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被害者の承諾が処罰阻却根拠の
「構成要件該当性阻却説」とはどのような説でしょうか?

テキストには
【主張理由】
同意によって処罰を否定される犯罪類型の大半→構成要件を阻却する。
構成要件は処罰に値する法益侵害の有無を判断する。
【批判】
条文には、同意のないことは要求されていない

となっているのですが、主張理由も批判の意味も全くわかりません。

A 回答 (10件)

以下は、待たせちゃったついでのおまけ。


被害者の同意が犯罪とならない場合はいくつかあるんだけど、それを整理しておく。
1.被害者の同意がないことが構成要件要素となっているもの。
2.被害者の同意があることが構成要件要素となっているもの。
3.被害者の同意が犯罪の成否に影響しないもの。
4.被害者の同意が違法性阻却事由となるもの。

1.例えば、窃盗罪で被害者が持って行って良いよと同意している場合、それはそもそも「被害者」とは言えないし、当然窃取したことにすらならないでしょ?だから明らかに構成要件に該当しないわけよ。こういう被害者の同意がない(=被害者の意思に反する)ことが構成要件上、明示または黙示で当然に要求される犯罪があるわけ。他にも先に述べたとおり強姦罪とか住居侵入剤とかがあるね。この類の犯罪で被害者の同意を違法性阻却事由だなんて言う論者は多分ほとんどいないと思うよ。だから「明示または黙示」で同意の有無を構成要件要素としていると考えるの。これでもし構成要件該当性を認めるなら、犯罪を類型化して犯罪と非犯罪とを区別するための構成要件の機能を損なうことになるからね。
2.これは代表格は承諾殺人罪。被害者の同意がないとただの殺人罪になっちゃうでしょ。同意があれば殺人罪にはならないが、犯罪自体は成立する。
3.これは13歳未満の者に対する強姦とか強制わいせつ。同意は法律的には何の意味もない。あってもなくても犯罪の成否に一切影響しないってこと。
4.問題はこれだ。理論的にはこの類型を認めないと考えるのが前田先生なわけ。もっとも、被害者の同意を違法性阻却事由と考えるにしても構成要件該当性阻却事由と考えるとしても1の類型の存在を認める以上は、実際に問題になるのは傷害罪くらいしかない。
違法性阻却事由と考えると傷害の程度や態様などによっては同意があってもなお違法性を阻却せず犯罪であると考えることが容易になる。特に(行為の反社会性という点も考慮する)行為無価値からはそっちの方が都合が良いだろうし、更に、行為無価値の大御所、団藤先生なんかは構成要件は形式的判断と位置付けるから、理論的にも違法性阻却の方が説明しやすい。一方で、結果無価値に立った上で、構成要件を実質化しても構わないと考える前田先生なんかだと、構成要件該当性を否定しても良いとなる。だけど、前田先生でも同意があるという一事「のみ」をもって完全に構成要件該当性を否定するわけではなくて事情によって構成要件該当性を認めることは可能ではあるとは思う(ちょっとこの点は前田先生の主張を理解しきれていないから断言はしかねる)。

以上長くなったけど、逆に言えばこのくらいきっちり話をしないで理解しろって言っても無理だと思うけどね。理解した つ も り に な る だ け なら十分かもしれないが。
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そこで結局問題となるのは傷害罪くらいということになる。

