
■住宅や自動車などの高額商品は増税前に買うべき?
高額商品であれば2%の差でも、無視できない金額となってくる。やはり、増税前の駆け込みで購入すると得だろうか。
「住宅や自動車などの高額商品は、過去の消費税増税で、特に駆け込み需要が加熱した分野です。しかし、今回の消費税増税は3回目ということで、さすがに政府もそれなりの対策をしています。そのため、『増税前に買えばお得』という単純な構造ではなくなっているのです」(武藤さん)
政府の対策というのはどのようなものだろうか。
「増税のタイミングで、住宅ローン減税の拡大、自動車取得税の廃止などが予定されています。増税前に購入しても実質的に得する人は限られることもあり、今回はそれほどの熱狂的な盛り上がりは感じられないでしょう」(武藤さん)
さすがに、政府も先を見越した対策を打ってくるようだ。
■今回の消費増税前に購入を検討したい目玉商品
では今回の増税前には、いったい何を買うのが得なのだろうか?
「正直に言うと、『これは買っておかないと損』と特筆されるようなモノはありません。実際に『増税前にこれを買え』といったメディアの特集でも、目玉となるようなものに乏しい印象があります」(武藤さん)
目玉商品がないとなると、今回の増税は指をくわえて見ているしかないのだろうか。
「お金の使い道を真剣に考えるきっかけにするとよいと感じます。『FPが言うから』という考え方では、自分にとって本当に必要なものは見つからないし、手に入れた高揚感も味わいにくいのではないでしょうか」(武藤さん)
確かに、誰かに煽られるように購入しても、ただの散財に終わってしまう可能性はありそうだ。しかし、必要なものを見つけるヒントがあるのならアドバイスはほしい。
「機会を逃して先送りしていたものを『増税までに買う』のはどうでしょう。個人的には、時短家電のドラム式洗濯乾燥機を家族へ買おうか検討中です。ちょうど9月末に、新型登場&決算期で型落ちが底値になりやすいのです。ただし、還元セールとどちらがお得か難しい判断にもなりそうです」(武藤さん)
今回の増税では、いわゆる「消費税還元セール」は禁止されないという。増税前後は、還元セール告知も見逃さないようにしたい。
■駆け込みで損をしない買い物の仕方と具体例
もう少し具体的に、「購入判断する基準」を明確にしておきたい。具体例も合わせて教えてもらった。
「場所を取らずに長期ストック可能なもの、安売りされないものはよいでしょう。例えば使い捨てコンタクトレンズは、それほど大きな保管スペースは必要ありませんし、極端な安売りもありません」(武藤さん)
確かにトイレットペーパーやティッシュなどのかさばるものを大量買いしても、収納コストがかかってしまいそうだ。他にもヒントになりそうな具体例を挙げてもらったのでまとめて紹介しておこう。
・iPhone修理などの定額サービス
・割引のない学用品(成長期の子供の制服や体操着の買い替えなど)
・一眼レフ、ミラーレスカメラの交換レンズ
・防災兼用のアウトドアグッズ(シーズンオフセール)
・家電メーカー純正消耗品(空気清浄機や浄水器などの純正フィルターなど)
・ペット専門店の割引の効かないグッズ(ケージの買い替えなど)
・通販サイトの「ほしいものリスト」に入れっぱなしのモノ
「防災グッズのまとめ買いはよいかもしれません。このところの度重なる地震被害もあり、災害に備えたいと思っていても、生活必需品ではないので先延ばしにしている人も多いと思います。意外と金額がかさみますし、なかなか安売りされないものです」(武藤さん)
最近は地震や大雨などによる被害も多くなってきているので、この機会にしっかり対策し、お得に安心感を得るのもよいだろう。
増税の度に、上記のような話題が浮上してくるものだが、今回はいつもと少し趣が違うことが分かった。無駄な散財には走らず、かしこく増税前の買い物を楽しみたいものだ。
●専門家プロフィール:武藤 英次(むとう えいじ)
カードローンに関する疑問や悩みを解決するサイト「なるほどカードローン」「ナビナビキャッシング」の執筆および監修を担当。地方銀行勤務時にはファイナンシャル・アドバイザー担当を含めた多様な実務経験を積む。現在は大手不動産企業、信用金庫等、幅広く金融や不動産等に関わる記事を多数執筆している。