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司法試験短答民法の過去問に関連した質問です。

司法試験プレテスト問2 肢エ 、司法試験サンプル-問10肢ア では、「売買契約の相手方の詐欺を理由とする取消」について、 司法試験H-24-問24肢ア では 、単に「売買契約が詐欺を理由に取り消された場合」について、
3問それぞれが、詐欺取消の後相互に返還されるべき給付は同時履行の関係にある という解答です。
そして、これら3問について予備校の解説に引用された判例は(最判S47.9.7)第三者の詐欺による取消の事案です。
この判例を引用して上記3問の肢が正しい(詐欺者からの抗弁でないことを留保せず、同時履行の関係にあると言い切る)というのは、合っているのでしょうか。

基本書や論文問題集には、当事者の詐欺の場合の取り消し後の返還債務について、詐欺をした者からの同時履行の抗弁は留置権の295条2項類推で否定すべきとあります。

これによると、上記3問が理解できません。
上記の判例の射程は、当事者の詐欺にも及ぶというのが一般的なのでしょうか。

ご回答よろしくお願いします。

A 回答 (2件)

> 基本書や論文問題集には、当事者の詐欺の場合の取り消し後の返還債務について、


> 詐欺をした者からの同時履行の抗弁は留置権の295条2項類推で否定すべきとあります。

そんな判例はない。
1 被害者が詐欺師に対し返還請求をする
2 詐欺師が同時履行の抗弁を主張する
3 抗弁が否定され返還が命じられる
4 詐欺師が返還を履行する
5 今度は詐欺師が被害者を訴える
6 「被害者は詐欺師に対し取消された契約にもとづいて給付を受けた物を返還せよ」との判決が下される
7 被害者が詐欺師に対し返還を履行する

というのと,同時履行を認めて一気に解決するのとでは,迅速な紛争解決の見地からどっちがいい?,ということ。

> 上記の判例の射程は、当事者の詐欺にも及ぶというのが一般的なのでしょうか。

射程は及ばない(取消全般について同時履行を認めたわけではない)。しかし,そういう場合についても,同時履行を認めるのではないか,と推測されている。

> この判例を引用して上記3問の肢が正しい
> というのは、合っているのでしょうか。

解説として緻密さを欠くように思う。
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この回答へのお礼

ありがとう

お礼が遅れてしまい申し訳ありません。
とてもわかりやすいご回答をいただき、不明点を理解することができスッキリしました。
ありがとうございました!m(_ _)m

お礼日時:2017/02/21 06:24

恐らく、「法律系試験によくある形式論理の問題の解き方に慣れていない」のだと思います。

もしかしたら問題集の解説の書き方が悪いのかもしれませんけど。

以下解説。

まず問題を読みます。

司法試験プレテスト民事系問2を見ると「判例の趣旨に照らし誤っているもの」と書いてあります。
同じくサンプル問題民事系問10も「誤っているもの」と書いてあります。
同じく平成24年度民事系問24も「判例の趣旨に照らし誤っているもの」と書いてあります。

つまりこの肢の判断基準は、あくまでも「誤っている」かどうかです。

そこで司法試験の問題に限らず、形式論理一般則として「誤っているとは言えない≠正しい」です。
ということは、

【正しいかどうか『を』判断しても誤っているかどうかの判断とは必ずしも一致しないので意味がない。】

です。
よって、

>この判例を引用して上記3問の肢が正しい(略)というのは、合っているのでしょうか。

この考え方そのものが間違いです。
「正しい」かどうかを判断しても意味がないのですからそれを判断した「正しい」が「合っている」はずがありません。
この問題ではあくまでも「誤っているとは言えない」と判断しなければなりません。

それでは判例はどうなっているかと言えば、

・制限行為能力及び第三者による詐欺を理由とする取消しの事案では同時履行の抗弁を認めた判例がある(前者につき最判昭和28年6月16日、後者につき最判昭和47年9月7日)。
・取消し後の原状回復義務について同時履行の抗弁を認めなかった判例は今のところ恐らくない。

ここから論理的に言えることは、「判例は、取消し後の原状回復義務について同時履行の抗弁を一般的には認めているかいないか不明」です。つまり、判例の射程範囲が判例の事例限定なのか取消し一般に拡張できるかは定かではありません。定かでないということは、「問題の肢が判例に反して間違いであるとは言えない」ということになります。
間違いであるとは言えないのですから「誤っているもの」にはなりません。