「傷害した」に「同意傷害は含まない」とは簡単には言えない(もちろん、言っても良いのだが、言わないのが普通)。と言うか、同意があっても傷害は傷害としてその程度態様というものを考慮せざるを得ないと考えるのが支配的。とすると、同意のある傷害でも傷害罪になるものとならないものとがある(そう考えないことも理論的にはもちろん可能)。
すると、その理論的な説明をするにあたって、端的に「傷害の程度態様などと同意の存在を考慮して構成要件該当性を否定する」と考えるべきか「傷害の程度態様は事例により異なるから同意と程度態様を併せて個別事例に即した実質的な判断が必要。これを形式的であるべき成要件該当性で行うことはできず、違法性阻却事由の問題となる」と考えるか。ちなみに前田先生は、「そもそも構成要件判断を完全に形式的に行うことは不可能で、多かれ少なかれ実質判断が入らざるを得ないのだから、構成要件該当性の判断を実質的に行うことは構わない」と考えているわけで、議論の出発点からして違っているんだけどね。
つまり、この見解の対立の裏には「構成要件というものをどう捉えるのか」という相違があるわけ。条文に書いてないとしても「構成要件はそもそも条文を解釈して得られる犯罪の枠組み」であるから、条文に書いていないというだけでは特定の要件を要求しない理由にはならないのね。窃盗罪の不法領得の意思とかを考えれば解るね(もちろん否定する見解もあるが)。これは判例すら採用する見解だから。
ぶっちゃけた説明をすると、そもそも構成要件要素は違法な行為を類型化したものだから被害者の同意によって違法でない場合には構成要件該当性自体がないと考えることが可能。つまり、被害者の同意があるならそれで良いんだから処罰に値しない。処罰に値しないものは、犯罪類型としての構成要件に該当すると考えることはできない。ってこと(前田先生が同意傷害は常に構成要件非該当とまで言っているとは思えないが、極論すればそういうこと。この点は前田先生の主張を理解しきれていないから断言はしかねる)。
一方、そうではなくて構成要件は形式的な判断だから個別事例で実質的な違法性を欠くことを理由に構成要件該当性を否定することはできないと考えれば、あくまでも構成要件には該当するが違法性を阻却するだけだと考えることもできる。
こういう本質的な部分に目を向けずに形式的に「明文がない」なんて批判をしても説得力皆無なのは当然だ。説得力皆無すぎる批判だったもんで、自分も理解できなかったわけだな。批判になってねぇじゃんって。まあ理解力がなかったと言われれば否定はしないけどね。
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では、構成要件上、被害者の同意がないことが必要とはどういうことか。


具体的に一言で言えば、「被害者の同意があれば」そもそも窃盗罪の「窃取にあたらない」ということ。つまり、ほとんどの個人的法益に関する罪の、実行行為は「被害者(となるべき人)の同意がないときに初めて該当性を認め得る行為である」ということだ。
いくつか例を挙げる。
窃盗罪の「窃取」というのは、つまり占有侵害のことだけど、「被害者の同意があれば占有侵害でないんだからそもそも窃取でない」となる。
強姦罪の「姦淫」とは、「被害者の同意のない性行為」と考えるべき。同意があるのに「強姦罪の構成要件に当たる」というのはいくらなんでも常軌を逸した発想だろう。
監禁罪の「監禁」とは、「被害者の同意のない監禁」と考えるべき。同意があるのに「監禁」とはやはり常軌を逸していると言わざるを得ない。
名誉毀損罪の「名誉を毀損」とは、「被害者の同意のない名誉毀損行為」と考えるべき。本人が良いと言っている以上、名誉を毀損し得る行為であるとしても、条文が予定する「名誉を毀損」には当たらないと解すべき。
住居侵入罪の「侵入」とは、「被害者の同意のない立ち入り」を意味すると考えるべき。普通、「侵入」って言う場合そういう意味だよね?入って良いって言われているなら「侵入」とは言わないもん普通。
ただ、住居侵入罪の場合明文で「正当な理由」ということを要求している。しかし、「正当な理由」があれば犯罪にならないのは、住居侵入罪に限った話ではなく犯罪一般に共通する話。そこでわざわざ明文で「正当な理由」と書いた意味は何かを考えると、例えばこれを被害者の同意のことだと考える説もあるにはある。ただ、それなら端的に「同意のない」とでも書けばいいのにそう書いていないというのは、やはり「正当な理由」は同意を含むとしてもそれに尽きるものではないと考えるべき。ただそうすると、一般論としての「正当な理由」があれば犯罪とならないということと区別が付かない。結局、住居侵入罪においては「正当な理由」がある場合が少なくない、言い換えれば他の犯罪類型に比べて犯罪とすべきでない場合までもが形式的には「侵入」に該当しやすいことから、殊更に注意を促すためにわざわざ「正当な理由」と書いたと考えるべきというのが大体、一般的な理解。そうすると、殊更に「正当な理由」の意味を論じる必要はないと考えることになる。
だから、住居侵入罪に「正当な理由」とあることが構成要件上被害者の同意を定めていると解しても構わないが、「正当な理由」と書いていない他の犯罪において構成要件上、被害者の同意を定めていないと解することにはならない。
何度も言うけど、「被害者の同意があれば窃取とは言えない」のは明らか。ここで窃取に当たるから構成要件に該当するが違法性を阻却するなんていう説は激レア(と言うか多分ない)な説だし、常識的にもおかしいだろう。
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字数制限で、一発回答できないので続編。



