■原因不明の病気「身体表現性障害」って何?
WHO(世界保健機関)が作成している疾病分類「ICD-10」によると、診察や検査をしても十分に説明できない身体の症状が慢性的に続く病気のことを総称して「身体表現性障害」という。このうち、痛みが主である症状を「持続性身体表現性疼痛障害(疼痛性障害:とうつうせいしょうがい)」と呼ぶ。奈良県のきょう こころのクリニック、姜昌勲院長によると、
「疼痛性障害は、身体のさまざまな部位に痛みを伴う病気です。ストレスが関わっていることが多いとも考えられていますが、はっきりとした原因は分かっていません。痛みというのは末梢神経から脊髄を通して脳へと伝えられますが、この神経回路に障害が出ることで痛みが出るという説もあります」
とのこと。胃腸の痛みや頭痛だとストレスと関連付けて考えやすいが、疼痛性障害が疑われる場合、背中や腰、手足など、痛みはどこの部位でも起こり得るものなのだという。
こうした病気は周囲から理解されにくく、診察や検査をしても異常が見つからないため、患者がさらにストレスを抱えてしまうという悪循環を生んでいる。
■心の声と向き合おう
また、持病の腰痛が酷くなるなど、元々ある身体の疾患がストレスによって悪くなったりする場合もある。ストレスが身体に影響を及ぼすということを理解することは大切だが、姜院長は、必ずしも原因追究が不可欠というわけではないと話す。
「わたしたちの治療では、痛みの原因を追究するという方法はあまりとりません。大事なのは対策です。例えば職場の人間関係など、その人がストレス因子を持っているとします。それが痛みの原因と結果の関係になっているかどうかは分かりませんが、どのみちそのストレスに対して向き合っていく必要がありますよね。問題となっている人間関係にどう対処するか、ストレス対応能力を向上させていくことが大切です」(姜院長)
また、身体表現性障害はストレスが原因でない場合もあるため、見極めは非常に難しい。一人で抱え込まず、精神科やカウンセリングなどの治療を頼ることは非常に大切だ。
「ストレスは、必ずしも悪いというわけではありません。身体の痛みが出るともちろん辛いですが、その症状はいろいろなことを知らせてくれるもの、気づきを与えてくれるものとして対処していくことが大切です」(姜院長)
抑圧された感情が身体の症状となって表れる身体表現性障害。特に我慢することが当たり前であると教えられてきた人にとって、身体に症状が出て初めて自分の気持ちに気づくということもあるだろう。ストレスが関わる病気は、声にならない叫びを教えてくれるものなのかもしれない。
なお、「教えて!goo」では「忙しすぎて時間がなくてもできるストレス解消法は?」ということで皆さんの意見を募集中だ。
●専門家プロフィール:姜昌勲
医学博士、臨床心理士。きょう こころのクリニック院長。きょうクリいんちょうブログは毎日更新中。