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英語やドイツ語など、動詞の時制は現在形と過去形と完了形の三種類で、未来形はありません。
未来形が無いので助動詞+現在系で未来を表すようにしています。

はたして、動詞の活用本体で未来形をもっている自然言語があるのかに興味をお持ちました。
動詞の活用で未来形をもつ言語があれば、その言語名をご教授ください

自然言語の時制にお詳しい方よりアドバイスを頂ければありがたいです。

A 回答 (5件)

動詞の未来形の成立は複雑で、単に動詞の活用があるかないか、


という説明では済まないようです。
セム語族や多くの古期印欧語は、動詞の活用は複雑でも、
未来を表す特別な活用がないそうです。
古ゲルマン諸語も同様で、ドイツ語に未来形がないのもその流れでしょう。
その原因としては、未来の表現はしばしば「意志」、「願望」、「推量」、「義務」
などの法の表示が転じて発生していく傾向が多くの言語で見られるということが挙げられています。
そのため、純粋に活用のみで未来を表す形があまりないというのは、
多くの言語に共通する傾向のようです。

すべての印欧語の元となった印欧祖語でも、未来を表すには接続法を使っていたようですが、
s-未来形といって、s字を含む活用による未来、接続法、願望の表現があったという研究があります。
ゲルマン語族では、この-s-で形成される未来自称の語幹は失われています。
古典ラテン語には未来形の活用がありますが、これも比較言語学の研究によって、
もとは接続法であったものに未来の意味が生じたのち、ほかの意味が失われたことが明らかにされています。
そして、ラテン語の未来形は、ローマ帝政時代末期には使われなくなり、
俗ラテン語では英語のhave、ドイツ語のhabenに相当するhabeoで未来を表現します。
よく引用されるアウグスティヌスの例があります。

petant aut non petant venire habet
(英)whether they ask or do not ask, it will come
(独)ob sie bitten oder nicht bitten, es wird kommen

「venire(来る)」ことを「habet(持つ)」という形で、
これは、「義務」を表現する英語のhave toやドイツ語のhaben zuとつながります。
フランス語やイタリア語に未来形の活用があると言っても、
実はこれらも、上の形に見られる二つの動詞が融合したもので、
活用というよりも接尾辞のようなものです。
「私はこれから~する」を意味するフランス語の単純過去、je feraiは、
俗ラテン語のfacere habeoからきたものです。
「する(do)」に当たるフランス語の動詞はfaireで、「持つ(have)」に当たるのはavoirですが、
avoirの一人称単数の活用はaiで、faire + ai → feraiということになります。
二つの動詞の複合されたもので、活用とは違いますね。
イタリア語の未来形も同じで、フランス語のavoirと同じavereが結合された形です。

fare(する)の未来形 一人称
(io) farò = fare + (io) ho (avere)

ロシア語で未来形があるのは、be動詞に当たるбытьだけで、
その他の動詞の未来形は、бытьの未来形+不定詞で表します。
ペルシャ語でも、「欲する」を意味するhohanという動詞を未来形助動詞として使います。

時制というのはもともと抽象的なものなので、未来形も過去形も、
いろいろな表現と変遷があるようです。
ドイツ語やフランス語には過去形がありますが、
過去形はどちらかというと文章語で、口語では現在完了形を使う方が多くなっています。
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この回答へのお礼

なるほど。

広範な印欧語の知識からのご説明ありがとうございます。
私が、想定したのに近い事態ですね。

チョムスキーの「普遍文法」の考え方に接し、日本語には過去形と現在形しかない一方、他の言語で過去・現在・未来の三形態があるとすると、普遍文法は考えにくいと思ったのですが、印欧語でも本来的な時制に未来形が無いとするなら、印欧語も日本語も共通の普遍文法からの”作品”であるという説はあながち否定しにくいですね。

