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重要事項でもない債務者が,どうして抵当権の変更登記の申請になれると考えたのでしょう。
まずはそこをご自身でよく考えてみましたか?
債務者の単独申請によりその表示(氏名,名称または住所)変更登記申請ができるのは,不動産登記法64条2項の場合だけです。
そしてこのような規定ができたのは,抵当証券法26条から30条の規定があるからでしょう。抵当証券は裏書によって譲渡されますが,普通の債権とは違ってその譲渡の旨は債務者には通知されません(手形等と同じ)。ゆえに債務者が債務の弁済相手を確認するためには,抵当証券の提示を受けなければ不可能なんです。債務者が住所移転等をした場合,その旨を債権者に通知しようにも,登記を見ただけでは債権者が誰なのかわかりません。わからないからと返済をせずにいると,抵当証券法30条に基づいて抵当物件が競売にかけられてしまうなんてことが起きてしまします。だから抵当証券が発行されている場合に限って(抵当権の登記に抵当証券発行特約があるだけじゃダメ),債務者にも自身の表示変更登記をする実益があるとして,不登法の特別規定が設けられたのだと思います。
でもその場合でも,認められているのは住所氏名等の変更登記だけです。
相続とひと口に言っても,その中身は法定相続だったり遺産分割(債務の場合には債権者の同意が必要)だったりがあります。それをひとまとめに「相続」だと言って登記を認めてしまうと,債権者が不測の損害を被るおそれがあるかもしれません。だから抵当証券が発行されている場合でも,それは認めていないんです。
ましてや普通の抵当権では,債権譲渡は抵当権の移転登記を伴うものになります。債務者の相続人は登記を確認して債権者を知ることができ,その債権者の連絡をして変更登記を求めることができます。そしてそれにより,債権者が債務者の相続の事情を知ることができるので,不測の損害を被るリスクを回避することもできるかもしれません。
条文,そしてそこから派生する具体的な手続きまで想像してみると,なぜそうなっているのかも想像できるようになると思います。
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