■そもそも決算セールとは?
お話を伺ったのは、カラーコーディネーターの杉原久美恵さん。杉原さんは、「自分に似合う服がわからない」という消費者の買い物に同行し、アドバイスをするというサービスを行っている。
「小売業が決算セールを行う目的のひとつは、販売成績や売上を伸ばすことです。多くの企業は3月を決算期としていますから、2月頃になると、未達の売上目標値に少しでも近づけるためにセールが実施されます。もうひとつは、在庫を減らすことです。在庫品を管理するためには、倉庫代などもろもろのコストがかかりますので、決算期だけでなく、季節が変わるタイミングでセールを行うことが多いですね」(杉原さん)
年によって売れ行きは違うので、セールを行う時期は微妙に異なる。基本的にはどの業界でもセールの対象となるのは在庫品や型落ち商品なので、「安物買いの銭失い」にはならぬようにしたいもの。
「アパレルの場合だと、インターネットショッピングの普及や若者がモノをあまり持たなくなっている背景から、そもそもロット(生産の最小単位)が少なくなってきているようです。だから、人気のものは余計に早く売れてしまうわけですね。何をお得と思うかは人それぞれですが、安さに飛びついて結局着ない服をたくさん買うよりも、本当に自分が満足するものを買うのが長い目で見て『お得』なのではないでしょうか」(杉原さん)
正月の初売りでは在庫品がずらりと並んでいるが、「気に入ったものがないけどとりあえず買ってしまった」という人も多いだろう。杉原さんによると、正月ではなく1月後半〜2月中旬の落ち着いた頃に掘り出し物を見つけるのがおすすめなのだそうだ。
■決算セールで買ってもよいものは?
では、どんなものなら決算セールで買ってもよいのだろうか?
「流行に左右されないベーシックな洋服であれば、買ってもよいと思います。最近は、洋服に季節感がなくなってきています。例えば、夏でもブーツを履いたり、冬に薄手の服を重ね着したりするなど、コーディネート力があれば年間を通して使い回すことができます。また、季節ごとに全部買い換えなくても、トレンドのものをちょっと買い足せば、古臭くないファッションが楽しめると思いますよ」(杉原さん)
冬物コートは今の時期が最も安いが、着られる時期が短いので、買うのに勇気がいる人もいるだろう。しかし、極端な流行品でなければ来年も着られるので、気に入ったのなら買ってOKとのこと。
■決算セールに踊らされないための3つの極意
セールに踊らされないために必要なことは、(1)自分に似合うものや欲しいものを明確化しておく、(2)何をいつまでに欲しいか優先順位を決める、(3)日頃からウインドウショッピングをして視察する、の3つ。
「家電の場合だと、最新のものが欲しいのか、型落ちでも機能性がよければいいのかを考えましょう。新しいものが好きな人は、最新家電を買うこと自体に満足感が得られるので、それがその人にとっての『お得』です。また、『決算セール』と銘打って実はただの閉店セールだった、ということもあります。その会社の決算時期を調べたり、普段はどんな商品がいくらで並んでいるのかをセール前に観察したりしておくと、損をする可能性はグッと減ると思いますよ。あと、洋服の場合は必ず試着をすることをお忘れなく」(杉原さん)
結局のところ、得をしたかどうかを決めるのは他人ではなく自分自身。販売側の意図に踊らされずに冷静な目を持つためには、どんなときに喜びを感じるかなど、まずは自分を知ることが不可欠なようだ。
●専門家プロフィール:杉原久美恵
カラーコーディネーター。その人の魅力を最大限に引き出す色やデザインを分析し、ヘアメイクやファッション、カラータイプ気質論をトータルにアドバイス。お買い物ツアー(ショッピング同行アドバイス)のリピート客は200名以上。
(酒井理恵)