■ストレスを感じる=悪いことではない
カウンセリングセンター聴心館の国府谷(こおや)さんによると、ストレスには身体的ストレスと心理的ストレスがある。身体的ストレスとは慢性的な疲労感など体に重くのしかかるストレスで、心理的ストレスは鬱など心のストレス。今回は、心理的ストレスについて解説していただいた。
近年、採用面接などでも「ストレス耐性」、つまりストレスに耐える能力が高い人が求められる傾向にあるようだ。言葉だけをみると、メンタルが強くタフである、あるいは過酷な状況下でもストレスを感じにくい人材が良しとされる、という印象を受ける。
「私たちは、ストレスに関して、体のアレルギーに対して体質改善していくという発想に近い方法をとっています。アレルギーには、ゆっくりと向き合うことが大切です。ストレスも同じです。まず、ストレスを感じることは自然な反応なので、そのまま認めます。ストレスを感じること自体は、反応としては良いことなのです。もしその状況で、ストレスを感じていなかったら、体や脳にダメージが出ていたかもしれません。その次の段階として、ストレスに無理に対処しないようにします。ストレスに向き合おうとしたり、ストレスを克服しようとしたり、ストレスと格闘しようとはしません」(国府谷さん)
ストレスに対処しようとすると、ストレスはかえって大きくなるとのこと。
「ストレスそのものを気にしないこと。ストレスをもたらした人や状態のことを、深く考えないことです。自分にとって、楽しいことに気持ちを切り替えていきます。実際の改善では、この部分に時間を割いて、徐々に気持ちを切り替える方法を練習していきます」(国府谷さん)
■自分が感じたストレスを別の側面から見てみよう
具体的にいうと、ストレスそのものの解釈を変えるようにしていくとのこと。
「多くの場合、感覚的に捉えたストレスをそのまま捉えて先に進んでいくので、自らがその呪縛に陥っていくわけです。例えば、誰かに強い口調で文句を言われたというケースで、自らが文句を言われたとすぐに思い込み、苦しくなっていく。この時、この人の言い方はキツイが、私にアドバイスをくれたと考えたらどうなるかということです」(国府谷さん)
大嫌いな相手だとかなり難しそうだが……。
「真実の実態はどうなのかにはこだわりません。正しいか否か、適切か否かにはこだわらないのです。相手の実態は、文句を言っているのかもしれません。それを、自分も心の中でだけ、アドバイスをくれているんだと思い込んでしまうのです。実態の真実は何か、何が正しいのか、何が適切なのかは、心の中では問題にしないのです。自分が楽になる考え方を取るようにしていきます。これによって、かなりのストレスを緩和することができます」(国府谷さん)
ストレスを感じやすい人は、感受性が強くて繊細、責任感があるという特長がある一方、自分の思い込みに左右されがちな傾向が高い。ストレスをコントロールするには、物事を一面からではなく、多方面からみることが重要といえるだろう。
(酒井理恵)