
■「チッチャー」への挫折……?
――ラグビーを始められたきっかけはなんですか?
ラグビーを始める前、僕はずっと野球やっていました。
――野球をやってたんですか!? いつまでですか?
中学までです。
――ポジションは?
「ピッチャー」ですが、僕はこういう時いつも「チッチャー」って言うんです。僕は身体がちっちゃいピッチャーなので「チッチャー」(笑)。
――なんとチャーミングな(笑)。では「チッチャー」として活躍していたんですか?
身体が小さかった分、他の大きな選手に負けじと全身を使って投げていました。するとある試合で絶好調だったこともあり、それこそ全力投球で投げましたら1安打完封しちゃったんですよ……まぁ中学の練習試合ではありましたが(苦笑)。

――それは有望株ですね!
それで調子づいて、次の試合ではさらに全力投球をして挑んだのですが、試合中に腰の分離症になってしまい、痛くて投げられなくなりました……。
――うわ……、腰の痛みは辛いですからねぇ……。
その後はポジションを変えて野球を続けていましたが、中学校3年生のとき、これからの進路を決めるときにはもうプロ野球の選手になるのは無理だなと諦めまして……。
――腰の怪我がなければ、プロ野球選手になろうと思ってたんですね?
もうそれこそ篠塚利夫さん(現:篠塚和典さん)の次は僕が巨人のセカンドになると思って続けていたので(苦笑)。
――なるほど!(笑)。

■担任と同級生の女の子の言葉がきっかけ
なので、高校への進学は熊谷工業に入って、3年間で手に職をつけて、卒業後は工場か土木関係に就職しようと思っていました。そのことを中学の担任に伝えましたら「熊谷工業はラグビーが全国レベルだから、せっかく行くならラグビーをやったらどうか?」とアドバイスをもらいまして。
――それまで堀越さんは、ラグビーには興味あったのですか?
テレビで観戦する程度でしたね。ただ、同級生の女の子で、お兄ちゃんが熊谷工業でラグビーをしている人がいたんですよ。そうしたら「熊工のラグビー部はすごい練習がきつくて、年間でも休日が3日あるかないか。まぁ正己じゃ無理よね」と言われたことがちょっと癪に障りまして……。
――なんか青春の1ページみたいな展開だ……(笑)。
(笑)。「お前のお兄ちゃんがやれているのに、なんで俺だとできないと決めつけるんだっ!?」というのもあったりして、もう野球への未練を捨てて、熊谷工業に行ってラグビーをやることに決めました。

■ラグビーは自由な「鬼ごっこ」
――来年は「ワールドカップラグビー2019」という世界中が注目する大会が始まりますが、ラグビーをそんなに知らない方々にラグビーの魅力について教えてもらえますか?
ラグビーという競技自体は「自由に好き勝手にボールを持っていい競技」なので、他の競技には全くない世界なんですよ。
――おお! それは興味深い話ですね!
効率的に後ろに走るのはもったいないから後ろには走っちゃだめですけど、でも本質は「鬼ごっこ」みたいなもので、ボールを持っている鬼を捕まえる。それを個人ではなく味方が15人もいて、全員がサポートしてくれるゲームなんです。
――ラグビーって鬼ごっこなんだ(笑)。「鬼ごっこ」とうい発想から見ると、ラグビーって面白いですね!
球技の中でボールを持って自由に駆け回るのはラグビーしかないですからね。
――そうか~、確かにバスケやバレーボールはボールを持って走り回れない(笑)。

■「タグラグビー」とは?
そしていまは「タグラグビー」といって大人と子どもが一緒にできるラグビーもあります。
――知っています! 友人がお子さんと一緒にやっていますよ。大人はハンデとして走ってはいけないので、子どもといい勝負というよりなかなか勝てないと言っていました(笑)。
子どもはすばしっこいですし、大人とやって負かしたらすごく喜んでのめり込むんですよ。でも大人も負けず嫌いだから、ちょっと走ったりして、レフリーに怒られる(笑)。
――大人の気持ち、とてもわかるっ(笑)。
タグラグビーは現在小学校で文科省の指導要領には入っています。現在 アルカス熊谷 というNPO法人を立ち上げて、熊谷市にご協力いただき、29校の小学校に年1回タグラグビーの指導に行っており、今年で3年目を迎えます。
――ラグビーもタグラグビーもさらに広がるといいですね!
そうなるよう私もラグビーに恩返しをして行きます!
ラグビーファンなら誰しもが知る「褐色の小さな英雄」こと堀越正己氏ですが、ラグビーをあまり知らない人でも堀越氏とラグビーの魅力を感じていただけたのではないでしょうか♪ 今後の堀越氏とラグビーワールドカップ2019には大注目ですっ!

●堀越正己プロフィール

●インタビュアー:水島裕
