■PTAの趣旨をおさらい
PTAとは、「Parent Teacher Association」の略だが、改めてどのような団体か聞いてみた。
「保護者と先生が協力して学校運営に携わり、子どものよりよい教育環境を整えることを主たる目的とする社会教育関係団体の一つです。加入義務や法人格を与える根拠となる法律も存在せず、個々の団体の自治が重視され、個別に判断しなければならないことが多い任意団体です」(増島さん)
本来の趣旨は、1967年の社会教育審議会で明確に規定されたそうだ。
「PTAとは、『児童生徒の健全な成長をはかることを目的とし、親と教師とが協力して、学校及び家庭における教育に関し理解を深め、その教育の振興につとめ、さらに、児童生徒の校外における生活の指導、地域のおける教育環境の改善、充実をはかるため会員相互の学習その他必要な活動を行う団体である』と規定されています」(増島さん)
現在も趣旨は変わらないが、保護者の働き方や価値観が変化したことは明らか。現代にあったPTAのあり方や運用の仕方を模索することも必要だろう。
■PTA業務をアウトソースする仕組みとメリット
PTA業務をアウトソースする仕組みを教えてもらった。
「弊社でのアウトソ―スの仕組みは、『必要なアウトソース先(企業)をご自身で、弊社HPから検索しご依頼頂く方法』、『適切なアウトソース先(企業)をご案内させて頂く方法』、『弊社とアウトソース先(企業)の協業によるオリジナルサービスをご活用頂く方法』があります」(増島さん)
実際に、増島さんが支援に携わってきたのは、聞けば納得の成功例ばかりだ。
「PTAが担っていた行事の見回りをイベント会社や警備会社にアウトソースすることで、防犯効果が高まり、保護者は観覧に集中できたと好評でした。旗当番の課題は、『シフト作成ツール』をシステム会社と開発し、保護者の不満解消と委員の負荷の大幅削減に成功しました。さらに引継ぎや情報共有を円滑にするため、サイボウズ社と『PTA専用アプリパック』をコラボ開発し、多くのPTAにご利用頂いています」(増島さん)
多岐にわたる業務を担うPTAだが、保護者が苦手な作業もある。それらをアウトソースすることで、本来の活動に保護者のリソースを集約できるようになるのだ。
■PTA業務を楽しく前向きに行うコツ
「PTAは任意団体なので、会費を納めるだけで済ませたい」という声も根強いようだが……。
「本来、会費を納めるだけでもPTAへの貢献にはなります。ただ運営する役員さんは、子ども達のためにも今まで通りPTAを維持しなければならないと考えてしまうことがあります。一方、参加する保護者は、負担を減らして子どもとの時間を大切にしたいと思っています。しかし両者の目的は同じであり、それはどちらも『子どもたちのため』なのです」(増島さん)
だからこそ、互いに歩み寄ることが大切という。
「参加する側は、まずはご自身の学校のPTAを正しく知った上で、参加が難しいと感じたら率直に伝えてみることをお勧めします。『案外すんなり理解してもらえた』という話もよく聞きますよ。運営する側は維持を目的にするのではなく、都度子ども達のために何が必要かを検討し、結果を公開するとよいですね。参加を呼び掛けたPTAは、任意加入に移行してからも7~8割の加入率を保っているようです」(増島さん)
「親達が暗い顔で参加、運営していたら、子ども達がどう感じるか……という視点を持ちつつ、保護者自身が『やりたいこと』や『できること』を探る気持ちも大切にして頂きたいです」と増島さん。子ども達のため、保護者にしかできない活動に注力するため、アウトソースを利用するのも時代にあった策といえそうだ。
●専門家プロフィール:増島 佐和子
広告代理店3社で営業職を務め、一卵性の双子の妊娠・出産を機に退職。その後、認可保育園運営事業者での企画職を経て独立。2020年に自身の経験を活かして、PTA専用支援サービス「PTA'S(ピータス)」をリリース。
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