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商標法:輸出を禁止する法益は何?

実務から遠のいていますが、実務経験者です。
法改正時に勉強しそこない、調べなおしましたが、まだ理解できません。

平成18年改正で「輸出」も商標の使用に含まれるようになりました。

「特許」「実用新案」「意匠」の実施の場合は、
まさに輸出されようとしている場合、
侵害行為が国内で行われていることがあきらかですから
(輸入か製造は必ずあります)
権利行使の便宜上、輸出を実施に含める法益は
理解できます。

対して、たとえ国内で作られた商品に
他人の(国内)登録商標を付したところで
それが国内で流通しない限り、
出所の混同はないわけで

国内で製造し、全品輸出する商品について
輸出先には登録商標をもたない他人が
国内登録商標をもっていることをよいことに
輸出について権利行使することは
むしろ権利濫用に思えます。

立法論としては
輸出先にも少なくとも国内商標権者の関係者が登録商標をもっていて
輸出先で商標権侵害になる
(その蓋然性が高い場合も含む)
場合に限って
輸出を禁止する法体系にすればよかったと
思っています。

事情をご存知の方がいらっしゃいましたら、
ご教授ください。

青本の何頁を読めとの回答でも大丈夫です。

A 回答 (8件)

法益というか法改正のきっかけは主にNo.6に書かれてあるとおりで、


それに対する疑問もごもっともだと思います。

輸出を禁止することにどういう法益が具体的にあるのか?という点ですが、
例えば、国内に商標権者がいて、他人が中国の会社からその商標権者ブランド品
の製造委託を勝手に引き受け日本で製造して全量を輸出するような場合、
その商標権者が得られるはずの売上は減り、損害が国内で生じます。
ので、国内で輸出を「使用&侵害」ととらえ禁止する法益があります。
(ただ、これは法改正の動機ではないと思いますが。)

上記は「真っ当でない輸出」の場合ですね。
一方で、おっしゃるような善意のOEMの輸出(全量製造委託者へ輸出)は、
それと区別して考えていく必要があります。

平成18年の法改正は、国内生産された侵害品の輸出と海外からの迂回輸出
を止めることに主眼がありますので、その趣旨からすると、いちいちどういった目的
の輸出なのか、ということを各場面で確認・判断しなければならないのは、実務上、
不都合です。特に行政官が行う輸出差止の際にはそんな確認作業はしてられません。
そのような関係で、まずは、輸出もすべて原則「使用」にあたるとしておき、
どう考えても、衡平を失し権利の濫用になるような事例があれば、個別具体的に
裁判所で争って貰って、権利侵害から除外するという取り扱いにすることに
落ち着いた感じです。

ただ、この権利濫用にOEM輸出がいつも入るかというと、具体的な事案に
左右されるように思われます。改正作業の際、輸出専用品だからいつも
非侵害とはいえない→限定文言を法文に付せない、といったような趣旨の説明が
特許庁からありましたし、権利濫用の例として言及されたのが、ポパイ事件や
天の川事件のように、有名商標を悪用しようとしたような明らかにひどい場合
だけだからです。

法改正の経緯につきましては、平成17年の産業構造審議会の議事録を参照ください。
特許庁のホームページにアップされています。
法改正の議論の途上で、産業界からOEM輸出について許容されてもよいのではと
意見が出されており、それを役所がやや玉虫色に切り抜けたようなところがあります。
「商標制度のあり方」のリンクも貼っておきます。

なお、わたくしも調べているところなので明言はできませんが、おそらくこの点を
侵害訴訟で裁判所が正面から判断した例はないように思われます。
どなたかご存知の方がおられれば教えて頂ければ幸いです。

参考URL:http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/toushintou/ …
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この回答へのお礼

回答ありがとうございます。

率直に言って平成18年法改正は抜本的改正であるのにも関わらず
整合性に必要な他の法改正を怠っているとの印象をもっています。

わが国では登録主義を採っていて
使用していることを登録の要件にしていませんから
登録時に実質的に無価値(=顧客吸引力のない)な登録商標が
存在できます。
国内で著名になった商標は海外でも著名になる確率が高い、
との一応の推測が成り立ちますから、
著名商標に限るのなら
輸出を禁止できる法益を一応理解できますが、
著名性を要件とせず、
ましてや使用実績を要件とせずに
(登録後3年間は使用せずとも取り消されません)
輸出を禁止できる権限を与えることには
賛同できません。

