■190ml缶コーヒーが主流だった理由
缶コーヒーといえば、190ml缶を思い浮かべる人も多いだろう。なぜ190ml缶が主流だったのか改めて聞いた。
「多くのサラリーマンに、仕事の休憩時間は『缶コーヒーで一服』というスタイルが定着していました。休憩時間を楽しむのに、ちょうどよい味わいや容量を実現するのが190mlの缶コーヒーで、各社からさまざまな商品が発売され、多くの人にお楽しみいただくようになりました」(大塚さん)
190mlは、コーヒーカップ1杯強の量。休憩時間に飲み切るのに適量だったのだ。
「高度経済成長期の建築ラッシュにより、自動販売機の普及が増えたことに比例し、自動販売機での販売構成が高い190ml缶のコーヒーの飲用機会が増したことも理由のひとつです」(大塚さん)
確かに自動販売機には、190mlの缶コーヒーが季節問わず必ず並んでいるイメージがある。
■働き方改革が500mlペットボトル入りコーヒー普及の理由?
最近は190mlの缶コーヒーに代わって、500mlペットボトル入りのコーヒー飲料が多く出回っている。それは、どのような理由からだろうか。
「働き方改革の推進に伴い、働き方が多様化し『場所や勤務時間にとらわれずに仕事をする』という人が増加したことが理由に挙げられます。働き方や休憩の取り方に変化が生じ、それに伴ってコーヒーに求める価値も多様化しはじめました」(大塚さん)
決められた勤務時間、休憩時間で働くことに変化が生じたことで、コーヒーブレイクのあり方も変わったようだ。
「『仕事中も休憩中も傍に置いておきたい』、『仕事をしながら時間をかけて飲み続けたい』、『出勤時に購入し1日中持ち運びたい』など、多様化したニーズに応えるべく、当社では500mlペットボトル入りコーヒー飲料の『クラフトボス』シリーズを発売しました。このペットボトルシリーズで、仕事をしながら時間をかけてコーヒーを楽しむ “ちびだら飲み”を提案したところ、これまで缶コーヒーに馴染みの無かった若い世代や女性からも大変ご好評をいただきました。それ以降、他社様の商品参入もあり、ペットボトルコーヒーの市場は伸長しています」(大塚さん)
「ちびだら飲み」の提案には、再栓可能な「ボトル缶」シリーズも参戦している。
「ボトル缶もペットボトル同様のニーズにお応えするため展開されています。ちなみに『BOSS』におけるボトル缶コーヒーの割合は10%です」(大塚さん)
ペットボトルが主流になったことで、缶の製造量が伸び悩んだという。その対策として、アルミ製やスチール製のボトル缶が開発された背景もあるとのこと。
■容器別コーヒー飲料市場の今後の見通し
今後、ペットボトル市場はますます伸長するのだろうか。缶コーヒーの行方はどうなるのか。
「ペットボトルコーヒー市場は、引き続き伸長すると推計されます。一方の缶コーヒーは、短い時間の休憩に価値ある存在として、ヘビーユーザーが多く存在するため、今後も残存し続けるでしょう」(大塚さん)
多様化するニーズに寄り添うべく、容器も変遷してきた。再栓できるペットボトルやボトル缶で、持ち歩きながら長く楽しむことが当たり前になっている。そんな今だからこそ、たまには凝縮されたひとときを過ごすために、190mlの缶コーヒーを手短に飲み干すのもよいかもしれない。
●専門家プロフィール:大塚 匠
サントリー食品インターナショナル株式会社 ジャパン事業本部 ブランド開発第事業部 課長。2004年現サントリースピリッツに入社。2010年から、現サントリー食品インターナショナルで新規ビジネスを担当。2014年から、BOSSグループリーダーを担当。