
■むくみを緩和する方法
起きたら顔や瞼がむくんでいるが、会社や学校へ行かなければならない。そんなときの対処法はあるのだろうか。
「お風呂に入ったり、顔面から頸部のマッサージ、つぼ押し、適度な運動などを行うと血液やリンパの流れがよくなり、むくみを改善する効果が期待できます。また、カリウムを多く含む食品は、血液内の塩分を尿中へ排出させる効果があります。腎臓の機能に異常がない人は、緑黄色野菜やバナナなど、カリウムを多く含むものを食べるとよいでしょう」(鈴木先生)
腎臓機能に異常のある人は、カリウムがうまく体外に排泄されず高カリウム症状になる場合があるので注意しよう。
■むくみのメカニズム
そもそも、むくみとは何なのだろうか。
「むくみの原因は皮下組織の余分な水分です。血液やリンパと『間質(血管外の細胞と細胞の隙間)』の間では絶えず水分が移動しており、その水分量は血管の内圧(血管内の水分を間質に移動させる力)や血漿膠質浸透圧(けっしょうこうしつしんとうあつ/間質の水分を血管内に移動させる力)により調整されています。しかし何らかの原因により、血液中の水分が間質に漏れ出し、体の表面から腫れて見える状態がむくみです」(鈴木先生)
では、どのような原因から発生するのだろうか。
「お酒や塩分を多く摂取しすぎたり、睡眠不足や過眠などでも水分のバランスが崩れ、一過性のむくみが生じることがあります。また女性は、月経時など女性ホルモンの影響によっても、むくみが生じやすくなります」(鈴木先生)
このような“一過性のむくみ”であれば心配ないが、なかなか改善しない場合には、何らかの病気が隠れている可能性もあるそうだ。
「むくみがなかなか消えない場合、全身性のものか、局所性のものかを見極める必要があります。さらに、むくみの程度や発生時期、他の症状の有無などは、重篤な病気が隠れていないかを判断する手掛かりとなります。全身性の場合、心臓、腎臓、肝臓の機能低下や、甲状腺など内分泌疾患、栄養失調など、局所性では、リンパ性や静脈性の疾患などによるものが考えられます」(鈴木先生)
むくみの原因は多岐にわたるため、長引いたり徐々に悪化する場合は、医療機関を受診したほうがよいとのこと。
■むくみの予防策
“一過性の”顔や瞼のむくみを予防するためには、どのようなことに気をつければよいのだろう。
「基本的には、日頃から適度な運動や規則正しい生活を心がけ、塩分控えめで栄養バランスのよい食事、お酒の量を控えるなど、生活習慣に留意することが大切です。睡眠中は体内の水分が重力の影響で日中の分布と異なります。そのため、夜に塩分やお酒を過剰摂取すると、起床時に顔面がむくむことがあります。通常は、日中頭を上げ活動していると徐々に軽減します。枕が低すぎる人は、就寝時、頭部(枕)を心臓より少し高くすることにより予防効果が期待できます」(鈴木先生)
一方、病的なむくみの場合は、原因を見極め、原疾患の治療を行うことが予防につながるのはいうまでもない。鈴木先生によると、「病的な場合、原疾患の治療とともに、減塩を基本とし、利尿薬などの薬物療法を併用する場合が多い」とのこと。生活習慣を見直してもむくみが気になる人は、一度医師の診断を仰ぎ、原因の除去を目標に、治療を開始してもよいだろう。
●専門家プロフィール:鈴木 飛鳥
医療法人長岡内科医院院長 医学博士。生活習慣病、消化器疾患の治療を得意分野とする。安心、安全で質の高い医療を提供し、地域医療に貢献することに力を注いでいる。