さて、もうちょっと細かく説明しようか。繰り返しになるけど、この話は結局、被害者の同意の犯罪論体系上の位置付けの議論であるということは解ったね?つまり、被害者の同意の法的性質は何かという話ね。
従来と言うか今でも一般には、被害者の同意は超法規的正当化事由、すなわち、違法性阻却事由と考える。まず前提としてこれを理解しておく必要がある。ただ、ここで気を付けねばならないのは、「違法性阻却事由というのはあくまでも一般論に過ぎない」ということ。つまり、個別の犯罪において構成要件上、同意のないことが当然に必要である場合は少なからずあるということ。
でここが自分の勘違いの下になったんだけど、実際には、ほとんどの犯罪において構成要件上、同意がないことが必要と解するのが妥当だと「前田先生に限らず多くの学者が考えている」。つまり、一般論として違法性阻却事由と捉える学者にしても、実際には(少なくとも刑法に規定のある犯罪については)、構成要件上、同意がないことが当然必要な犯罪の方が圧倒的に多いということは認めているってこと。それが、じゃあそもそも違法性阻却事由と考えること自体がおかしいんじゃないの?って問題意識に繋がったのが前田先生ってわけだ。結局、一般論が実際とは合致していないということであり、言い換えれば、一般論より例外の方が多いということ。するとそもそも一般論がおかしいと考えるべきじゃない?となっても不思議はないよね?
んで、構成要件該当性阻却説とは前田先生の説と思って良いだろう。理由は、質問の説明が前田先生の記述丸写しだからということと、実際前田先生は、被害者の同意を構成要件の問題と捉えているわけだし。以下、その理解で話をするよ。

前田先生が、自説を展開する前提として、
1.従来、被害者の同意は犯罪一般に共通する違法性阻却事由と捉えるのが大勢である。
2.被害者の同意により犯罪が成立しない場合は、個人的法益に関する罪に限る。
3.個人的法益に関する罪でも被害者の同意により犯罪が不成立とならない場合もある。
4.個人的法益に関する罪はほとんどが構成要件上、被害者の同意がないことが必要。
5.結局、傷害罪くらいしか、同意を正当化事由と捉えることができる犯罪類型はない。
という話をしている。

以下、続く。
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随分お待たせした。

PC不調になったもんで(以上、言い訳)。

最初にざっくりとした説明をしよう。これで解るなら後の説明は読み飛ばしてオッケー。

簡単に言っちゃうと質問の件の「被害者の同意」の法的性質は何かって話ね。これを「超法規的違法性阻却事由」と捉える見解が多数なの。これを理解していないと意味が解らないだろうね。そして、前田先生なんかは、違法性阻却事由ではなく同意があれば構成要件に該当しないと考えれば十分だから構成要件該当性阻却事由と考えるべきだって説なのね。
そこで、構成要件は犯罪となる違法な行為とそうでない行為とを区別する機能(構成要件の識別機能ってやつ)があるところ、「当該行為がそもそも処罰に値する行為かどうか」ということを判断するのが構成要件の機能であると考えと、同意によって犯罪にならない場合には、構成要件に該当しないと考える方が合理的だというのが、前田先生の節の実質的な理由。
形式的な理由としては、同意により犯罪とならない場合は、「違法性阻却事由と考える説においても」実際にはほとんどが構成要件該当性自体を否定することになり、傷害罪くらいしか問題にならないのだから敢えて正当化事由として位置付ける理由がないということ。
それに対して、確かに構成要件上、同意の有無は規定がないという批判は可能なんだけど、実質的には、「規定がなくても構成要件該当性自体を否定する方が圧倒的に多い」ので批判としては説得力はほとんどない。住居侵入罪は確かに「正当な理由」という明文の規定があるけど、じゃあ、明文規定のない窃盗罪で被害者の同意があったら、そもそも「窃取でない」し、「被害者ですらない」のは明らか。これを否定する学説はおそらく皆無。
だったら、明文規定の有無なんてあまり意味がない。それぞれの構成要件の規定する犯罪行為に該当するかどうかの判断をするにあたって「同意があるかないか」を考慮しても何の問題もないわけだから。
その点で、批判というのがなんともお粗末ではある。どうせなら行為無価値の大御所、団藤先生的な言い方で、個別の事情を構成要件該当性判断に組み込むのは形式的であるべき構成要件判断を実質化するので宜しくないとかいう説明の方がまだマシだと思うね。

