また、リルケの詩です。
Das war der Tag der weissen Chrysanthemen,
mir bangte fast vor seiner schweren Pracht....
Und dann,dann kamst du mir die Seele nehmen
tief in der Nacht.
Mir war so bang, und du kamst lieb und leise,
ich hatte grad im Traum an dich gedacht.
Du kamst, und leis wie eine Maerchenweise
erklang die Nacht....
der Tag der weissen Chrysanthemen というのは11月頃の「死者を偲ぶ日」のことですね?
白菊の花束を持って墓地に行く人々を見たことがあります。
この詩も「死」がテーマになっていると思います。
「私はその日の重苦しい華やかさが怖かった」Prachtは、晩秋に映える白菊の華やかさを言っているのでしょうか?
「お前は私の魂を深い夜の闇へと奪いに来た」duは「死」を意味していると解釈してよいですか?
「私はとても不安だった、お前は優しくひそやかにやって来た、私はちょうど夢の中でお前のことを考えたところだ。」
leisはleiseのことですか?erklang の主語はdie Nachtでやはり「死」を暗示していると考えてよいでしょうね?
「おとぎ話の調べのようにひそやかに夜の歌が聞こえてきた」
テレビのドイツ語講座で当時Michael Muenzerが朗読していたのを覚えています。
全然急ぎませんので、お暇な折にご回答をいただければ嬉しく思います。入力だけでも大変な労力だと思います。いつもいつもありがとうございます。
No.1ベストアンサー
- 回答日時:
この詩は、リルケの若いときの作品です。
通常リルケの詩集としてまとめられるものは、1899年に『わが祝いに』として出版され、のちに『初期詩集』と改題された詩集から始まります。しかしこの白菊の詩は1896年の作で、『Traumgekrönt(夢に冠された)』という詩集に収められていたものです。この時期の作品は、まだリルケの個性が出る前で、あまり取り上げられる機会はないと思うのですが、その中でこの詩は比較的知られているようです。歌曲として作曲もされていますし、選集のようなものにも収録されることがあるのではないかと思います。解釈についての資料は見つからず、ドイツのQ&Aサイトにも、だいぶ前にこの詩の白菊の意味を尋ねる質問が出ていますが、やはり、「葬儀の時によく使う花なのでそういう意味があるのでは」という回答がたった一つついているだけでした。しかし、死を主題にした作品という解釈には疑問があります。
やや余談になりますが、この詩の中で白菊が何を意味しているかは別として、菊の意味を少し調べてみました。たしかにヨーロッパでは、葬儀に白菊を使う習慣があるようで、死の象徴ととらえられていますが、一方で愛の象徴となる面もあるようです。白菊に限らず、菊を死や、死を超える愛の象徴とする考え方はフランスで始まりました。フランスの花屋たちがそれを中央ヨーロッパに広めたようですが、彼らは同時に、男女間のやり取りの場面での用途も考えたようで、したがって、下菊は必ずしも死とだけ結びつくのではなく、誠実さへの感謝としての贈り物にもなるということです。また、黄色の菊は戯れの愛、赤い菊は愛の告白、そして、態度はまだ決まらないがいつも君のことを思っている、と伝えたい場合は、いろいろな色の菊を混ぜた花束を勧めたようです。
http://www.symbole-wiki.de/index.php/Chrysantheme
また、詳細はわからないのですが、たぶんウィーンの古い映画に出てくる歌で、「weiße Chrysanthemen schenk ich dir zur Hochzeitsnacht」というのがあるようです。
こういうことを知ると、ひょっとしてこのリルケの詩は、婚礼の夜のことを歌っているのではないかと思いそうになりますが、これも短絡的です。
さて、この白菊の詩なのですが、最初に発表された『Traumgekrönt』という詩集の中では、『Lieben(愛する)』という題のもとに書かれた22の連作の2番目の作品として出ています。22作全体が素朴でロマンティックな愛の詩で、この2番目の作品だけを死と結びつけるのには無理があります。
Traumgekrönt所収 Lieben 全22篇
https://de.wikisource.org/wiki/Lieben
