
■嫁姑関係が悪化した場合は嫁を優先し、夫は傾聴と共感に徹する
嫁姑の関係の悪化を知った夫は、まず何をすべきだろうか。
「基本的な考え方として、夫は妻を優先的に考えることです。なぜなら、姑は夫の母であり『原家族』です。原家族というのは自分が育った家族をいいます。自立して結婚し新しい家族を作ったのでしたら、それが今の家族なのです。そこで姑を優先してしまうと、新しい家族が崩壊してしまうこともあります」(きくち先生)
妻の味方をしておけばよいとういうことなのか。具体的にどのような対応が望ましいのだろう。
「どっちが正しいとか誰が悪いとか、白黒はっきりつけないことです。白黒つけると余計に悪化します。妻の味方をしていても、自分の母親が悪いなどとは言わないことです。優先順位は妻ですが、判定はしない。妻の愚痴は、時間をとってゆっくりと聴いてあげてください。アドバイスや結論は必要なく、傾聴と共感に徹するのです」(きくち先生)
妻を最優先するが、姑を悪く言ってはいけないという。自分の親への不満を聞くのは耳が痛いかもしれないが妻の不満を聞くことを重要視したい。どうしても修復が必要な溝ができた場合の対処法はあるのだろうか。
「修復不可能な気配が見えたら、今の家族を優先的に考え、選択を求められた場合は妻を優先する。しっかりと自分の意見を持ち『妻(あるいは姑)に言われたからこうした』などと決断や行動を人のせいにしないことです。双方に揺さぶられず、しっかり自分を持ち、率直なコミュニケーションを心がけましょう」(きくち先生)
争いごとには首を突っ込みたくないものだが、家族の問題となるとそうはいかない。夫は「自分の意見」として意見を述べ、双方に揺さぶられないようにするのがよさそうだ。
■嫁姑の意識を外に向けさせ、ふだんから今の家族との明るい未来を考える
修復不可能な関係になる前に、できる対策はあるのだろうか。
「今の家族は妻と築いていくものです。普段から妻や姑の意識が相互にばかり行かないように、趣味など家族以外のところに意識を向けるように上手に働きかけましょう。妻の場合は夫と同じ趣味を持ってもいいです。ともに行動することで愛されていると感じ、よい結果につながることもあります。未来や楽しいことで頭を満たしておけば、姑の嫌なところも気にならなくなります。妻が今の家族に不満があり満たされないでいると、誰かのせいにしたくなり、少しでも気に障るところに目が向いてしまいます。予防の意味でも、今の家族を大切に考え、妻に愛情表現をしていきましょう」(きくち先生)
なるほど。未来の楽しいことで頭を満たすのは夫にとっても楽しいことなのではないだろうか。だが、きくち先生はこう続ける。
「夫は完全な第三者ではありません。息子であり夫です。二重の関係になり相談相手としてはふさわしくないこともあるでしょう。そのような場合は専門家に頼るとよいでしょう。男性は比較的共感能力に欠けることが多く、妻の話をスルーしがちです。面倒だと思わずに、スルーせず傾聴と共感を持って接してほしいです」(きくち先生)
いかがだろうか。夫に求められるのは何より傾聴と共感だった。『そんなつらい中、よくやってくれているね。僕は本当に助かっているよ』といったことを言ってもらえれば妻もうれしいはず。夫は妻の話をしっかりと聞いて、家族を円満に導いてほしい。
●専門家プロフィール:きくちみよこ
家族(夫婦・親子)の人間関係の問題に特化した相談室を開設。家族相談士、心理カウセラー。聴くだけのカウンセリングではなく目標達成まで精一杯サポートしている。著書に 「しあわせ思考」がある。