大変参考になりました。

どうもありがとうございます。

お礼日時:2017/05/23 21:37

単に未来時制があるかないかではなく、動詞の活用があるかないかという質問ですよね。


言語学的な考察をするのであれば、単に表記上の問題で済ますわけにもいかないのでしょう。
資料をいくつかお送りしますので、御参照下さい。
(あまりに専門的な部分は、私も目を通してはいませんが。)

アントワーヌ・メイエ『文法形式の発達』(未来形:75ページ)
http://www.venus.dti.ne.jp/~kaisaki/gengoken/pdf …

伊藤敬『認識はどのように能動的かつ論理的対象把握に向かったか』
(4.時制の抽象性 ‐現在と未来;日本古語の過去形についても、3.2.3.に言及があります。)
http://www.origin-life.gr.jp/3504/3504128/350412 …

堀田隆一『英語の動詞に未来形の屈折がないのはなぜか?』
http://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/2015-05-14 …

吉田和彦『印欧語史的形態論研究 : シグマによる動詞形成』
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bi …
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この回答へのお礼

はい。動詞本体の活用で未来を示す言語があるかどうかの質問です。
助動詞や副詞を使って未来を示すことができるのは当然なので、質問の範囲ではありません。

広範な資料をご紹介いただきありがとうございました。

お礼日時:2017/05/24 00:04

> ドイツ語のwerdenは助動詞であると同時に「~に成る」という意


> 味の本動詞でもあります。したがって、etw tun werdenはtunの
> 未来形と考えても良いし、werdenの現在形という見方も成り立つ
> と思います。つまり、時制としては現在形(werdenの現在形)で
> 未来を示していると、、、。

フランス語で、もしも、"je ferai"ではなく、"je fer ai"のよ
うな表記を採用していたとしたら、"avoir"の一人称単数現在形
"ai"で未来を示しているということになってしまいます。

逆に、ドイツ語が"tun werden"ではなく、"tunwerden"という表記
を採用していたとしたら、"tun-"は語幹、"-werden"は_後ろ綴り_
になり、

 Ich werde das tun.

のような文は、「ドイツ語では未来時制を時制分離動詞で表す」と
いう説明ができたかもしれません。

そういうわけで、時制の概念はおおむね表記上のことにすぎないよ
うに思います。
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この回答へのお礼

>時制の概念はおおむね表記上のことにすぎないように思います。

はい。その見方も充分に説得力がありますね。

どうもありがとうございました。

お礼日時:2017/05/23 22:00

綴りで考えるのか、機能の本質で考えるのか、それによりけりなと


ころがあります。綴りは見れば簡単なので、機能の本質で考えてみ
ましょう。

英語には未来形がありません。

I do -> I will do
I can do -> I will be able to do

"can"を全く別の形に変更せねばなりません。

フランス語には未来形があります。

je fais -> je ferai
je peux faire -> je pourrai faire

ドイツ語はどうでしょう?

ich tue -> ich werde tun
ich kann tun -> ich werde tun können

"werde"と"können"に分かれていますが、"können"は"kann"の原型
です。機能の本質で考えますと、ドイツ語には未来形ないしは未来
時制があるとも言えます。
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この回答へのお礼

回答ありがとうございます。

ドイツ語のwerdenは助動詞であると同時に「~に成る」という意味の本動詞でもあります。
したがって、etw tun werdenはtunの未来形と考えても良いし、werdenの現在形という見方も成り立つと思います。つまり、時制としては現在形(werdenの現在形)で未来を示していると、、、。

本質的に未来形が無いが故の工夫と思えます。

どうもありがとうございました。

お礼日時:2017/05/23 21:32

フランス語。


単純未来という活用があります。動詞自体が活用します。
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この回答へのお礼

早速のご回答有難うございます。

そうでしたか、身近なところで動詞の未来形がある言葉があるのですね。
ひょっとして、ラテン語に未来形の活用があるのでしょうか。
とすると、イタリア語やスペイン語なども、、、。

つまり、私は、いままで時制に関してラテン語の影響を受けていない英語やドイツ語だけ勉強してたということかも。

どうもありがとうございました。

お礼日時:2017/05/21 16:49

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