第二の論点は、輸出を禁止できる権限を与えるにも関わらず、
国内の取引の実情のみを考慮して審査が行われている(行われてきた)ことで、
結果として国外ではふさわしくない商標が、
国内では登録できます。
(例えば国内での認識率の著しく低い言語での
その商品の普通名称)
国内での輸出禁止が
海外から見れば輸入禁止になる以上、
登録の際(つまり審査時)には
海外での取引の実情にも当然配慮すべきです。
(今の審査官にいきなりそれを期待するのは酷だと思いますが)

第三の論点は、不使用取消審判のとの関係で、
専ら輸出のみし、国内ではまったく流通させない商品に付した商標ですら
不使用取消を免れさせて良いか?との点で、
これも実質的に国内では自他識別機能が発揮されていないのですから
一般論としては輸出のみなら取消すべきだと考えます。

どこかでの著名性ないし、著名にするべく著しい努力
を登録(更新)要件とする、
存続期間の短い(この要件のチェックが頻繁にかかる)
特殊な商標登録制度を新設し、
それに限って輸出を禁止できるようにするのも
一案と考えます。

お礼日時:2010/11/15 07:45

繰り返しますが従前の厳格な属地主義にこだわりすぎています。

近年、従前の厳格な属地主義の適用を修正しながら国際商取引の問題の解決を図る方向にあります。そうしなければ国際商取引問題を解決できないからです。代表的には、BBS事件、フレッドペリー事件、日立職務発明事件の最高裁判決があります。
ネットに論文がたくさんありますしここで下手に要約するとまた誤解を招くおそれがあるので、知的財産(不競法も含む)についての国際管轄(準拠法)の考え方、模倣品・海賊版の手口とそれに対する有効的対策、諸外国の動向を調べてみてください。なぜ「輸出先にも少なくとも国内商標権者の関係者が登録商標をもっていて輸出先で商標権侵害になる(その蓋然性が高い場合も含む)場合に限って輸出を禁止する」と規定にせずに、単に「輸出」としたか理解していただけると思います。

この回答への補足

仮定の話としてC国がわが国同様、
「輸出先で商標権侵害になる」
ことを要件としない
商標権による輸出を禁止する
法体系を整えたとしましょう。

わが国でわが国では商標権侵害となる
商品がC国から輸入された場合、
C国でも登録商標をもっていれば、
従来の権利行使に加えて
C国での権利行使の選択肢中、
「輸出」について
選択肢が広がった点で
若干のメリットAがあるのかもしれません。

ただし、
わが国が国内に輸入する商品について、
C国で第三者の登録商標があれば、
輸入業者がわが国で国内登録商標をもっていても
輸入販売できないという不都合が生じてしまいます。
(デメリットB)

ご存知のことと思いますが、
わが国の製造業(第一次産業含む)は空洞化が著しく、
製造の大部分を外国に依存しています。
輸入元の国が商標権について「輸出」を禁止していないからこそ
わが国は国内登録商標との関係でのみ、配慮すれば大丈夫ですが
輸入元の国が商標権について無制限に「輸出」を禁止していれば
輸入元で(国内でのみ販売する商品についても)登録商標をとる必要が生じ、
コストアップは避けられません。

現状
デメリットBがメリットAより
格段に大きいと考えます。

なお、BBS事件、フレッドペリー事件、は国際消尽の問題
日立職務発明事件は国際「裁判管轄」の問題で
質問とどう関連するのか理解できません。

補足日時:2010/07/31 09:20
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遅くなりましたが少しだけ。


