■まずは感謝の気持ちを伝えよう
夫の料理後、たとえキッチンが荒れ放題になっていたとしても、まずは感謝の気持ちを表すことが大切だという。
「感謝の気持ちは、どのような形で表しても喜ばれます。さらに男性は、『結末』や『結果』を大切にする傾向にありますから、でき上がった『(料理の)成果物』に対して、味付けや食感、盛り付けなどを褒めてあげるとよいでしょう。褒めてやる気にさせることが、心理学で言う行動の『強化』につながります」(青柳さん)
心理学用語にて「強化」とは、「行動の結果として好ましい刺激が提示されることにより、その行動が強化されること」だそうだ。夫の料理後、後片付けに対し物申したくなるが、「今後はもう料理しない」とヘソを曲げられたら本末転倒だ。まずは感謝の意をしっかり伝え、「また料理を作ってあげよう」という気持ちを「強化」するのが得策だろう。
■どのように「片付けて欲しい」という気持ちを伝えるとよい?
ではどのようなアプローチをすれば、夫の気分を害すことなく、「片付けよう」という気になってもらえるだろうか。
「日頃家事をこなす女性も、自分のキッチンではなく“慣れない環境”だったら、いつも通りに料理を進められないのではないでしょうか。同様に、普段から料理をしない男性にとって、料理をすること自体が“慣れない環境”であるため、ある意味散らかし放題になっても仕方がないかもしれません。それでもなお、料理をしてもらいたいのであれば、『共同作業』をするのはいかがでしょうか。妻が“先輩役”としてキッチンに並んで立ち、効率のよさをさり気なく実践して見せるのです。手際よく複数の献立を作る手順や、皿や調理道具を水に浸しておくタイミング、調味料をしまうタイミング、生ゴミを捨てるタイミングなどを『確認』しながら行うことで、自然と夫に学習してもらえます」(青柳さん)
妻の料理の仕方をお手本にしてもらうとよい。その上で、同じように片付けてもらえるようになれば大成功だ。
「それでも改善が見られなければ、都合のよい結婚はないのだと悟りましょう。さらに極論ですが、『どうしたら片付けてもらえるよう操縦できるか』と悩み続けるのであれば、料理をしようとする夫を『今日は食材がいろいろ余っているから……』などと言ってやんわりと制止し、自分で料理をしてしまう方がストレスにならないかもしれませんね」(青柳さん)
最後に青柳さんは、「ありがとう」という言葉の意味を解説しながら、発想の転換も大切だと教えてくれた。
「『ありがとう』は『有難う』、すなわち『有ることが難しい』と書きます。自分の周りにある全ての出来事は本来、『有ることが難しい奇跡』なのです。ありがとうの反対は『当たり前』。当たり前は簡単に不満を生みます。夫が料理をしてくれて『有難う』と思えば、自然と感謝できそうですね」(青柳さん)
片付けをしない夫にどこまで改善してもらうかは、妻の上手な働きかけや捉え方次第なのかもしれない。台所や水回りの管理に関しては、女性が音頭をとってあげるのがよいのだろう。
●専門家プロフィール:青柳 雅也
「カウンセリングルーム アンフィニ」代表。個人カウンセリングや企業のメンタルヘルスケア、心理学セミナー、企業研修、教育機関で心理学の非常勤講師など活動は多岐に渡る。保有資格は産業カウンセラー(社団法人 日本産業カウンセラー協会認定)