一方、

>基本書や論文問題集には、当事者の詐欺の場合の取り消し後の返還債務について、詐欺をした者からの同時履行の抗弁は留置権の295条2項類推で否定すべきとあります。

こちらは結局のところ受験政策の問題です。
同時履行の抗弁を認めないと述べた判例はないのですから、「判例を根拠にして」認めないという結論は出せません。つまり、判例を根拠にして295条2項類推適用(以下、星野説)はできません。
しかし、星野説にしても、判例が根拠にできないだけであって判例に反しているとまでは言えません。あくまでも判例は「明らかでない」ので肯定する根拠にはなりませんがそれだけです。逆に、否定する根拠にもなりません。
そもそも論文式試験においては判例が「明らかでない」ものなどいくらでもあります。そこで、各問題において答案作成上の便宜から「判例との整合性は明らかでないが妥当な結論を得られる説」を根拠として採用することは、受験政策上の手段としては極めて合目的的です。そして、少なくとも判例に反しているとまでは言い切れない星野説を採るのが答案作成上の便宜であるならばそうすればいいのです。
要するに、その問題に応じて都合の良い説を採用すればいいのです。それが「受験政策」たる所以です。

個人的には、例えば判例を援用して取消し事例一般において原則として同時履行の抗弁を認めた上でケースによって信義則で制限するという解答だって、問題にもよりますが、悪くはないと思います(ただし、説得的な理由付けがどこまでできるかは問題ですが)。

司法試験に限りませんが、大概の場合は、判例の射程が不明でも答えが出せるように問題が作ってあるんです(稀にそうでないことはありますが)。

>上記の判例の射程は、当事者の詐欺にも及ぶというのが一般的なのでしょうか。

既に述べた通り、判例を、取消し事例一般論として同時履行の抗弁を認めていると理解することは必ずしも間違いとは言えません。その上で、星野説は判例に反していると考えることはできます。
逆に、判例は取消し一般について述べるものではないと理解した上で、判例から星野説は導けないが、星野説の想定事例については判例は述べていないのだから特に矛盾するものではないと言うこともできます。
どっちでもいいんです。どっちでも問題は解けます。受験政策という観点からすればそこは悩むところではありません。学者になるのではなく試験に合格するのが目的ならば、合目的的に割り切ることをお勧めします。


ちょいとおまけ。

訴訟法的な視点で紛争の一回的解決のために同時履行の抗弁を広く認めるというのは、もちろん意味があります。しかし、実体法上の制度は訴訟法的視点だけで決まるわけではありません。実体法上の制度を考える時に訴訟法的観点しか考慮しないのは視野が狭すぎます。
同時履行の抗弁の問題を単に訴訟法の問題として考えるだけなら、同時履行の抗弁を認めなくても反訴又は訴えの客観的併合でも対応できます。しかし、同時履行の抗弁権はあくまでも実体法上の制度であり、「訴訟外でも行使が可能」です。であれば、実体法上の観点を抜きに考えるのは【誤り】と言っていいです。
同時履行の抗弁が認められるかどうかは、そもそも実体法上の問題である以上、実体法上の効果に影響します。つまり、訴訟とは無関係に、「同時履行の抗弁が認められなければ、実体法上、履行遅滞となる(最終的には債務不履行として損害賠償の問題になる)」です。実体法上の効果が明確に違うんですから、単純に訴訟法的な視点だけで考えるのは思慮が足りません。単に訴訟の一回的解決だけを理由に同時履行の抗弁を一般的に認めて債務不履行による損害賠償を否定するのが妥当だと思いますか?私は思いません。
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この回答へのお礼

ありがとう

お礼が遅れてしまい申し訳ありません。
とても詳しくご回答をいただき、勉強になりました。
当事者の詐欺事例である,サンプル問10肢アの解説には、「『正しい 』最判S47.9.7 判例は、売買契約が詐欺を理由として取り消された場合に当事者双方の現状回復義務は同時履行の関係にあると判示した。」
というものでした。

また、同じく当事者の詐欺事例,プレテスト問2肢エの解説は「『謝っている』本記述のように債務不履行解除の場合同時履行の関係に立つ。そして判例(最判S47.9.7)は、第三者の詐欺による取消の場合についても当事者の現状回復義務は同時履行の関係に立つとした。したがって本記述は謝っている。」、

当事者と第三者いずれか限定のない詐欺事例H24-問24の解説は、上記と同じく「『正しい』最判S47.9.7 判例は売買契約が第三者の詐欺を理由として取り消された事案においてー(略)」
というものでした。
以上は質問に書かなかったのでわかりづらくて申し訳ありませんでした。
第三者詐欺の判例を留保無しにひっぱる解説に違和感があり質問させていただきました。
しかしご回答のとおり、
そもそもこれらの肢にこだわらなくても解ける問題なのに、解説の言い回しにこだわってしまったと思います。
ご指摘通り、合目的的に割り切って勉強しなくてはと思いました。
どうもありがとうございました!m(_ _)m

お礼日時:2017/02/21 06:19

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