■猫は柑橘系の香りが苦手、アロマウォーターやルームフレグランスは危険?
人間社会でも香害という言葉が使われるようになったが、猫にとっても害だろうか。
「猫は人間の6~7倍の嗅覚を持っており、臭いにとても敏感です。刺激のある臭いは好きではないですし、それらのほとんどが猫にとって害になるものと考えていいでしょう。特に柑橘系の香りが苦手です。猫用のタオルやベッドには香りの強い洗剤や、柔軟剤を使用せず洗濯するとよいでしょう。人が使うものも、できれば香りが長く続く強い香りのものは避けましょう。微香性のものであればそれほど問題はないでしょう」(内藤さん)
微香性または無香の洗剤や柔軟剤もあるので、猫の愛用品に香りをつけずに洗濯することは可能だ。
「猫は柑橘系の匂いが苦手です。柑橘系の皮は人にとってはさわやかでよい香りがしますが、この酸っぱい香りの中には『リモネン』という猫には有害な物質が含まれているので、柑橘類を与えないようにしましょう」(内藤さん)
玄関や部屋にルームフレグランスがある場合はどうだろうか。
「アロマウォーター、ルームフレグランスにはアロマ成分(濃縮された植物エキス)が含まれています。猫は人間と違い、アロマ成分を分解する機能が大変低く中毒を起こす原因になります。特にアロマセラピーで使われるエッセンシャルオイルや、アロマキャンドルは非常に危険です。一見大丈夫そうに見えても、長期間使用していくうちに成分が排出されず、少しずつ体に蓄積されるともいわれています。猫を飼っている家では芳香剤やアロマオイルなど匂いを発するものを避けるほうがよいでしょう」(内藤さん)
流行りのアロマウォーターやルームフレグランスが、猫にとって危険だと知らずに使っている人もいたのではないか。
■灯油や結露にも気を付けて
冬になるとヒーターに灯油を使う人もいると思うが、その臭いは人間にとっても苦痛だ。
「灯油の臭いはもちろんですが、猫が舐めないようにすることが大切です。猫は灯油を舐めてしまうと、灯油中毒になることがあります。舐めた量によっては死に至ります。毛や皮膚に付着した灯油が揮発して、それを吸い込むだけでも呼吸困難になってしまうこともあるので、猫のいる場所で灯油は使わないのが無難です」(内藤さん)
足の裏をきれいに舐める習性がある猫。灯油を使う家庭ではストーブの給油時にこぼれた灯油を飼い猫が舐めてしまわないように気を付けたい。
内藤さんは、窓の結露にも注意が必要と教えてくれた。
「猫は器に入れた新鮮なお水より、なぜか水槽の濁った水や、お風呂場の床など、人が意外に思う場所でお水を飲むのが大好きです。窓についた結露を舐めるのも好きな猫が多いです。そのような猫がいるおうちで、ガラスクリーナーなど合成洗剤を使用して窓掃除をすると、水分と一緒にクリーナーの成分も猫が舐めてしまいます。猫が窓を舐めないように工夫するか、クリーナーを使わずにお掃除すると安全です」(内藤さん)
飼い猫が結露を舐める習性がないか確認しておきたい。
■ボディクリームを塗ったら猫を触らない
乾燥の季節だとハンドクリームやボディクリームを塗る人もいるだろう。香りに敏感な猫は大丈夫なのか。
「これは不思議と猫の好き嫌いが分かれるようです。ハンドクリームを塗った手を好んで舐めたがる猫もいます。でもクリームの成分には猫に有害なものもあるかもしれないので、舐めさせないようにしましょう。また猫は自分と違う匂いがする場所を舐めて、臭いを消そうとする習性があります。クリームをご自分の体に塗ったときは、猫を触らないようにしましょう」(内藤さん)
猫は香りに敏感なだけでなく、その成分に弱いことが分かった。冬の部屋には予想以上に猫に迫る危険があった。飼い主は、気をつけて冬を過ごしてほしい。
●専門家プロフィール:内藤由佳子
神奈川県川崎市にてキャットシッターないとうを経営。シドニーの猫保護施設でのボランティアを通し、猫と人間との共生のあり方を学ぶ。自然と動物をこよなく愛し、愛情をたっぷり込めて丁寧に猫のお世話をしている。