■うっかりこぼした“愚痴”が、自分の立場を危うくする?
会社に対する愚痴をこぼすことで、愚痴が独り歩きをし、立場が悪くなったという話もあるようだ。会社に対する愚痴・不満がたまってきたら、どうすればよいのだろう。
「ランチタイムなどに気の置けない同僚に愚痴や不満をぶつけたい気持ちもあるかと思います。ですが、どこで誰が聞いているかわかりません。できれば自宅で家族に話す、または社内の情報が漏れない状態で友人に話すなど、周りの環境に配慮しましょう」(矢部さん)
『物言わぬは腹ふくるるわざなり(言いたいことを我慢すると心身によくない)』という格言もあるぐらいだが、愚痴をこぼす相手や状況は一考した方がよいということのようだ。
■不平不満をためる前に「価値観の違い」を意識する
できれば愚痴はこぼしたくない、とはいえ、どうにも我慢できない不平不満もあるだろう。そんな場合は、“プロトコールマナー”を意識することが大事だと矢部さんはいう。
「プロトコールマナー(世界標準マナー)の中に『異文化の尊重』というものがあります。国が違えば言葉も文化も違い、また常識・非常識も違います。これはとても重要なことなのです。いわば会社の中は異文化、年齢、性別、経験すべてが違う中で共存するのはそもそも難しいことです。『すべての人は違う』と心得るだけで、気持ちは楽になるはず。価値観が違うからこそ、違いに尊重し合うことが大切なのです」(矢部さん)
何事も自分の物差しで測ってしまいがちだが、世の中には、違う文化や思想があって当たり前。それを意識することで、多少なりとも不平不満を減らすことはできそうだ。
■思いもよらず愚痴を聞かされてしまったとき、どうすればよい?
他人の愚痴は、親しい仲でも正直あまり聞きたくないもの。しかし、話の途中で思いがけず愚痴をこぼされてしまったとき、どのように対応すればよいのだろう。
「聞く側が気をつけるべきことは、同じように愚痴を言わないことです。『そうだよね、大変だったよね』など、共感するのはよいですが、『私もそう思う』や『それは最低だね』など、同調するような言い方には気をつけましょう」(矢部さん)。
中には何も知らない新人や中途採用者にまで、上司や同僚に対する不平不満を聞かせる人もいる。
「このようなケースに対処するには、社内のコミュニケーションを高めておくことが重要です。また、やる気をアップさせるため、チーム内で士気を上げる工夫もするとよいですね」(矢部さん)
どのように士気を上げればよいのかも聞いた。
「たとえば、人は”認められたい”という本能を持っているため、努力しても認めてもらえないと、それだけで士気は下がってしまいます。ですから”お互いに認め合うこと”が大切です。朝のミーティングや普段の会話でも『〇〇さんの作成した資料、とても見やすかったよ!』など、言葉や態度で認めてあげることで会社全体の士気が上がりやすくなります」(矢部さん)
同じ目標に向かって、切磋琢磨する絵が頭に浮かんできた。普段から風通しのよい関係を築いておくことも大事なようだ。
社会生活を送るうえで“愚痴”や“不平不満”はつきもの。だが、矢部さんのアドバイスを参考に、上手に対処してほしい。
●専門家プロフィール:矢部 恵子
(株)エリタージュ代表取締役。パークハイアット東京勤務後、スイスにて就職。帰国後、外資系証券会社勤務を経て、銀座フィニッシングスクール ティアラファクトリーを設立。現在は、銀座校・パリ校にて、上質なプロトコールマナーを指導している。