まあ、とにかく、あまり解りやすいテキストとも思えないけど、テキストの言いたいのはこんなところだろう。
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あくまで自分の理解なので恐縮ですが。



犯罪成立の過程を考えれば分かりやすいと思います。
構成要件該当性の有無

違法性阻却事由の有無

責任阻却事由の有無

構○違×責×
犯罪成立になります。

構成要件該当性阻却説は最初の判断において被害者の承諾があると構成要件該当性は×となります。すなわち、構成要件該当性の判断にあたっては

被害者の承諾の有無

が要件になると考えるのです。
確かに被害者の承諾の有無が要件と考えられる犯罪も条文上一部にはあるが、ほとんどは条文にそんなこと書いてないのに勝手に要件にするなというのが批判です。

つまり個人的法益だから被害者に処分性あるから承諾あるんだから、不成立で成立の余地なんてないやろという考え
に対して、
構成要件該当性はそれぞれの罪の条文から判断するから、条文に書いてない被害者の承諾の有無を勝手に解釈でいれるなという条文から乖離しているという批判なのです。
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一晩冷静に考えてみたら、自分が前田先生の記述を誤解していたことに気が付いた。


なので2と3の回答は取消す。取消した上で、改めて回答すべきなんだけど、ちょいと時間がないのでまた後日。
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ちょっと説明足らずでまずい記述があるから訂正するね。



>>「主張理由」とやらが前田先生の記述とほとんど同じことを考えると、この説は前田先生の説のことかも知れないが、だとすれば「同意によって処罰を否定される犯罪類型の大半は構成要件を阻却する」というのは主張の理由ではない。単に多くの学説が採る見解をそのまま述べただけだ。前田先生の主張はあくまでも「傷害罪における同意は違法性阻却事由ではなくて構成要件該当性阻却事由だ」というものなんだから。そして、その理由が、「構成要件は処罰に値する法益侵害の有無を判断する」ということになるだけだ。

この部分だけど、

「主張理由」とやらが前田先生の記述とほとんど同じことを考えると、この説は前田先生の説のことかも知れないが、だとすれば「同意によって処罰を否定される犯罪類型の大半は構成要件を阻却する」というのは論理的には主張の実質的理由ではない。単に多くの学説が採る見解をそのまま述べただけと変わらない。確かに、同意によって処罰を否定される犯罪類型の大半は構成要件を阻却するから同意は原則として構成要件の問題と捉えるべきだという趣旨の記述があるが、これは同意反復に過ぎない。だってそうでしょ?「同意の存在が構成要件該当性を否定するから同意の有無は構成要件の問題だと考えるべきだ」って何も言ってないのに等しいじゃない?「逆に同意が構成要件該当性を阻却すると考えなければ、原則として構成要件の問題とはならないことになる」とこう反論できるわけだ。
だけど、前田先生の主張はそんなことじゃない。あくまでも「傷害罪における同意は違法性阻却事由ではなくて構成要件該当性阻却事由だ」というものであり、その前提として「同意の問題は一般論として構成要件の問題である。なぜなら、多くの学説も認めるとおり、同意の存在は大半の犯罪において構成要件該当性を阻却すると考えるのが妥当だから。そして、傷害罪も同じように考えて構成要件該当性の問題と捉えるべきだ」と言ってるだけ。そうすると、「逆に同意が構成要件該当性を阻却すると考えなければ、原則として構成要件の問題とはならないことになる」と反論しても、「確かに理屈の上ではその通りだが、同意が構成要件該当性を阻却する場合がほとんどであるということは多くの学説が認めるある意味当然とも言えることだから、そこを否定するのであればそれだけの理由を言え」と言うこともできるわけだ。つまり、論理的には必ずしも理由になっていないが、少なくとも多くの学者が同じことを考えているという意味では一定の根拠とはなり得る(もちろん正誤が多数決で決まるわけじゃないがね)くらいは言えるという程度の話。だから論理的には実質的な理由ではない。
そして、実質的な理由は「構成要件は処罰に値する法益侵害の有無を判断する」ということの方であり、こっちこそが重要。

