■弁護士は法律の総合職、弁理士は知的財産を守る専門職
それぞれの仕事内容にはどのような違いがあるのだろうか。
「弁護士は法律を熟知し、その法律で人の基本的人権や利益を守るのが仕事です。国が犯罪者に罪を問う刑事事件、人と人が争う民事事件の代理人となり依頼人に代わって交渉したり、裁判をします。裁判以外にも調停や、法律相談、それらに応じた書類作成などの仕事もしています。裁判所から依頼されて破産管財人や、成年後見人、相続財産管理人といった仕事につく場合もあります」(清水弁護士)
弁理士の仕事はどのようなものだろう。
「弁理士は、発明などの知的財産を守る仕事です。知的財産とは、人が作り出した目に見えない財産のことです。知的財産は大きく分けて5つに分類されます。発明(特許)、商標、意匠、著作物、ノウハウです。これらを作った人たちの目に見えない財産を守る専門職で、弁護士の資格を保有する人にも与えられている資格です」(清水弁護士)
弁護士は弁理士も兼ねていたのだ。では弁理士の仕事も同時にしているのだろうか。
「弁護士は法律の総合職です。弁護士の資格のほかに、弁理士、税理士、行政書士の資格も同時に与えられていますが、それぞれ登録しなければ仕事をすることはできません。登録すれば同時に仕事をすることができますが、大多数は弁護士だけを登録しているようです」(清水弁護士)
弁護士は弁理士だけでなく税理士や行政書士の資格も持っていたとは驚きだ。8士業のうちの半分を持っていることになる。
■弁護士や弁理士になるには
法律の総合職、弁護士になるには、どうすればよいのだろう。
「弁護士になるには、法科大学院か予備試験を経て司法試験に合格し、司法修習を終える必要があります。司法修習を終えると、法曹資格を得ることができます。法曹資格とは弁護士、検察官、裁判官のいずれかになるための資格です。そこから弁護士を選択し、弁護士登録をし、はじめて弁護士として活動できます」(清水弁護士)
では弁理士になる方法はどうだろう。
「弁理士には受験資格に制限がありません。弁理士試験に合格し、実務研修の後、弁理士登録をすると活動することができます。弁理士になれるのは、この試験の合格者と、弁護士の資格保有者、特許庁で7年以上審判または審査の事務に従事した人たちです。弁理士は発明などで特許の申請に携わるので、理系の知識が必要とされることも少なくありません」(清水弁護士)
弁理士は弁護士と同じように文系の資格だと思っていた人も多いのではないだろうか。
離婚や相続というと周囲で耳にすることが少なくないが、特許や知的財産についてはそれほど身近に感じない。それぞれの市場についても聞いてみた。
「弁護士の数は、増加の一途をたどっています。現在弁護士会の会員は4万人を突破しています。その影響で都市部では専門化が進んでおり、離婚のみ、相続のみ、刑事事件のみに特化するという事務所も現れているようです。一方地方では、離島やへき地にも法律事務所ができ、日本のどこでも法的サービスを受けられる状況です」(清水弁護士)
「日本弁理士会によると、弁理士の数は現在約1万1千人です。東北や九州などの地方では、特許事務所の数は県内で10を下回るところもあります。ちなみに、弁護士、弁理士両者とも、企業内で働く人が増えています」(清水弁護士)
弁理士は知的財産という目に見えない財産を守っていた。企業内でのニーズは容易にイメージできる。弁護士と弁理士は字面ほど実務は似ていなかったが、人の権利を守っているという点では共通していた。
●専門家プロフィール:清水秀郎
弁護士。主に離婚、示談交渉、債務整理などに精通。後悔を残さない選択ができるよう依頼者の目線で寄り添い、迅速丁寧に対応している。訴訟以外でも、円満解決に向けて法律相談にも応じている。法テラス対応。