■相談しにくい上司の特徴
まずは八矢さんに、相談しにくい上司の特徴を聞いてみた。
「部下に対して怖い、無関心、無反応、落ち着きがない、話が分かりにくい、聞いているのかどうか分からない、などの特徴が挙げられます。つまり、相談しようとしている部下に不安を与えてしまっているような人。それは、部下ときちんと向き合っていないことなので、相談しにくい関係性になってしまいます」(八矢さん)
「相談しにくさ」というのは、普段の話し方や雰囲気の延長線上にあるようだ。八矢さん曰く、自分も似たような雰囲気を醸しだしていないかと、振り返ることも大切だという。
■「相談できない部下」はストレスが原因!?
逆に、上司の立場で頭を悩ますのは、相談をしてくれない部下の存在だ。トラブルや失敗が後になって発覚するという事態は、部下が職場で感じる「ストレッサー(ストレスの原因)」によって引き起こされるのだという。
「職場におけるストレッサーは、『仕事の質・量』、『仕事の失敗・責任の発生』、『人間関係』が上位3つに挙げられます。特に、『仕事の失敗・責任の発生』がここ数年伸びています。つまり、失敗や責任を押し付けられる恐れから相談が出来なくなっているのです。また、仕事ができないと思われたくないことも一因となっています」(八矢さん)
本来は、報告・連絡・相談を行うことで、ストレッサーは緩和される。しかし、仕事ができないと思われることを恐れるあまりに相談ができず、結果失敗してしまうというスパイラルに陥ることもあると八矢さんは教えてくれた。
■相談しやすくされやすい土壌を作るには
上司の立場であっても、部下の立場であっても、どのように振る舞えば相談しやすくされやすい関係が築けるのだろう。
「相談する場合は、目的を明確にすることが大切です。何のために相談を行うのかを明確にしないと意味不明になってしまいます。さらに、相手に通じる伝え方ができているのかという視点も必要です。自分の考えをきちんと整理し、相談しにいくことが求められます。準備しておくことは、上司の時間を奪わないこと、自分の相談の目的を見失わないことにもつながります」(八矢さん)
相手を責めるばかりではなく、自分を省みることも重要となってくる。
「単に事実を共有することだけが相談ではありません。互いに目的を明確にし、相手にとって伝えやすい方法を用いて、自分の目的と相手の目的をすり合わせていくことが大切となります」(八矢さん)
相談された場合は、相手が目指しているゴールに対して丁寧に理解を示したい。
会社という組織においては、1人だけでは仕事はできないし、組織全体も回らない。上司の立場であっても部下の立場であっても、相手を思いやることが成果につながる。努力や工夫はもちろんだが、相談し相談されるための雰囲気づくりをしておくことも大切なことだろう。
●専門家プロフィール:八矢浩
主に、中小企業の職場のメンタルヘルス専門家として活動。研修、セミナー、nEQ活用面談など、現場での指導を心がけている。