■一見いい人の傾向
まず、「一見いい人」とは、どのような人のことをいうのだろう。
「人の話を聞くとき、否定することなく『うんうん』と頷いて自分の意見を言わず、相手のことを褒めるのが上手な人には、嫌われたくないため自分を偽っている『一見いい人』が多いものです。そのような人に性格診断テスト『エゴグラム』を行うと、多くの場合、『自信がなく人の評価や顔色を気にしすぎるといった傾向があり、従順で誰からもいい人と思われたい状態』という結果が出るでしょう」(椎名先生)
エゴグラムとは、カウンセリングなどで用いられる性格診断テストである。50問に回答すれば、そのときの心の状態を診断できるとのこと。だが、そのようなテストを毎度行うわけにはいかない。
「逆に『一見いい人ではない人』けれど『本当はいい人』を見抜くほうが早いかもしれませんね。愚痴を聞いてもらったとき、よいことも悪いこともきちんと自分の意見として述べてくれる人は『いい人』と言えます。『あなたの考えすぎよ』や『思い込みや誤解もあるのでは?』などと助言してくれる人は、自分の考えを持っていてそれを伝えてくれているので信頼できるでしょう」(椎名先生)
どんな話にも同調してくれる相手は、「一見いい人だが実は……」の可能性が高く、要注意なのかもしれない。
■打ち明け話をしてしまう人・打ち明け話を暴露する人、それぞれのタイプ
「この人は信用できる!」と思って内密に打ち明けた話を暴露してしまう人はどんな人なのだろうか。
「信頼を裏切って“暴露”をしてしまう理由が、ゴシップ好きなのか、正義感が強いのかで、分析、診断が分かれそうです。前者のエゴグラムは、『客観性や冷静な判断に乏しく、自己中心的でわがままな人』と表れる場合が多く、後者では『倫理観が強く「~あるべき」「~でないといけない」と考えがちで、思いやりや優しさはあるけれど、時におせっかい、干渉的な部分が多い人』という分析ができそうです。しかし基本的には『いい人でいたい』、『嫌われたくない』、『波風をたてたくない』といった気持ちが根底に存在します。程度の差こそあれ、一見いい人、愚痴を言う人、暴露をする人すべてが持っている共通の感情と言えるでしょう」(椎名先生)
「人に嫌われたくない」という気持ちが、いろいろな形になって表現されるようだ。
では逆に「この人は信用できる!」と思い込み、打ち明けてしまう人はどんな心理なのか。
「自分に自信が持てず気の弱い人の心理状態です。人間関係における不満や愚痴を第三者に話したいと思う欲求は、相手に『自分の気持ちに共感して欲しい』、『自分は間違えていないと正当化して欲しい』といった『依存心』が高まっているときに生じます。エゴグラムでは、『客観性が低く、衝動的で冷静な判断ができない心の状態』と表れる場合が多いでしょう」(椎名先生)
■人間関係のトラブルはあって当然のもの
様々なタイプの人たちと良好な人間関係を築くにはどうしたらいいのだろう?
「人間関係におけるトラブルは、いつでもどこでも誰にでも降りかかるものです。あって当然のトラブルだと思い、どのような場合にも自分のポリシーを持って行動することが大切です。自分の気持ちに正直に、自分の考えや意見をしっかり相手に伝えられる人になろうと努力をすれば、おのずと似たような人たちが集まるようになりますよ」(椎名先生)
積極的に思いを伝える行動をとることで、回避できるトラブルもありそうだが「人間関係に失敗は付き物」と思った方がよさそうだ。
「完璧な人はいませんから、もし自分が『悪いことをしてしまった』と気づいたときは、きちんと反省した上で、『あのときの自分は、精神的に追い詰められていたんだな』などと、自分で自分を労ってあげてください」(椎名先生)
椎名先生は、友人、夫婦、親子間などのさまざまな問題は「愛を求めているからこそ起きる」と、昨年出版した『ゆがんだ愛それから』(ギャラクシーブックス)でも綴っている。失敗してしまった時は、自分を客観的に見ることも大切なのだ。
●専門家プロフィール:椎名 あつ子
2000年「横浜心理ケアセンター」設立。1対1のカウンセリングのほか、複数のファミリーカウンセリングにも対応。モラハラやDV、職場ストレス、発達障害の相談にも多数の実績がある。医療や法律の専門家との連携も可能。著書に『ゆがんだ愛それから』(ギャラクシーブックス)がある。