■ライブ観戦の魅力は会場の一体感
まず、あらためてスポーツの現地観戦の醍醐味を教えてもらおう。
「筋書きのないドラマを目の当たりにできることですよね。それに加えて、現地観戦ではスタジアムやアリーナで非日常空間を味わうことができます。スポーツ会場はいわば劇場です。まわりの観客と一体となった応援を楽しめる、もしくは、その雰囲気を味わえるのは大きな魅力でしょう。特に最近は、国内でもエンターテイメント性の強いイベントや演出など、北米型のビジネスモデルも取り入れられていて、以前よりも、楽しめるようになっています」(押見さん)
現地観戦はもちろん、パブリックビューイングでも一体感を楽しめるという。
「パブリックビューイングはスタジアムや公園、広場などの特設会場に設置された大型スクリーンで、別の会場で行われているスポーツの試合を観戦するものですが、その魅力は現地観戦に劣らない一体感を味わえることです。また、一体感という意味では、スポーツバーでの観戦も同じことがいえます」(押見さん)
同じ会場、店内にいる客と得点の瞬間に喜びを分かち合うなど、一体感は現地に劣らないといえよう。
■中継はデータをチェックしながら観戦できる
では、テレビなどの自宅でのスポーツ観戦の醍醐味はなんだろう。
「他の観客や野次など、まわりを気にしないで観ることに集中できるというメリットがあります。あとは、チケット代や会場までの交通費などを考えると財布に優しいですし、外出する手間が省けるという特長もあります。また、最近はテクノロジーの進化によって、プレーヤーの走行距離、打球の行方や速度などが視覚化されていますし、さまざまなアングルからのカメラ映像などの演出があり、それらも大きな魅力となっています」(押見さん)
最近はスポーツ中継専門チャンネルを利用したスマホによる視聴も人気だ。
「実は、これは大きな変化です。パブリックビューイングなどでたくさんの人と感動を共有できるようになった一方、個人でのスポーツ観戦に目を向けると、とても手軽に楽しめるようになりました。とくに2~3分の短いハイライト動画を楽しむファンが増えています。ライブの試合には、タイムアウトやプレーヤーの交代など、いわば余分な時間が含まれてしまいますが、ハイライト動画はもちろんのこと、録画での観戦なら、そうしたシーンを飛ばすことができます」(押見さん)
何かと忙しい現代人には、隙間時間に楽しめる視聴スタイルがマッチしているということなのだろう。
■期待されているVR中継
現地観戦と中継・録画観戦には、それぞれにメリットがあるわけだが、後者がおすすめというスポーツの種目はあるのだろうか?
「ラグビーやアメリカンフットボールなど、ルールが少し複雑なスポーツは解説を聞きながら楽しむのも手です。バスケットボールのようにシーンによっては人が密集して見にくいことがあるスポーツは、さまざまな角度のカメラでプレーを確認することができます」(押見さん)
確かに中継は解説があるので、何が起こっているのかが明確だ。ちなみに、今後、中継・録画はどのように進化していくのだろうか?
「30秒程度のハイライトシーンを作成し、SNS上にアップする配信形式はSNS全盛の現代に適しています。今後はもっと普及していくのではないでしょうか。あとは、VR(仮想現実)を使った、スタジアム観戦の観戦経験を超える視聴経験が期待されています。例えば、自分がグランドに立っているという仮想現実の状態で、世界のトッププレーヤーのプレーを間近に体感できるといった具合です」(押見さん)
それは迫力がありそうだ。ぜひ、実現してほしいものだ。そのような視聴が可能になれば、「スポーツは現地観戦より中継のほうが面白い」という人が、増えるかもしれない。
現地会場を超える臨場感を、専用端末を通して感じることができる未来へ、我々は突き進んでいるのは間違いないようだ。東京オリンピックまでに、どこまで実現できるのか新技術に期待したい。
●専門家プロフィール:押見大地
東海大学体育学部スポーツ・レジャーマネジメント学科講師。アジアスポーツマネジメント学会副編集委員長、日本スポーツマネジメント学会編集委員、公益社団法人スポーツ健康産業団体連合会事業部会委員。スポーツイベントにまつわる現象を、マネジメント、マーケティングおよび消費者行動の理論を用いて解明・検証している。主な著書に『Jリーグマーケティングの基礎知識』(共著・創文企画)など。