注意したい。
■真実でも名誉毀損になる?
嘘の情報をSNSで公表することは明らかによくない行為だが、本当のことを書いても法に触れるだろうか。
「真実を公表した場合でも名誉毀損になる場合があります。たとえば『あの人は過去に3回も破産している』と公表した場合、その情報が真実だったとしても、名誉毀損になりえます」(清水弁護士)
本当のことであったとしても、その人の名誉を傷つける内容の場合は注意が必要だ。ただ、これに該当しない人たちもいるとか。
「公職に就いていたり、選挙の立候補者という立場であったりする場合、公表されたことが真実であることを証明できれば、名誉毀損にはならないでしょう」(清水弁護士)
このような場合は、表現の自由、国民の知る権利と名誉権との調整が問題になるのだそうだ。
SNSは普段の生活では出会えない人とも繋がることができる、世界を広げてくれるツールだ。SNSがきっかけで人生が好転した人もいるだろう。しかし、使い方を間違えると民事訴訟にとどまらず、名誉毀損罪に問われることもあることが分かった。この事実を認識し、より多くの人が楽しんで利用できることを願う。
●専門家プロフィール:清水秀郎(鹿児島県弁護士会)
弁護士。主に離婚、示談交渉、債務整理などに精通。後悔を残さない選択ができるよう依頼者の目線で寄り添い、迅速丁寧に対応している。訴訟以外でも円満解決に向けて法律相談に応じている。法テラス対応。
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