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調べないでの質問ですみませんが、
刑法211条後段の重過失傷害て、
209条の過失傷害と両立しますか、しませんか?
211条前段の業務上過失傷害もですが。
(民事でいう請求権競合のようになりませんか)

211条は、209・210条の特別法だから、
211条構成要件該当は、209・210条排斥する
という理解は誤りですか。

A 回答 (2件)

刑法211条後段の重過失傷害て、


209条の過失傷害と両立しますか、しませんか?
  ↑
両立というのは、どちらも成立する、という
意味でしょうが、それなら両立しません。
法的には競合しない、と表現します。

被害者が同一で、同一の行為で被害を与えた場合ですよね。
複数の人が被害者じゃなくて。

それなら、両立することはありません。



211条前段の業務上過失傷害もですが。
   ↑
重過失と業務上過失が競合するか、という
問題でしょうか。
それは競合しません。
軽過失と業務上過失も競合しません。



211条は、209・210条の特別法だから、
211条構成要件該当は、209・210条排斥する
という理解は誤りですか。
  ↑
重過失、業務上過失は、違法性、責任などが
軽過失よりも大きいから、重い刑が科される
わけです。

その意味で、軽過失が一般法で、重過失、
業務上過失が特別法だ、という理解は
間違いとは言えないでしょう。
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この回答へのお礼

回答ありがとうございます。
競合するはずがないとは思っていましたが、
どのように説明するのか、と思い質問しました。
重過失傷害の案件に、刑法209条が競合しないのは、
一般法特別法という説明よりか、
刑法54条1項によるのですかね。

お礼日時:2017/03/19 23:37

結論から。


内容的には正解です。

以下解説。
罪数論見れば一発で判ります。
成立する犯罪の個数を決めるのが罪数論です。

簡単に説明すると、

・単純一罪=大雑把に一つの犯罪が成立してそれでお終いという場合だと思ってください。例えば拾った財布を着服すれば、一つの遺失物等横領罪が成立し、かつ、それ以外の犯罪は成立しません。

・評価上一罪=構成要件的には複数の犯罪に該当しても、そのうちの一つしか犯罪が成立しない場合。この類型には(1)法条競合(2)包括一罪の二つがあります。
 (1)法条競合=複数の構成要件に該当するように見えるが、構成要件相互の関係からその内の一つだけが成立し他の犯罪が成立しない場合。単純一罪に近い。法条競合と言う通り、複数の構成要件が「競合する」場合です(ここで競合するのは、複数の条文ないし構成要件であって、複数の犯罪が同時に成立するという意味で「競合」と言っているのではありません。誤解しか生まないので複数の犯罪が成立することを「競合」と呼ぶべきではありません。単純に「複数の犯罪が成立する」と言えば足ります)。
 法条競合には(ア)特別関係(イ)補充関係(ウ)択一関係+(エ)吸収関係の3つないし4つの類型があります。
 (ア)の特別関係とは、複数の構成要件が一般法特別法の関係になっており、特別法に当たる構成要件に該当すれば一般法に当たる犯罪は成立しない場合を言います。

