■タバコ+ミルク入りコーヒーの口臭は?
ミルク入りコーヒーを飲みながらタバコを吸ったら、口の中はどのような状態になるだろうか。
「タバコの主成分である『ニコチン』には、コーヒーに含まれる『カフェイン』同様、交感神経を緊張させる働きがあります。その働きにより、両者を口にすると相乗的に唾液の分泌量が減少し、口腔内に存在する『口臭発生菌』が増殖します。菌が増える際の代謝産物として、口臭の原因である『揮発性硫黄化ガス』が発生するため、口臭もきつくなるのです」(中城さん)
大変な物質が口の中に発生したように聞こえる。唾液量の減少は、諸悪の根源ということのようだ。
■最悪な口臭を予防する方法
発生してしまった臭いを消す手段はあるのだろうか。
「不快感を伴う臭いを消すには、多硬質な活性炭などを用いて臭いを吸い取る『吸着』、チタン消臭など、臭いの構造式を分解して異なる成分にする『分解』、寿司ネタのアルカリ性の生臭さを、酢飯の酸で中和して臭いを消す『中和』、トイレの芳香剤のように別の臭いをかぶせて、感じなくする『マスキング』という4つの方法があります」(中城さん)
臭いのメカニズムに応じて消臭手段を考える必要があるということだ。前回の記事で、コーヒーによる口臭予防にはプルーンやドライイチジク、ハトムギが効果的と教えてもらったが、タバコによる口臭にはどうだろうか。
「タバコに含まれるリンゴ酸塩やクエン酸塩などはアンモニアを発生させます。ニコチン臭に、尿の臭いであるアンモニア臭が混ざり合って不快な悪臭になるため、まずはアンモニア臭を消す『中和』が有効です」(中城さん)
中城さんは、実際に患者さんに勧めている「中和」のマル秘テクニックを教えてくれた。
「コンビニなどで販売されている『都こんぶ』を利用し、口腔粘膜の“雑巾掛け”をしましょう。酢昆布を2cm角大に折って舌先に乗せ、頬粘膜、口蓋部、歯肉周囲などにこすりつけるようにして滑らせます。酢昆布には酢酸やクエン酸が含まれるため、アンモニアを中和し殺菌効果もあります。昆布に含まれる『ムチン』というぬめり成分は、口腔粘膜の表面をコーティングし、タバコのニコチンやタールが付着するのを防ぎます。さらに、酢昆布の酸味や舌の運動により唾液の分泌も促され、一石三鳥の効果が見込めるのです」(中城さん)
梅干しやもずく酢などでも同様の効果が期待できるとか。全てヘルシーな食材である点はうれしい。
■口臭が発生するタイミング
そもそも口臭が発生するタイミングは、タバコやコーヒーを飲んだ直後なのだろうか。時間が経過しても消えない場合もありそうだが……。
「タバコやコーヒーを含む『食事性の口臭』の発生には、2つのピークがあります。それは、摂取後、口の中に残留した食材のニオイによる『直後臭』と、その食材が腸内に届き、臭気物質が腸管壁を透過し、肺でガス交換されて翌朝に汗や口臭から発生する『翌日臭』に分類されます。前者は丁寧な歯磨きや洗口剤、ミント系ガムなどで食材を除去することが予防に繋がります。後者には、腸管壁をコーティングし臭気物質の再吸収を防ぐ牛乳をはじめ、ゴボウやサツマイモなど食物繊維を含む食材が効果的ですよ」(中城さん)
さらにコーヒー対策同様、プルーンやドライイチジク、ハトムギも併用するとよいという。
「口臭という観点では最悪なのに、タバコとコーヒーはやめられない!」という人は、一服後に歯磨きや酢昆布で口腔内を清潔にし、ガムやプルーンなどをおやつに食べると少し安心できそうだ。
●専門家プロフィール:中城 基雄
口臭専門クリニック 中城歯科医院 医院長。歯学博士。鍼灸師。