また、派遣契約満了時に起こりがちな業務の停滞や、引き継ぎなどの作業が発生する正社員の疲弊など、デメリット面を指摘する声もあるようだ。そこで今回、就職活動に関する情報サイト「ハタラクティブ」を運営するレバレジーズの後藤祐介さんに、派遣社員が多い会社は危ない会社なのか尋ねてみることにした。
■1人を除いてみな派遣社員という構成が抱えるリスク
「派遣社員が多い会社は危ないのか」という質問をぶつけてみたところ、意外な回答が返ってきた。
「そもそも日本における就業者のうち、派遣社員の占める割合は2.3%(平成29年度、厚生労働省調べ)にすぎません。つまり、世の中のイメージには反しますが、一般的にはそこまで派遣社員は多くないというのが実情です」(後藤さん)
世の中に存在する派遣社員の割合は、思ったよりも少なかった。そんな中、正社員が1人で残りが派遣社員といった会社あったとしたら、起こりがちなトラブルはないだろうか。
「労働者派遣法の定めにより、職場の指揮命令は派遣先の社員が担う必要があります。そのため、該当部署に正社員が1人しかいない場合は、その人がいなければ原則として仕事を進めることはできません。しかし、実際には業務を停止するわけにもいかないため、派遣社員だけで進めるケースが出てきてしまうでしょう」(後藤さん)
派遣社員側に臨機応変さを求めると、十分に研修や教育を受けられなかったりという問題もでてくるとのこと。
「入社前に確認した契約にはなかった仕事や、他の派遣社員の指示による別の仕事をさせられるなど、法律的に問題となる行動を強いられるケースも増えると思われます」(後藤さん)
正社員が1人で残りが派遣社員という構成の会社は、法律スレスレの危ない会社といえそうだ。
■正社員を雇用できない理由
では、これほどまでのリスクを抱えるにも関わらず、なぜ正社員を雇わない会社や部署があるのだろうか。「教えて!goo」にも寄せられていた「派遣社員と正社員の雇用コストの違いについて」という質問にも関係していそうだ。
「会社にとって、同一業務を同一賃金で雇用するという前提条件だけを考えれば、派遣会社へのマージンを支払う都合上、派遣社員を雇うことはむしろ割高になってしまいます。そんな中でも派遣社員を雇う理由は、まず自社の実力ではよい人材が確保できない場合が挙げられます。つまり、採用にかけるマンパワーや自社に魅力がない会社といえるでしょう。次に、会社の業績が思わしくなく先行きが不安なため、今後も人材を確保しておくべきか不透明なケースもあります」(後藤さん)
魅力がなく、一時的な業務を遂行している会社の可能性が高いとのこと。
■企業にとって適正な派遣社員の割合とは
とはいっても、プロジェクトのフェーズや業種によって、派遣社員が活躍する場も多い。最後に、派遣社員の制度を利用する会社側のメリットとあわせて、会社にとって派遣社員の割合はどのくらいが適正なのか教えてもらった。
「企業にとって派遣社員を受け入れる最大のメリットは、スキルのある人材をすぐに雇えることです。部署の状況にもよりますが、基本的には派遣社員ではなく、契約社員やアルバイトなど別の非正規雇用でまかなえている方が、一般的にはベターとされています。従って、正規雇用が7割、非正規雇用が3割という比率が、企業の構成としては適正でしょう」(後藤さん)
派遣社員には有能なスキルをもつ人もたくさんいるため、効果的に配置できれば、事業を円滑に進めることができるだろう。しかし、極端に派遣社員が多い会社は、その経営状況を疑ってもよさそうだ。今自分が働いている会社に、そのような傾向がみられるのなら、身の振り方も含め慎重に将来を考えはじめてもよいのかもしれない。
●専門家プロフィール:後藤 祐介
レバレジーズ株式会社ヒューマンキャピタル事業部ハタラクティブ 責任者。フリーターや既卒など正社員未経験の方や経験の浅い第二新卒に向けて就職・転職支援サービスを展開している。「一人でも多くの人が未来に希望を持てる社会の実現」をミッションに、2012年にサービスを開始。転職支援サービスを受けたことがない人も利用しやすい工夫を凝らし、個別の求人紹介・面接対策なども充実させている。