亀岡死傷の交通事故でも問題になっている
重大事故時での、危険運転致死傷罪、業務上過失致死罪
どちらで起訴するかについてです。
この時の課題ですが、危険運転致死傷罪で起訴しても
この罪が適用されない場合、再び業務上過失致死罪で
起訴できないという事です。
ここで疑問に持ったのが、2つなのです。
1.本当に業務上過失致死罪に問えないのでしょうか?
一事不再理が適用されると聞いたのですが、本当ですか
2.殺人罪の場合どうなんでしょうか
ひとを殺して殺人罪で起訴されても、
殺意がなく、業務上過失致死罪レベルの場合、
無罪ではなく、殺人罪での幅を持たせた
刑罰(死刑~禁固XX年)から刑罰をあたえますよね?
それならば、まずは危険運転致死傷罪で起訴して、
そこから最高20年から禁固XX年を科す事が
できないのでしょうか。
それとも危険運転致死傷罪と業務上過失致死罪の関係は
泥棒した人を窃盗罪でなく殺人罪で起訴するくらい
大きな隔たりがあるのでしょうか
No.3
- 回答日時:
1.本当に業務上過失致死罪に問えないのでしょうか?
一事不再理が適用されると聞いたのですが、本当ですか
↑
一度判決が出てしまえば、一事不再理が適用されて
処罰できなくなります。
でも、少し専門的になりますが、こうした事件では、
判決が降りる前に、訴因を変更するなどして、業務上過失致死
に切り替えることが可能です。
切り替えなくても、業務上過失致死の事実が認定できれば
裁判所はその判決を下せます。
2,殺人罪の場合どうなんでしょうか
ひとを殺して殺人罪で起訴されても、
殺意がなく、業務上過失致死罪レベルの場合、
無罪ではなく、殺人罪での幅を持たせた
刑罰(死刑~禁固XX年)から刑罰をあたえますよね?
↑
これも専門的になりますが、この場合には訴因の同一性が認められ
ますので、殺意が無ければ傷害致死の刑責を負わすことは
可能です。殺人の訴因には傷害致死が含まれている
と考えられるからです。
少し、専門的になりますが。
裁判では、検察官がこういう事実があった、と主張する訳です。
これは、訴因、という形で行われます。
現実問題として、その事実は裁判をしている間に、検察官の認識と
異なってくる場合があります。
その場合に備えて、刑訴法では「公訴事実の同一性」の間での
事実の違いであれば、検察官の主張を変更できる、としています。
例えば、殺人と傷害致死では、主観が異なるだけで、死という結果が
同じなので公訴事実が同一だ、ということになり、
検察官の主張の変更が認められることになっているのです。
又、検察官が主張を変更しなくても、殺人の起訴に対して、
裁判所は傷害致死の判決を出すことも可能です。
回答ありがとうございました。
心情的には、重い刑で起訴したいと思いますが
それが適用できないと、処罰できないのすね。
改めて人が人を裁く事の難しらされました。
回答内容、大変勉強になりました。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
刑事訴訟法の教科書に必ず出てくるテーマですね。
No.1の方もサラっと書いておられます「訴因」がキーワードです。
分かりやすく殺人罪を例に挙げますと、「甲がAを銃で撃って死亡させた」という事実があるとします。
これは自然科学的な事実であり誰の目にも変わることはありません。
しかし犯罪というのはそこに主観―すなわち甲の意思・Aの意思.―その他を重ね合わせて評価したものです。
(1)甲が殺意をもってAを撃った→殺人罪
(2)甲はAにケガを負わせる意思で足を撃ったところ、当たり所が悪くAは死亡した→傷害致死罪
(3)Aに「殺してほしい」と頼まれた甲がAを撃った→嘱託殺人罪
(4)甲が銃の手入れをしていたら暴発してAに当たった→過失致死罪
というように1個の自然現象について4種の評価が成り立ち得るわけです。
この時もし「それぞれ罪名から違うから一事不再理は及ばない」ということになれば、Aは最大4回も裁判を受ける羽目になります。
そんな馬鹿な話ありますか!?
(1)~(4)は罪名(=訴因)こそ違えど背景にある事実は同一なのですから、一事不再理が及ぶと解すべきなのです。
これと同じことが危険運転致死傷罪と自動車運転過失致死罪についても言えます。
もうひとつ大事なルール。
検察が起訴した訴因より重い判決を下すことはできません。
たとえば検察は(2)傷害致死罪で起訴したのに、裁判所が甲の殺意を認定して(1)殺人罪とすることはできません。
逆に軽く認定することはできます。
裁判の途中で検察が「やっぱ(1)殺人罪やめて(2)傷害致死に変更します。」と言うこともあります。(訴因変更)
じゃあ検察はとりあえず一番重い訴因で起訴しとけばいいんじゃないの?って話になりますが、さすがにそれは検察が馬鹿と思われるのでやりません。
自分たちが立証できそうだなと考える範囲で訴因を決定します。
分かりやすく書いたら長くなってしまいました。
理解の助けになれば幸いです。
(おまけ1)
>重大事故時での、危険運転致死傷罪、業務上過失致死罪
自動車事故は「業務上過失致死罪」ではなく「自動車運転過失致死罪」に変わりました。
(おまけ2)
>ひとを殺して殺人罪で起訴されても、
>殺意がなく、業務上過失致死罪レベルの場合、
>無罪ではなく、殺人罪での幅を持たせた
>刑罰(死刑~禁固XX年)から刑罰をあたえますよね?
殺意がなかった場合は業務上過失致死罪に罪名を変更した上、業務上過失致死罪の刑罰の範囲内で処断します。
殺人罪のまま刑罰を軽くするわけじゃないですよ。
回答ありがとうございました。
丁寧な分かりやすい説明で、大変勉強になりました。
ルールにそって裁く事での被害者の憤りと、被疑者への過剰な感情的処罰の防止
改めて人が人を裁く事の難しらされました。
また、回答のおまけも大変勉強になりました。
No.1
- 回答日時:
>>1.本当に業務上過失致死罪に問えないのでしょうか?<<
憲法第39条に「何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない」とある通り、危険運転致死罪で無罪とされた行為については再び業過致死罪に問うことはできません。
>>2.殺人罪の場合どうなんでしょうか<<
危険運転致死罪について無罪とされた後に殺人罪に問う、という意味でおっしゃっているなら、同様の理由で無理ですし、そもそも殺人罪の方が立証が難しい(「殺意」がない限り殺人罪は成立しない)ので仮に起訴することが可能でも有罪とすることは困難でしょう。
ちなみに、刑事訴訟法上は、罪名や適用される罰則を裁判中に変更することは可能で、危険運転致死罪に加え業務上過失致死罪を加えるよう訴因が変更された例もあります。また起訴する際に、基本的な罪名を危険運転致死罪とすると同時に、予備的に、業務上過失致死罪を加えて起訴するといったことも可能です。
ただし、検察側はあまりこうした手法は好まないようで(立証に自信がない、と受け止められるからだと思いますが)起訴段階で罪名をどちらか一つに絞る場合が多いようです。
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