■財布自体を忘れてしまった場合は?
ランチを食べ終え、会計を……と思ったら、バッグに財布が見当たらない! そんな緊急事態にはどうすべきだろうか。
「財布を忘れてしまった場合、悪意はなくとも、まずはお店のオーナーやスタッフに誠意を示すことが大切です。『食後に財布を忘れてしまったことに気づいた』と正直に伝えて謝罪し、すぐに財布を取りに帰るのが基本ですが、もしその店の常連客などであれば、お店側が信頼してくれ『次回のお支払いでも構いません』などと言って下さる可能性もありますよ」(矢部さん)
まずは誠心誠意、ありのままの状況を伝え謝罪することが大切。初めて入るお店の場合は、財布を取りに帰る際にカードや保険証など、身分証明になるようなものを置いていくなどという対処法はあるのかも聞いた。
「身分証明書などを預けるのもひとつの方法ですが、『身分証明証は要らないので電話番号だけ教えて』と要求されるなど、お店側の判断もさまざまでしょう。そのため、お店の判断に委ねる姿勢が大切です。そのような姿勢により誠意を示すことができ、お店側からの信頼を得ることにも繋がります」(矢部さん)
では食事の代金により、適した対応は異なるものだろうか。
「何より誠意が大切なので、金額は関係ありません。どのように対処すべきかは、お店側の判断にお任せし、全面的に従うのが礼儀です」(矢部さん)
いかなる理由があっても、「非があるのは自分」ということは忘れてはならない。
■財布の中の所持金が足りない場合は?
それでは、「財布は持っているけれど、中に入れておいたお金がランチ代に満たない」という場合はどうすべきだろうか。
「こちらも不足金額の問題ではなく、先のケース同様、お店のオーナーやスタッフに正直に『お金が足りない』という状況を伝え、きちんと謝罪をしましょう。そしてお支払いをどのようにすべきか相談するといいです」(矢部さん)
ひとまず「手持ちのお金を全額支払い、不足分はなるべく早く支払う」と相談するのはどうだろう。
「出来る限りの誠意を見せるためのご提案でしょうが、やはり最終的な判断はお店にお任せするのが妥当です」(矢部さん)
ちなみに海外のレストランで同じような状況に陥った場合も「同じく誠意ある姿勢が大切」と、矢部さんは教えてくれた。世界中どこのレストランで同じようなことが起きても、まずは心から謝罪をすることが先決。そしてその上で「悪意がないこと」「支払う意思があること」をきちんと伝え、お店側の判断を仰ごう。だが、どこに行っても、レストランに入る前には「財布を持っているか」、「中身は十分か」をしっかり確認することも、忘れずにいたいものだ。
●専門家プロフィール:矢部 恵子
(株)エリタージュ代表取締役。パークハイアット東京勤務後、スイスにて就職。帰国後、外資系証券会社勤務を経て、銀座フィニッシングスクール ティアラファクトリーを設立。現在は、銀座校・パリ校にて、上質なプロトコールマナーを指導している。