■あらゆる要求を満たす仕事はない?!
気が進まない仕事を「お金や生活のため」と割り切れる“程度”は人それぞれかもしれないが、タカミさんは「割り切って仕事をすること」をどのように捉えているのだろうか。
「職業や働き方の選択も、人それぞれの自由です。これからの時代、世の中の変化がますます激しくなりますので、ひとつの仕事だけに、収入ややりがい、成長、自己実現……とさまざまな理想を追い求めるのは、リスクが高いキャリアの積み方といえます」(タカミさん)
自分のキャリア中心の仕事は存在しない。タカミさんによると、自分の理想や条件をすべて満たしてくれる仕事を追い求め過ぎることは、逆に仕事にありつけなかったり、会社の方針変更に伴う離職など、リスクになりかねないという。割り切って現存の仕事の中で何かを見つけようとするのも悪いことではないようだ。
「これからは、お金や生活のための仕事、自己実現のための仕事、自己成長のための仕事、社会貢献のための仕事……というように、『目的に応じて複業する』という働き方が支持されていくでしょう」(タカミさん)
人によって仕事に求めるものは千差万別だ。自分が仕事を通して得たいと思うものをリストアップし、優先順位を付け整理することからはじめてもよいかもしれない。
■自分にとっての天職
「自分にとって何が大切で、何が理想的な仕事かわからない」と相談された場合、タカミさんはどのように答えるのだろうか。
「『天職』とはどこかに転がっているものではなく、自分の力で『天職』にしていくものです。いま目の前にある仕事を、お金や生活のためにしていると割り切っていたとしても、その仕事の中に『やりがい』を感じられる何かが見つけられたら、『その人にとっての天職』に成り得るのではないでしょうか」(タカミさん)
例えば家庭を持つ男性の場合、きれいごとばかりを言っていられないのが現状だろう。しかし、自己実現もしていきたいというプライドを持つ人も多いに違いない。今の仕事の中にやりがいや居心地のよさを見つけていくのか、副業で実現するのか……。いずれにせよ「天職」とは、自分から行動して得られるものとタカミさんは教えてくれた。
「そして、仮にお金や生活のためだと割り切って始めた仕事でも、その仕事に『やりがい』が見つかり『天職』だと感じるものがあるなら、苦しいときも踏ん張りがきく強さを持てるでしょう」(タカミさん)
今回の話で、仕事をする“動機”より、仕事を“やりがいを感じられる天職”にしていくほうが大切だとわかった。しかし、それが天職になったとしても、楽しいばかりの仕事はきっとないだろう。苦しいときも踏ん張り続けられるよう、「自らが働く目的」を明確にし、できるだけ多くの「やりがい」を仕事の内外で探し続けたいものだ。
●専門家プロフィール:タカミ タカシ
キャリアカウンセラー、キャリアコーチ。2008年に 日本キャリア・コーチング をスタート。個人支援を専門に1,000名以上をコーチ。自己分析・キャリアデザイン・転職・昇進昇格・パワハラ改善が得意な実務家として、成果・自立につながる具体的なアドバイスと丁寧なサポートを提供できるのが強み。