
司馬遼太郎『竜馬がゆく』(文春文庫)を高く評価する人は多くいます。
アマゾンのブックレビューなどを見ても明らかです。
『竜馬がゆく』は司馬の代表作とも言って過言でない作品なので、途中途中に読み応えのあるクライマックスが用意されていることは容易に想像できます。
今まで司馬の作品は『国盗り物語』『燃えよ剣』『峠』『最後の将軍』『功名が辻』『世に棲む日日』を読んできました。
どの作品も読みどころがあり決してつまらない作品ではないのですが、大体の作品が主人公が最後ポックリ死んでおしまい(死の瞬間まで鮮やかに書いたのは『燃えよ剣』くらいではないでしょうか)と言う幕の引き方が、どうも自分と馴染みません。
「楽しませてくれたのに、最後それで終わりなの?」ってつっこみたくなります。
例えば北方謙三『水滸伝』などは死に際こそがクライマックスで、そこで読者を高ぶらせますが、司馬の作品にそのようなものは感じないのです。
この度、まとまった時間ができたので、これまで敬遠してきた『竜馬がゆく』でもそろそろ読んでみようかと思っています。
その『竜馬がゆく』、果たしてラストまで面白いのでしょうか?
司馬作品の傾向同様、近江屋で暗殺されてハイおしまいと言うようなラストなのでしょうか?
そういう作品でもあえて読むべきと言う価値のある作品なのでしょうか?
多少ネタバレになっても構わないので、「それでも『竜馬がゆく』は面白い」と言う方の話を聞いてみたいです。
よろしくお願いします。
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
『竜馬がゆく』のラストは近江屋での遭難シーンであっけないくらいスッパリと終わります。
ただ、その死の事実を淡々と描写するのみで、誰によって殺されたかと言うことすら書いてありません。司馬遼太郎は死に何の意味も見いださない作家です。死ぬことによって何かを成そうとする人物を評価しませんし、常に生にこそ価値を見いだす作家です。ですから死の描写に過剰な筆を割くことも、死を美化することもありません。それは例え物語の主人公であっても同じです。例外的に過剰なまでに死の様子を描写する『殉死』は、言うまでもなく司馬遼太郎が口を極めて罵倒し抜いた乃木希典という人物の、死の無意味さをあげつらった作品です。
司馬遼太郎にとって死とは生の幕引きでしか無く、クライマックスではありません。むしろクライマックスになることを徹頭徹尾否定します。その死で読者を昂ぶらせることを徹底的に拒否します。あくまでも生きて成すべき事こそを、何を成すために生きたのかと言う事をこそ描いています。ですから、その最期は淡泊すぎるほどあっさりと描き、それによって生の意味と死の無意味を強調するという手法を取っています。それは司馬遼太郎の作家としてのスタンスであり、矜恃であり、司馬作品のテーマを考えてみると、その手法は当然であり、必然であり、そして正解であると思います。
ですから、少なくともそのラストの部分のみを取り出して、面白いかどうかとか、読む価値があるとかどうとかというようなレベルの話ではないと思います。
このことは司馬遼太郎が実際に太平洋戦争に出征し、軍隊というものに触れ、死を身近なものとして認識し、死について深く考えたためであることは想像に難くありません。生き抜くことではなく、死それ自体を目的として強制した日本軍というものに対する嫌悪を生涯隠そうとしなかった作家でした。
その辺が実際に出征したり、死を身近に感じたりしたことがない北方謙三などとの違いなのでしょう。そして戦争が遠い過去の話となり、身近にあった死が消えて久しい現在、死にドラマを求める読者が増えるのも必然なのかも知れませんね。
その意味で『燃えよ剣』のラストは、少々演出が過剰かなという気がしています。実際には土方歳三は乱戦の中でいつの間にか流れ弾に当たって戦死し、正確な死に場所すら判明していないというのが現実です。しかし、その土方を描いた『燃えよ剣』ほどセンチメンタルなラストを迎える作品は他にはなく、やや異色な感じを与える作品になっています。個人的には司馬作品で最も好きな1作なのですが、そこにはやはり独特の異質感があるのは否定できないように思います。
司馬遼太郎の死生観を初めて知ることができました。
だからこそあのような構成になるのですね。
それが好きか嫌いかはともかく、一理ある考え方だとは思います。
ご回答ありがとうございました。
No.2
- 回答日時:
『燃えよ剣』だけ読んでいません。
たぶんこれからもこれだけは読まないでしょう。面白い面白くないの基準をどこに置くかは人それぞれでしょうから。
ちなみに、『司馬遼太郎が考えたこと』に後日談が書かれています。
確かに「面白いかどうか」は読者が決めることです。
ですから、皆さんの意見を参考にして、私が面白そうか面白くなさそうかは判断します。
そのために、今回の質問で、実際の読者の方が『竜馬がゆく』のラストのどのような点を面白い/面白くないと感じたかを質問した次第です。
ご回答ありがとうございました。
No.1
- 回答日時:
結論から言うと、「燃えよ剣」のようなカッコいい死に様はなかったように記憶しています。
何せ、二十歳前後に読んだので、(今四十過ぎ)はっきりした記憶はないんですが。司馬は史実に忠実なので、過剰な演出は嫌うのかも知れません。以前、ラジオの女子アナウンサーが、「竜馬がゆく」を、勿体無くて最後の巻は読めずにいる、と言っていたのを思い出しました。彼女のように最終巻を読まずにいるというのも、作品を楽しむ術かな、とも思います。自分ももったいなくて読めない本を持っているので、そのアナウンサーの気持ちは分かります。
ただ私の本はエッセイ集で、『竜馬がゆく』はぶっちぎりの長編なので、最終巻だけ読まないと言うのも何だか腑に落ちない気もするのですが…。
早速のご回答ありがとうございました。
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