【質問の事例はまさしくこれ】

です。つまり、業務上過失致死傷罪及び重過失致死傷罪は、過失致死傷罪を一般法とする特別法に該当するので、業務上過失致死傷罪又は重過失致死傷罪が成立する場合には過失致死傷罪は成立しません。その意味で「両立しない」「排斥する」と言えます(通常そういう表現はしませんが、間違いではありません)。
 ただし、「理論的には両立する、即ち、両方の構成要件に該当するが、特別法のみが成立する」と言うこともできます。
つまり、「両立する」という言葉の意味が、「異なる構成要件に同時に該当する」という意味なのか「異なる犯罪が同時に成立する」という意味かによって話が違うということです。
 (イ)の補充関係とは、基本となる構成要件を補充する内容の構成要件が定められている場合であり、基本となる構成要件に該当しない場合のみ、補充する構成要件に該当する場合です。
 具体的には未遂罪です。殺人既遂罪が成立する場合、形式的には未遂罪も当然に成立しています(少なくとも時系列では必ず、未遂罪が成立した後で既遂罪が成立します。本来、一度犯罪が成立すれば事後的に成立しなかったということにはならないのですが、未遂に関しては、既遂罪の成立によって成立しなかったことになります。いわば、解除条件付きの成立と考えてもいいかもしれません)。
 (ウ)の択一関係とは、複数の構成要件に該当し得る行為があるが、両立(これは「異なる構成要件に同時に該当する」という意味の「両立」です)し得る関係にない場合に、一つの犯罪のみが成立するというものです。例えば横領罪と背任罪などです。
 もっとも、「一つの構成要件にしか該当しない」のであれば一つの犯罪しか成立しないのは当たり前ですし、実際には、特別関係、補充関係と区別が微妙なので、理論上この類型は意味がないという疑問を前田先生などは呈しています。
 (エ)の吸収関係は、ある構成要件に該当する行為が、一般に他の構成要件に該当する行為を当然に含んでいる場合です。が、これは次に述べる包括一罪と同じじゃないかって話もあります。具体的には、人を刺し殺す時に、服も損傷したりするわけですが、殺人罪以外に器物損壊罪は成立しないという話です。まあ理論上は、包括一罪と考えていいんじゃないかと。
 (2)包括一罪=これは明確な定義付けが難しいのですが、結論を簡単に言えば、法条競合ではないが、規範的に見て一つの犯罪として評価すればいいじゃないかって話です。次に述べる科刑上一罪に近いです。
 細かい話は端折りますが(必要なら刑法総論の罪数論の項を読んでください)、例えば、ナイフで2回刺して人を殺したところ、2回目が致命傷となったとして、1回目に刺した行為に殺人未遂罪が成立し、2回目の刺した行為に殺人既遂罪が成立するなどとは言わず、端的に2回の刺突行為で殺人既遂罪が一つ成立すると考えます。

・科刑上一罪=ここからは一罪ではなく数罪です。つまり、理論的には複数の犯罪が成立します。まあ本題じゃないので簡単に。
 一つの行為が複数の犯罪に該当する場合を、観念的競合(刑法54条1項前段)と言います。例えば拳銃を一発発射したところ、一人の人を貫通し後ろの人にも当たって一方は死亡、一方は怪我をした場合、判例通説理論的には1個の殺人既遂罪と1個の殺人未遂罪の「二つの罪が成立」します。しかし、殺害の実行行為は一つなので、観念的競合として刑罰を科す際には、殺人既遂罪一つ(他の犯罪の成立は情状の問題となります)として扱うというものです。
 次に、複数の犯罪に該当する行為が、「通常」目的と手段の関係にある場合、両者を牽連犯(刑法54条1項後段)と言います。典型例は、住侵窃盗です。住居侵入罪と窃盗罪の2罪が成立しますが、両者は手段と目的の関係にあるので、牽連犯として刑罰を科す際には、重い窃盗罪のみで処断されます。

・併合罪=これはもう完全に別々の犯罪として複数の犯罪が成立する場合です。それが一定の関係にあると併合罪として、科刑上の処理が行われるだけです。
 例えば拳銃で一人を殺すつもりで射殺して更にもう一発撃って別の人を「怪我をさせるつもりで」怪我をさせたとなると、銃を撃つという実行行為が二つあるので、殺人既遂罪と「傷害罪」がそれぞれ成立しますが、裁判では、併合罪として処理されます。

とまあこんなところですが、簡単と言いつつ長いのはご容赦。

そんなわけですから、
>刑法54条1項によるのですかね。
ではありません。
あくまでも法条競合であり一つの罪しか成立しません。二つ以上の罪の成立を前提に、科刑上一罪とする54条1項の問題ではありません。
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この回答へのお礼

条文を見て想起した、横着な質問に、詳細かつ明確に回答いただき
ありがとうございます。
やはり刑法学、きちんと整理した説明を用意していますね。
(一般法特別法の関係が刑法にも妥当すること知ることできたのも、
うれしいことです。)
(54条1項あげるのが、とんちんかんだということもわかり、
すっきりしました。)

お礼日時:2017/03/20 01:09

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