■50歳以降、70代がピーク。でも若い世代も発症の可能性は大いにアリ!
帯状疱疹は水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスによって起こる病気で、赤い斑点と小さな水ぶくれが帯状に身体の左右どちらかにあらわれる。初めて水痘・帯状疱疹ウイルスに感染したときは水ぼうそうとして発症するが、治ったあともウイルスは体の中に残っているという。そして、大人になってから加齢やストレス、過労などが引き金となり、帯状疱疹として発症する。
「水ぼうそうは全身に水ぶくれができ、風邪のような症状が出るのが特徴です。帯状疱疹の場合ははじめに痛みが出て、それから体の片側に水ぶくれができます。お腹や頭が痛いとまずは内科に行くと思いますが、内科の先生は、痛みの原因が帯状疱疹だという選択肢はなかなか浮かびにくいんです。薬を飲んでも治らない、内視鏡も影響ない、おまけに体に水疱が出てきた……となってはじめて帯状疱疹だと分かる場合が多いですね」
と語るのは、皮膚科医の蘇原しのぶ先生。
「帯状疱疹は、免疫が落ちたことで発症する病気です。帯状疱疹で発症する年齢で多いのは、50歳以降、70代がピーク。これは加齢による免疫低下が原因ですが、免疫はストレスや風邪などでも落ちるので、もちろん10代~30代にも発症のリスクはあります」(蘇原先生)
蘇原先生によると、忙しさのピークとなる年末は、帯状疱疹の患者が非常に多いのだとか。「自分はまだ若いから大丈夫」といって安心はできないので要注意だ。
■帯状疱疹はうつるの?
水ぼうそうは空気感染で、非常に強い感染力をもつが、帯状疱疹はどうなのだろうか?
「水痘ウイルスは水ぶくれの中に存在しています。水ぼうそうにかかったことのない人が帯状疱疹の発疹を素手で触ると、水ぼうそうとして発症することはあります。しかし、帯状疱疹が帯状疱疹として人にうつることはまずありません。また、別の部位にうつることもありませんし、発疹が身体の右側と左側、両方に出ることもありません」(蘇原先生)
水痘ウイルスは、神経に潜んでいるという。身体の左右では、別々の神経が通っているため、通常身体の両側に症状が出ることはないようだ。
■予防接種を打つタイミングは?
気になるのは、大人になってからも予防接種を受けた方が良いのか、という点。予防接種、つまり水痘ワクチンは、病原性を症状が出ないまで極力抑えて、免疫がつくれるぎりぎりまで弱めた製剤のことをいう。
「水ぼうそうにかかりづらいのは医師や保育士など、水ぼうそうの子どもと接する機会が多い人です。子どもを介して水痘・帯状疱疹ウイルスが体内に入り、しっかりとした免疫をつくることができます。しかし、予防接種は自然感染よりも免疫が弱いので、1回打っただけでは十分とはいえないでしょう。インフルエンザと同じように、2~3回打つと、しっかりとした免疫をつくることができます」(蘇原先生)
では、いつ受けるのが良いのだろうか?
「免疫が落ちた状態だと、予防接種は打てなくなります。また、リウマチなどを患うと、免疫抑制薬を常薬として飲むことがありますが、免疫を抑制している人に予防接種で菌を植えることはなかなか難しいです。そのため、元気なうちに予防接種を打つことが大切です。できれば50歳を迎える前に打っておくと良いでしょう」(蘇原先生)
特に年を重ねてから帯状疱疹になると、慢性的な痛みなどの後遺症があらわれることがある。十分な対策を講じたい場合は、帯状疱疹の発症リスクが高まる前に予防接種を受けておくことをおすすめする。
●蘇原 しのぶ (そはら しのぶ)
医師。東海大学医学部卒業後、北里大学皮膚科、獨協大学皮膚科を経て、2016年にしのぶ皮膚科開業。ヒアルロン酸、ボトックス治療に造詣が深い。オールアバウト美と健康のガイドでもあり、執筆、テレビ、ラジオ、などのメディア活動も精力的行う。日本アンチエイジング外科・美容再生研究会認定医。アトピー性皮膚炎治療を専門とし、アトピーチャンネルの総監修などもしている。
(酒井理恵)