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手形法を独習していて、資格授与的効力が理解できず困っています。

教科書を読んでいると、裏書の効力として、権利移転的効力、担保的効力、資格授与的効力があると書いてあります。
権利移転的効力、担保的効力はそんなものだろうと思うのですが、資格授与的効力がうまく頭の中に位置付けることができません。

第14条1項【権利移転的効力】
裏書は為替手形より生ずる一切の権利を移転す

第16条1項【資格授与的効力】
I為替手形の占有者が裏書の連続に依りその権利を証明するときは之を適法の所持人と看做す

2つをつなげると、
「裏書で手形上の権利を移転することができる。そして、裏書が連続した手形の所持人は、それだけで、それ以外の立証をすることなく、自分が権利者だと言える。」
ということになります。

教科書は16条1項の立法趣旨について「手形上の権利を行使しようとする者は、手形の振り出しから自己に至るまでの手形移転経過を全て主張立証しなくてはならないとすると手形所持人の立証負担が大きく、手形流通が阻害される」というようなことが書いています。

ただ、裏書は手形行為として手形に記載しておこなうので、証拠は手形の実物があれば十分で、立証で大した差がないような気がします。
逆に、16Iがないと具体的な立証としてどんな不利益があるのでしょうか?

手形法に詳しい方がいらっしゃったら、アドバイスいただけると助かります。宜しくお願いします。

A 回答 (3件)

ANo.1の回答で十分だとは思いますが。


結局、
>裏書は手形行為として手形に記載しておこなうので、証拠は手形の実物があれば十分
これこそが裏書の連続による資格授与的効力の実用的な意味ということなのです。資格授与的効力があるから、こう言えるのだということ。16条1項がないとこれが言えないのです。

余談始り。
厳密に言えば、16条1項は裏書による資格授与的効力を認めた規定ではありません。手形法には裏書による資格授与的効力を認める直接の規定はないのです。16条1項はあくまでも裏書の“連続”による資格授与的効力の規定であり、これは理論上、個々の裏書それ自体に資格授与的効力があることを前提としていると考えられるから16条1項により裏書の資格授与的効力があるという説明ができるだけです。
余談終り。

民事訴訟が分からないと解らないと思うのですが、民事訴訟において債権譲渡の事実を証明するには何が必要かという話と比較すると全く違うということが判るわけです。その内容は概ねANo.1に指摘があるのですが、債権譲渡の事実を証明するのに例えば、当事者が連続している何通かの譲渡契約書を証拠としたとしましょう。確かに、これは手形の裏書と似たようなものです。見方を変えれば手形の裏書というのは債権譲渡契約書が手形に書いてあるようなもの。
しかし、債権譲渡契約書に署名押印があっても、民事訴訟法上は、成立の真正を“推定”(反証により覆せる)するだけで、内容の真正は推定すらしません。つまり、その契約書どおりの事実があったかなかったかはあくまで裁判官の評価により決まるので必要があれば別の証拠で内容の真正を証明しなければならないこともあります。ですから当事者が連続する債権譲渡契約書があったとしても、その内容どおりの債権譲渡が本当に存在したかどうかは推定されないのです。
一方、裏書の場合には、当然署名押印があるわけですがこれにより、その裏書の形式的な成立が真正であることはおろか実体的な裏書譲渡自体の存在までも推定することになるのです。つまり、裏書譲渡自体の存在についても別の証拠によって証明しなければならないということがないのです。すると裏書の連続があればそれだけで、権利が裏書譲渡により最終の裏書人まで移転したという推定(条文上は「見做す」であるが推定と読み替えるのが判例通説)が働くわけです(これを定めるのが16条1項)。

そうすると結局、相手方は手形所持人の無権利を証明するために積極的な証明活動を行う必要があるのかないのか(証明責任をどちらが負うのか)という違いにつながります。つまり、16条1項は訴訟における証明責任の転換を定める規定ということになります。本来実質的権利者であることを証明すべき手形所持人が裏書の連続で形式面を証明するだけで実質面の証明をも済ませることができ、その結果、相手方が所持人の無権利を証明する責任を負うということです。

全然違うでしょ?
更に言えば、以上の例では、当事者が連続する債権譲渡契約書という非常に都合のいい証拠が揃っている場合なわけですが、実際にはそんなに都合のいい証拠はないことも少なくないわけです。つまり、債権譲渡を証明する書証がないなどということは極普通にある話であり、裏書の欠?ということもあるにしても裏書は簡単ですから裏書の欠?の方がよほど少ないのです(話としてはこの後架橋説へ続く)。
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この回答へのお礼

大変、丁寧なご説明ありがとうございます。

やはり、わからないと感じるときは、裏に難しい話が潜んでいるのですね。
裏書=債権譲渡契約書と考えて、
「債権譲渡契約書があったとしても、その内容どおりの債権譲渡が本当に存在したかどうかは推定されないのです」
というあたりを、ちゃんと考えなかったのだと思います。

多分、裁判官は債権譲渡契約書を証拠として出されれば、常識的にはひとまず、債権譲渡があったと評価するのだと思いますが、それは、いわば「事実上の推定」にすぎず、裏書の場合はそれが「法律上の推定」にまで高められている、というようなことでしょうか。
(民事訴訟法の勉強がかなりいいかげんなので、今もちゃんと理解しているのか怪しいですが・・・)

裏書・債権譲渡契約書が証拠として出されると、
裏書の場合は、手形債務者はその法律上の推定を覆す立証活動まで必要。
債権譲渡契約書の場合は、手形債務者は、この債権譲渡契約書はなんだか怪しいという程度の心証を裁判官に頂かせる立証活動をすればOK。
という理解をしました。

もう少し、具体的な訴訟をイメージしながら、自分で勉強しなおします。このあたりは、言葉だけ読んでふーんとか思っていたら、理解0のまま前へ進むところでした。

お礼日時:2008/09/09 11:11

十分な回答がありますが、少しだけ補足させてください。



仮に16条1項がなかった場合の「裏書譲渡」の要件事実がどうなるか考えてみると分かりやすいでしょう。手形理論として一般的な交付契約説ではもちろん、二段階創造説を採ったとしても、適法な権利の移転には裏書として署名(または記名押印)した手形の交付が必要とされています。

したがって、裏書譲渡が成立するために必要な事実は、
・裏書人が手形に裏書譲渡の意思を持って裏書署名(または記名捺印)したこと
・その手形が裏書人から被裏書人に交付されたこと
になります。

つまり、手形に署名があってもそれが裏書人がしたものであることを証明し、また、盗まれたり落としたりしたものでなく、裏書人の意思によって交付されていることを証明しないといけなくなります。

よって、この証明責任の転換を行い、手形所持者の権利行使を容易にするのが手形法16条1項ということになります。
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この回答へのお礼

ご回答者No1、No2と併せて、ご回答頂いた内容を熟読すると、正に教科書にそのように書いてあることに、いまさら気がつきました。

ありがとうございます。

お礼日時:2008/09/09 11:14

 16条1項における裏書の連続は,手形の記載から,形式的外形的に判断します。


 そこで,所持人は,自らの身分証明等により最終被裏書人が自分であることを証明すれば,手形債権を行使できることになります。

 仮に16条1項がなければ,債権譲渡たる各裏書の真正を証明しなければなりません。
 民法467条の指名債権譲渡の公示が,債務者がすべての債権譲渡について知ることでなされることと比較してみてください。
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この回答へのお礼

指名債権譲渡の事実を訴訟の場でどうやって証明するのかということはあまり深く考えたことがありませんでした。

的確なアドバイスをありがとうございます。

お礼日時:2008/09/09 10:47

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