と置き換える。
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解らなくて当然の気がするな。

自分も解らん。

そもそも「同意によって処罰を否定される犯罪類型の大半が構成要件を阻却する」「構成要件は処罰に値する法益侵害の有無を判断する」という趣旨の記述は前田先生の刑法総論の基本書にあるんだけど、これは、
1.同意による正当化ができるのは個人的法益に関する罪だけ
2.さらに、同意により正当化されるのは個人的法益に関する罪の一部だけ
3.生命に関しては同意殺人罪があるから正当化されない
4.自由、名誉、財産などに関する犯罪は構成要件該当性が欠けるとする学説が多い
5.結局、傷害罪だけが問題となる
という前提の記述なんだよね。
この4番目を見れば解るとおり、多くの学説では「同意によって処罰を否定される犯罪類型の大半は構成要件を阻却する」ということは認めているわけだ。条 文 上、そ ん な こ と は 要 求 さ れ て い な く て も ね。たとえ「条文上要求されてない」としても「黙示の構成要件要素として同意がないことが必要」と考えることはできるのだから。元々、構成要件とは条文の文言そのままじゃない。だから明文で書いていないことはそれほど意味がある批判とは思えない。

そして前田先生が他の論者と異なるのは、5の傷害罪の場合に、同意の不存在を構成要件要素と位置付けるところ。多くの学説はこの場合の同意は違法性阻却事由と考えるんだけどね。もし、この前田先生の考え方を仮に構成要件該当性阻却説と呼ぶのであれば、それは「傷害罪においての同意の法的性質論」であって、犯罪一般についての話じゃない。「主張理由」とやらが前田先生の記述とほとんど同じことを考えると、この説は前田先生の説のことかも知れないが、だとすれば「同意によって処罰を否定される犯罪類型の大半は構成要件を阻却する」というのは主張の理由ではない。単に多くの学説が採る見解をそのまま述べただけだ。前田先生の主張はあくまでも「傷害罪における同意は違法性阻却事由ではなくて構成要件該当性阻却事由だ」というものなんだから。そして、その理由が、「構成要件は処罰に値する法益侵害の有無を判断する」ということになるだけだ。

そんなわけで、このテキストの記述は何を言っているのか解らん。前田先生の記述を誤解しているんじゃないかとしか思えないんだが。


ちなみに1番の回答の例は少なくとも判例では窃盗罪が成立するからね。判例でなくても大抵の学説では成立すると思うけど。というのは、承諾は「行為の時存在することが必要」だから。盗む段階で承諾がない以上は、窃盗罪は成立するの。
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質問が抽象的なので分かりにくい面がありますが、具体的に考えると良いでしょう。



先ず、窃盗を考えてみましょう。甲が乙の自転車を盗みましたが、乙が廃棄物にして捨てる積りだったから、甲が盗んだことを咎めるどころか、持って行って貰って良かったと思う場合、窃盗に同意したということになるのかどうか簿妙ですが、少なくとも被害者意識はなく(寧ろ引き取り費用を節約できたと喜んでいる位である)、乙の側では法益侵害を理由に甲の処罰を求める意思はないと考えられます。これを構成要件非該当というのか、構成要件該当なれど違法性阻却または責任阻却というのか、いずれにしても、犯罪として成立しないということです。

上記の例に照らせば、「犯罪類型の大半→構成要件を阻却する」という考え方があっても良いと思います(賛成するかどうかは別として)。

しかし、被害者の同意があっても、犯罪が成立する場合があります。自殺願望者に頼まれてビルの屋上から突き落とせば、殺人の同意があっても、殺人罪は成立します。

(自殺関与及び同意殺人)
第二百二条  人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。

「批判:条文には、同意のないことは要求されていない」について
被害者の同意をもって「構成要件該当性阻却」とする説は、不法住居侵入罪のように、構成要件の中に「正当な理由なく」(同意の無い場合が含まれる)という文言がある場合は良いが、条文には同意のないことを要求していない場合まで、被害者の同意があれば構成要件に該当しないと解釈するのは文理的に無理があるというのが、批判的見解であろうと思います(個人的には批判を支持したい、つまり構成要件には該当するが同意により違法性が責任を阻却すると考えたいですね)。

もう少し初学者向けに平たく言うと、条文に同意の有無が書いて無いのに、被害者の同意があれば、大半の犯罪は、条文に該当しないと考えるのが構成要件非該当説でしょう。それに対して、同意があっても無くても、条文に該当する行為はすべて構成要件に該当するが、違法性や責任の面で処罰するかしないか判断しようというのが批判的立場でしょう。
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