しかし、冒頭にはっきり「Das war der Tag der weissen Chrysanthemen」と書いてあるので、「白菊の日」という表現に重要な意味があることは間違いありません。そしてこれはたぶん、死の象徴として言っているのではなく、「諸聖人の日(万聖節)」の出来事として書いているのだと思います。「schweren Pracht」のschwerは、重苦しいという意味ではなく、この祭日に町中で白菊の花束が供えられるので、その華やかな花束の「荘重さ」を表現するものです。注意すべきは、その前の「fast(ほとんど)」です。もし死の訪れを恐れる場面であれば、fastとは書かないでしょう。fastからは、むしろ諧謔性が感じられますが、その次の行の「dann, dann」という繰り返しも同様です。duは死ではなく、あくまでも恋人です。諸聖人の日の白菊を見て不安になったということにユーモラスに掛けて、「そしたら、そしたら(やっぱり思ったとおり)、深夜、君は僕の魂を奪いに来た」と言っているのです。bangenは悪い意味の不安ではなく、期待と不安の混じったものですね。「du kamst lieb und leise」とありますが、duが「死」なら、liebとは言いません。「Märchenweise」も、死とはイメージが違いすぎます。
leisはleiseの省略形です。これは、先の御質問で少し触れたように、詩のリズムの制約から来ています。弱強弱強の繰り返しでできているのですが、leiseとしてしまうと、ここだけ弱が二つ続いてしまうのです。それを避けるためです。
erklangの主語はdie Nachtでよいのですが、erklingenは響きを上げる、鳴り始めるという意味です。「夜が、おとぎ話の調べのように響き始めた」という意味になります。楽しい意味です。ロマンティックで若い詩、官能的な詩ともいえます。
音楽的なイメージも参考に。
アルバン・ベルク作曲『7つの初期の歌』から『Traumgekrönt』
またまた見当違いの解釈をして、お恥ずかしい限りです(汗)。貼っていただいたリンクに一応目を通しました。
白菊=死の象徴と思いこんでいましたが、Heilichkeit,Glueck,Seligkeitも表すのですね!duが死を指すのなら、どうして過去形になっているのだろうと疑問に思いましたが・・・恋人なのですね!
菊が民間医療でHeilmittel、アーユルベーラ医学でも薬として使われてきたのですね。(除虫菊として)害虫駆除にも。
NHKの11月号のテキストにちょうどギルムのAllerseelenが載っていました。11月2日の万霊節ですね。
万霊節のことをドイツでTodesandenkentag、ではなかったと思いますが、似たような言い方をしていたのを覚えていますが、はっきりしません。調べていますが、Allerseelenとしか出てきません。もし、ご存じでしたら教えてくださいませ。
Liebenの一連の詩の中にこの「白菊の日」が入っていますね。「死」がテーマの詩では絶対にありませんね!
恥を忍ぶことになりましたが、本当に教えていただいてよかったです。ずっと間違った解釈をしていくところでした。
ありがとうごさいました。
No.2
- 回答日時:
>万霊節のことをドイツでTodesandenkentag、ではなかったと思いますが、似たような言い方をしていたのを覚えていますが、はっきりしません。
Todesgedenktagという言葉はありますよ。ただ、これは日本でいう命日で、個々の人が亡くなった日にも使いますので、Allerseelenと完全に同義語というわけではありません。でも、死者に祈りをささげるという意味では同じなので、AllerseelenのことをTodesgedenkentagと呼ぶことがあるのかもしれませんね。私はそういう場面に居合わせたことがないので、よくわかりません。ドイツではそうだったのですか?
Allerseelen
https://de.wiktionary.org/wiki/Allerseelen
Todesgedenktag
https://www.google.co.jp/?hl=ja&gws_rd=cr,ssl&ei …
Allerseelenの日に家主の老婦人が、今日は「死者を忍ぶ日」だと言って、白菊の花束を抱えてお墓参りに行っていました。新聞やニュースでもなんとかタークと呼んで報道されていました。が、ドイツとオーストリアではSitteや呼び方も違うのでしょうね。こう言えば叱られそうですが、ドイツとオーストリアは兄弟みたいに思えてあまり違いがわかりません。
哲学者の中島義道氏の『ウィーン愛憎』を昔、読んだことがあり、自分が感じたことをいみじくも言って下さったととても深く心に残りました。
ありがとうございました。
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