■慢性疲労症候群の症状
「慢性疲労症候群とは、日常生活に差し支えるような著しい疲労倦怠感のほか、微熱やのどの痛み、脱力感、筋肉痛、頭痛、不眠、過眠などの症状が、長期的に続く病気です。風邪をひいた後に発症するのが典型的ですが、『いろいろと検査したけどどこにも異常がない』というのが一つの特徴です」(班目院長)
この病気のやっかいな点は、原因がハッキリとしておらず、医師の間でも認知度が高くないというところ。そのため、早期発見が非常に難しく、発見できたとしても治療を行える医療機関が少ないのだという。
「検査で異常がない以上、治療はできないと言われたり、精神科を紹介されたりすることが多いようです。最近は自分で慢性疲労症候群を疑い、調べて来院する患者さんが増えました」(班目院長)
放っておくと、日常生活に支障をきたすのはもちろん、寝たきりになる可能性もある。できるだけ早期に対応を行いたいところだが、どうしたら良いのだろうか?
■どんな治療をするの?
風邪をひいたら内科、怪我をしたら外科を受診するが、慢性疲労症候群の治療を専門的に扱う「〇〇科」は今のところ存在しない。心療内科や精神科など、科によって治療法は異なるが、班目院長の病院では「内臓の機能改善」という点からアプローチを行っている。
「慢性疲労症候群には、身体が冷えている方、胃腸の弱い方が多いです。私が大学で研究していた『微少循環学』では、『内臓の機能はその臓器に流れている血液量に比例する』という考え方をします。血液の流れが滞る最大の敵は、冷えと筋肉のコリです。実際に、体を温めただけで疲労倦怠感や痛み、不眠、過眠はかなり改善します」(班目院長)
連日の猛暑。熱中症のリスクから身を守るためにもクーラーは必要不可欠だが、長時間冷房の効いた部屋にいれば当然体は冷える。どこかで体を温めるというステップが必要なのだそうだ。
「体を温めるのに一番良いのは入浴です。ただし、シャワーだけだと身体の清潔は保てますが、内臓の温度を上げることはできません。そのため、定期的に、湯たんぽで体を温めておくのがおすすめです」(班目院長)
体に冷えた箇所があると、その部分が温まる前にのぼせてしまうのだそうだ。
「これまで多くの患者さんを治療してきて、体の全体的な機能を上げれば症状も改善するということは明らかです。原因が解明されるまでに、まだ何年もかかるでしょう。しかし、難病であることは確かですが、慢性疲労症候群は治る病気だと思います」(班目院長)
■予防策は?
班目先生によると、慢性疲労症候群の予防策はシンプルで、「体の機能全体を整えておくこと」。つまり、健康的な食生活や良質な睡眠を基本に、冷えやストレスをなるべく遠ざけることが必要になる。忙しい現代人からは「それができれば苦労しないよ」という声が聞こえてきそうだが、すべての病気に通ずることは確かだ。
「医学そのものが細分化されてきていますが、私はシンプルに、日常生活を整えることが大事だと考えています。胃腸の調子が悪い人は、ご飯の噛み方を改善するだけでも劇的な変化が見られることがあります」(班目院長)
「健康的な生活」と聞いて連想するのが運動だが、実は注意が必要とのこと。
「基本的に慢性疲労症候群というのは、真面目な性格の人がなりやすい病気です。ある程度疲れが溜まった状態なら、まずは疲れを取ることが先です。運動は逆効果になるでしょう。健康な人がやっていることを真似するなど、良かれと思ってやっていることが逆効果になっている人もかなり多いです」(班目院長)
慢性疲労症候群は、いわば体が悲鳴を上げている状態。自分一人ではなかなか対策を取りづらいが、今はインターネットで何でも調べられる時代だ。慢性疲労症候群の治療を行う病院を調べてから相談に行くと良いだろう。
●専門家プロフィール:班目健夫
青山・まだらめクリニック 自律神経免疫治療研究所院長。これまでに、肝臓病を中心とした消化器内科を研究。西洋医学で効果が不足する場合には、注射の針を使う刺絡(しらく)、綿花を利用した間接灸などで難病に対処。針やモグサのかわりに気を用いる気診治療などの自費診療のほか、漢方薬の処方を中心とした保険診療も行う。
(酒井理恵)