商標にも「輸出」を入れたのは模倣品対策のためです。日本国内に流通する模倣品(国際的に著名な商標)を輸入段階だけで効果的に取り締まるのは難しくなってきており、何とか日本への輸入の前、つまり外国から日本へ輸出される段階で取り締まってほしいというのが本音です。
そこで、日本がまず海外への輸出を制限する規定を設け、外国においても同じように輸出を制限する規定を設けてほしいという国際的なアピール、模倣品対策の国際的な取り決め(条約)への布石をしたものです。

法律は正しく理解されていると思います。属地主義に引っ張られると確かに「なぜ?」と思ってしまいますね。

この回答への補足

一般に
(つまり輸出先に関連登録商標がない条件でも)
商標権について
輸出を禁止できる合理的理由をご説明いただいても
多分解決します。

補足日時:2010/07/29 13:20
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この回答へのお礼

回答ありがとうございます。


そこで、日本がまず海外への輸出を制限する規定を設け、外国においても同じように輸出を制限する規定を設けてほしいという国際的なアピール、模倣品対策の国際的な取り決め(条約)への布石をしたものです。


国際協調していくなら
率先して輸出を禁止する法体系を整えたという意味で
確かに意味があると思います。

ただし、商標の場合、
すべての輸出を規制すべきではなく、

輸出先にも少なくとも国内商標権者の関係者が登録商標をもっていて
輸出先で商標権侵害になる
(その蓋然性が高い場合も含む)
場合に限って
輸出を禁止する法体系にすればよかったと

は思います。

国際的なアピールをしたいのであれば尚更でしょう。

お礼日時:2010/07/29 13:01

>青本(18版)の1192頁の〔参考〕1


これは単なる商標の定義の問題であって、輸出が権利侵害にあたるか否かに触れるものではないですね。ここで言われているのは、現実に自他商品の識別が市場においてされているか否かを問題としているのではなく、客観的にみて自他商品識別力を発揮する態様で使用されているかを問題としているのであって、論点がずれてます。

ちょっと視点を変えますが、例えば、第三者が単に他人の登録商標を大量の商品に付しただけで、その後の販売予定も輸出予定も販促活動予定もなく永久に倉庫に保管しておくと主張立証されれば、商標権者はそれらの商品に対して差止請求できないとお考えですか?
そのような場合でも、裁判になれば差し押さえ並びに廃棄請求が認められます。ただ、そのような差止請求訴訟を起こすためには、どこの倉庫にどれくらいの侵害品があるのかを権利者側で調査した上で証拠資料を提出する必要があり、事実上なかなか困難です。輸出差止めは、税関での水際取り締りという上記とは異なった手続により行われ、予め税関に所定の申請をしておけば侵害品が通関する際にストップをかけることができます。これにより、最初に申し上げた通り、権利者の保護強化が図られます。
何度も言いますが、現行法では、業として商品を生産等する者が指定商品に登録商標を自他商品識別力を発揮する態様で付する行為自体が直接侵害として規定されており、かかる侵害品の取り締りを強化したものです。
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> これも侵害行為が国内で行われない以上、取り締まるべきとは思いません。


商標を商品若しくはその包装に付する行為自体が侵害行為ですよ。

あなたがそのような解釈をするに至った根拠となる判例、学説を紐解いていかない限り、この問題は収束しないように思われます。
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この回答へのお礼

回答ありがとうございます。


当初は国内販売を予定していた侵害品を、商標権者に察知されてから海外に輸出するようなこと

および

商標を商品若しくはその包装に付する

だけでは
本来の(権利行使のための便宜的なものではない)侵害行為と考えない理由は
自他商品の識別力が発揮されていないからです。

その解釈にいたった根拠は
青本(18版)の1192頁の〔参考〕1
に詳しい記載があるので
引用します。

お礼日時:2010/06/23 09:42

権利者の保護の強化を図るための改正です。



商標の場合でも、譲渡のみならず、その予備段階である商品に商標を付する行為も侵害行為として規定されていることとの関係からすれば、侵害行為によって得られたものを輸出段階で差し止めできるようにする観点では、特許と何ら変わりません。

また、当初は国内販売を予定していた侵害品を、商標権者に察知されてから海外に輸出するようなことも従前行われており、そのような場合に商標権者は税関で差し止めできませんでしたが、改正後は侵害品の取り締まりをより強化できるようになりました。

立法は、原則論を規定します。司法判断では、実質的権利侵害がないとの理由で輸出差止が認められないようなケースもでてくる可能性は否定できませんが、それは個別具体的事情を勘案した判断です。
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この回答へのお礼

回答ありがとうございます。

>予備段階である商品に商標を付する行為も侵害行為として規定されていること
>侵害行為によって得られたものを輸出段階で差し止めできる

本来侵害とすべき行為(1)と
権利行使の便宜上、侵害としている行為(2)
は分けて考える必要があると思います。

特許の場合は製造は(1)の類型に属する行為ですが
商標の場合は製造は(2)の類型に属する行為です

その結果、商標の場合

「権利行使の便宜上、侵害としている行為」
によって得られたものを輸出段階で差し止めできる
ことになってしまいますから
特許と同列に論ずるのは無理があると思います。

>当初は国内販売を予定していた侵害品を、商標権者に察知されてから海外に輸出するようなことも従前行われており、そのような場合に商標権者は税関で差し止めできませんでしたが、改正後は侵害品の取り締まりをより強化できるようになりました。

これも侵害行為が国内で行われない以上、
取り締まるべきとは思いません。
(属地主義の原則に反します)

お礼日時:2010/06/18 19:18

まあ、輸出を禁止してもデメリットがないので、法体系を統一し単純化するほうが良い、というだけに思えます。



なお、これらの法は属地主義ですから、輸出先での商標権侵害を防止云々、ということを法に盛り込むのはあり得ないことでもあります。

つまり、輸出を気にする理由は、輸出のための生産が国内で行われることの防止とともに、海外での加工→逆輸入というのを輸入時ではなく「加工前に」阻止したい、という思惑もあるのでしょう。

正直、立法は論理的に行われているとは限らないため、私は論理的な理由を求めるのは運用(司法)のほうだけにしています。(違憲な法ならば、それで無効にさせれば良いだけですし。司法関係者というより法学者が議員として立法府にいて欲しいとは思いますが。)
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この回答へのお礼

回答ありがとうございます。

>輸出を禁止してもデメリットがないので
本来、商標で
単純製造→輸出の場合は
国内の商標権との抵触を
考慮する必要がありませんが、
(出所の混同はない)
改正法での輸出段階では
形式的に商標の使用に該当することになるので
権利濫用を行う口実を設けた意味で、
デメリットはあると思います。

>輸出のための生産が国内で行われることの防止
これがまさに権利濫用と考えます。

>海外での加工→逆輸入というのを輸入時ではなく「加工前に」阻止したい
これは一定のメリットを感じますが、輸出時と輸入時で
使用する商品が異なる場合も考えられますから、
(例えば布を指定商品にする登録商標はあるが
服を指定商品とする登録商標がない場合)
権利濫用の口実を設けるデメリットを考慮しても
なお必要なメリットとは
思いません。


まだ釈然としません。

お礼日時:2010/06/18 18:24

意匠でも同じ論理が成立するように思います。



つまり、意匠と商標で取り扱いを変える意義が見えませんし、意匠で妥当とお感じであれば商標でも同じ効果を持つことがご理解いただけるかと思います。

この回答への補足

意匠は、新規性を要件とし(意匠法:以下「法」3条各号)、
非容易創作性(法3条2項)を要件としますが、
商標は新規性すら要求されません。

(工業所有権4法のうち商標法のみが
何らかの創作性を要件としません)

目的も
意匠が
意匠の創作を奨励(法1条)
なのに対して
商標は
「業務上の信用の維持」
「需要者の利益を保護」
(商標法1条)
です。

その結果
他人の単純な
「製造→全量輸出」
を許せば
意匠の場合は
意匠法の目的を達成できませんが、
商標の場合には
商標法の目的に背反しません。
(製造輸出だけのためでも
意匠登録する利益があります)

どちらも視覚に訴える点で共通し、
一見同じ論理でいけそうですが、
商標の論理がそのまま意匠について
妥当だとは思いません。

論理の矛盾、考えのいたらないところ
があれば教えてください。

補足日時:2010/06/16 19:03
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